ここから・・・
一つの奇跡は
…起きた
まわりの事を気にかけ
心配をかけまいと
笑ってばかりいた少女が初めて
…泣いた
そして
その娘の姉も泣いた
自分のした過ちを悔やんで…
妹が助かったと言う事を
心の底から喜んで…
二人の少女を助けたのは一人の少年
自分が良く知っている少年
自分では無い少年
二人を助けたのは自分ではない
自分に何も出来なかったのが
悔しくて…
自分を不甲斐なく思って
…またこの少年も
泣いた
ピピピ…ピピピ
「ん？」
俺はまだ半分眠ってる頭で目覚し時計に手を伸ばした。
カチ
そして再び静寂が訪れる。
ピピピ…ピピピ
「今日は日曜…寝れる。」
カチ
また止める。
ピピピ…ピピピ
また鳴る。
カチ
止める。
ピピピ…ピピピ
「いい加減にしろ！！」
さすがに俺も目が覚めてしまった。
しょうがないからもう起きる事にした。
とりあえず洗顔と歯磨きをする為に洗面所に向かった。
ぴょこ
鏡を見ると俺−北川潤のトレードマークである触覚…でなく癖っ毛が
今日も元気に跳ねていた。
まるでこの毛が自己主張でもしているようだ。
この毛以外は寝癖のようなものも無く何時もの俺の顔が目の前にあった。
眠たそうではあったけど…。
歯磨きをして顔を洗うと完全に眠気はどっかに行った。
「まずは…飯だな…。」
俺の朝は大抵決まっている。
ジャムを塗ったパンとコーヒー。
シンプルだけど朝はこれぐらいでいい。
俺は大体昼を良く食う方だからな。
さて…パンも食い終わって今日の予定を考える。
はっきり言おう。
「予定が無い！！」
拳を握り締めて言う事じゃないとは思うが
無性に寂しかった。
とりあえず友人とでも遊ぶかという考えに至る。
もちろん俺に彼女なんてのがいるわけがない。
…ってだから自分で自分を追い詰めてどうするよ。
と良く考えたら今は朝の７時１８分。
こんな時間から遊べるわけ無いか…。
しょうがないから散歩に行く事にした。
戸締りを確認してドアに鍵をかける。
「行ってきます、と。」
とりあえずは商店街にでも行こうと考えたが
この時間に開いてる店なんてあるわけも無いので
コースを変更した。
「たまにはこういうのもいいな。」
俺は商店街から離れた公園に向かう道を歩いていた。
時間が時間だけに静かで落ち付ける。
まるでこの道を俺が独り占めしてるような気分になれる。
そうこうしているうちに公園の噴水の所まで来た。
「あれは…」
そこで潤が見たのはクラスメイトである美坂香里とその妹、栞。
そして相沢祐一だった。
栞ちゃんが楽しそうに美坂と相沢をモデルに絵を描いているようだった。
美坂と相沢はそれを困ったような、それでいて楽しそうに笑って
栞ちゃんを見ていた。
何なんだろうな、この嫌な気持ちは。
あそこにいるのが俺ではなく相沢だと言う事が悔しい。
だが俺はあそこにいる資格がない。
相沢にはそれがある。
あの二人を救ったのは他でもない相沢自信なのだから。
一気にテンションが下がっちまった。
朝から気分が憂鬱だな。
とりあえずここから離れるか。
嫌な場面を見てしまったものだ。
相沢の奴は栞ちゃんと付き合ってるんだったな。
しかし美坂は誰とも付き合ってないんだよな。
じゃあ俺にもチャンスはあるんじゃないか？
「はぁ。」
溜息が出てくる。
ありもしない希望にすがってるようでは駄目だな。
「はぁ。」
また溜息が出てくる。
何時から俺はこんなつまらない男になったんだ。
あの時…からかな、やっぱ。
自己嫌悪になる。
「北川さん？」
「うわ！？」
「失礼ですね。久しぶりに会ったというのに、うわだなんて。」
「何だ、美汐か。驚かすなよ。」
目の前には俺の一つ下の幼馴染、天野美汐が立っていた。
学校は同じの筈なんだが、何故か滅多に会う事が無い。
家が近いから昔は結構一緒に遊んでいたものだ。
「驚かしてなんかいませんよ。北川さんが溜息ばかりしていたものですから。
心配になって話掛けたというのに酷いですね。」
「そうか。心配を掛けてすまない。」
「それはいいんですが…本当にどうしたんですか？」
本当に世話好きと言うか、美汐は何も変わってなんかいなかった。
それが妙に安心した。こんな些細な事でほっとするなんて
美坂達の事でナーバスになっていたのだろうか？
「北川さん？…本当に大丈夫ですか？顔色がよろしくないようですが…。」
「大丈夫だ。美汐に心配を掛けるなんて情けないな。」
「それは酷い言われようですね。本当に心配してると言うのに。」
「あはは…スマン。いらぬ心配かけちまった。」
「私に何かできませんか？」
「いいんだよ。ごめんな。」
美汐に頼るべき事ではない。
コイツにだけは頼れない。
「やっぱり美坂さんの事ですか？」
「！！」
「あなたの考えている事ぐらいわかります。…これでも”元”彼女ですから。」
「…そっか。」
そうなのだ。俺と美汐は付き合っていた。
俺が中学を卒業した少し前ぐらいに美汐に告白された。
俺も美汐の事は好きだった。だからオーケイした。
…けど、結局その”好き”がＬｏｖｅではなくＬｉｋｅである事に
気付くのにそう時間は掛からなかった。
つまらない事で美汐を傷付けた。
俺が中途半端な事をしなければそんな事にはならなかった。
美汐の事はとても大切だと分かっていたはずなのに。
「潤ちゃん？大丈夫？」
「えっ！…すまん。ちょっと昔の事考えてた。」
「まだ私の事で引きずっているならお願いだから止めて。」
美汐の口調が昔のそれに戻っていた。
美汐が今の口調になってしまったのは理由はもちろん俺にある。
美汐はある出来事で心に深い傷を負っていた。
その時に俺がちゃんとしてやらなければならない筈だった。
なのに俺ときたら逃げてばかりだ。
「分かったって言えるわけ…無いだろう？」
「…それはそうだろうけど。」
美汐が哀しそうな表情になる。
美汐に哀しい想いばかりさせてるのは他でもない俺だ。
さっきから自分がすごく嫌な奴なんじゃないかって思う。
テンションが下がりっぱなしだ。
「って…今は北川さんの話です。」
「う…やっぱ話すの？」
「もちろんです。」
口調が今の美汐のものに戻る。
落ちついたから自分で気付いたのだろう。
これは本人に言わしてみればけじめだそうだ。
俺の言う事なんか聞かず無理ばっかりする所だって全然変わっちゃいない。
俺としては昔の…お互い全然気にせず話合えるようになりたい。
しかしそれは無理だと言う事がわかりきっていた。
「美坂さんの話です。」
「お前やっぱ…わかる？」
「あなたの事ですから。」
美汐がとても優しい表情になる。
コイツはまだ俺の事…好き…なんだよな。
勘違いなんかじゃない。コイツの気持ちだって俺にはわかる。
しかしだからこそコイツに俺の好きな人の話なんかできない。
できるわけがない。
「北川さん？お願いします。」
「しかし…お前。」
「私の事は気にしないでって言いました。」
「…わかった。」
俺はコイツの事をこれ以上傷付けたくなんか無い。
けどコイツがここで引き下がるほど物分りが言い奴じゃないって事
も分かってる。
「でも立ち話もなんだから百花屋にでも入ろう。」
「はい、もちろん奢りですよね？」
「うっ…わかった。」
聞いてもらうんだからそれぐらいしてやらなきゃな。
そして俺は百花屋で美汐に美坂の事、栞ちゃんの事。
そして相沢の事をすべて話した。
「……そう…ですか。」
「そういう事だ。」
「辛いですか？」
「辛い…なんて事言ってらんねえよ。美坂達はすごく辛かったんだ。
正直どれほど辛かったなんて想像できない。」
「ええ。」
美汐は真剣に聞いてくれる。
美汐は根がすごく優しい奴だからな。
「だからこそそんな中に俺が入る事ってのができるかどうか…不安なんだ。」
「北川さんは…優しいから。」
「え？」
「あなたは優しいから大丈夫です。」
「しかし。」
「私が言うんだから間違いありません。」
畜生。そんな風に言われたら信じちゃうじゃないか。
昔からコイツに何度背中を押された事か。
なんかここ奢りだけじゃあ安いような気がしてきた。
「それじゃこれで失礼します。」
「…あっ！美汐！！」
帰ろうとした美汐を俺が呼び止める。
「何？」
「その…ありがとう！！」
「うん。あのね……。わかる？」
「え？…よくわからん。」
「今にわかるようになるよ。じゃあまた…ね。」
「あぁ…またな。」
美汐は穏やかに笑って百花屋を出ていった。
美汐が最後に言った言葉を考えるとなんか気持ちが落ち着いてきた。
もうちょっとここにいよう。
しばらく一人で考えたい。
カランカラン
「あれ？そこの触覚は北川だな？」
「え？」
この人の事馬鹿にするような物言いは…
「よう、相席いいか？」
「おいコラ相沢。誰が触覚だ、誰が？」
「お前。」
そう、相沢祐一。そして…
「お久しぶりです、北川さん。」
「こんにちわ、北川君。」
この二人、美坂姉妹である。
さっきの帰りか…。失敗した。
一人で考えたいと思った矢先にこれか？さっさと帰れば良かっかもしれない。
で相沢と栞ちゃんが隣で座る。という事は必然的に俺の隣は…
「北川君、お昼？」
わかってるのか可愛く微笑んでこちらに話を降ってくる美坂。
そうとう上機嫌らしい。美坂はこの頃笑う事が多くなった。
前はこのような笑顔を見る事はできなかった。
相沢…お前は本当に大した奴だよ。
誰でも笑わす事が出来た俺がさ…美坂だけは笑顔にする事が
できなかった。
それをお前はすぐにやってのけて…尊敬する。
「…何だよ、北川。気味悪いぞ？」
「フッ…いや何でも無い。」
「その含み笑いが余計に気になるぞ〜。」
「別に気にする事じゃねーよ。」
それ以上相沢が追求する事も無かった。
それから俺達は飯を食いながら話をした。
色んな事を話した。
学校の事、家族の事、趣味の事。
そして…恋愛話に話が行くのは至極当然のことだった。
「そういえば北川さんの好きな人って誰ですか？」
ぶほっ！！
俺は飲んでいたコーヒーを噴出してしまった。
「げっ！北川こっちに飛ばすな。」
「ごほっげほっ！栞ちゃん…いきなり俺に話を降らないでよ。」
「え〜北川さんも年頃の男の人なんですしそういうの興味あるでしょう？」
「そりゃあ無いって言ったら嘘になるが…。」
「私も聞きたいわね。」
「美坂まで〜。」
「観念しろ、北川。」
困ったな。こりゃどうしたものか。
「どんな人ですか？」
「えっと…物静かで…」
「ほうほう。」
「落ちついてて…」
「うんうん。」
「たまに笑う顔がすげえ可愛くって…」
「へえへえ。」
「わかった！！」
さすがにヒントを出しすぎたか？
相沢は妙なところで勘がいいからな。
この場でばらされたらどうやって切り抜けようか…。
「天野だろう！！？」
「…へ？」
「ああ天野さんですか。確かにそんな感じがします。」
「ちょ、ちょっと待て！なんでアイツなんだ！？」
「フフフ…北川。実は俺達が入る前にお前がここで天野と会っていたのを
ちゃんと目撃していたのだよ。」
「ネタはあがってるんです！さあゲロッちゃってください！！」
ゲロッちゃうって栞ちゃん。君は女の子なんだからそんな刑事ドラマ
みたいな台詞はやめた方いいとお兄さんは強く感じる。
がたっ！！
「「「え？」」」
突然美坂が席を立った。
一体どうしたと言うのだろうか？
「ごめん、急用思い出しちゃってもう行くわ。」
「美坂…おい！」
そのまま自分の分の代金を置いて店の外に出ていってしまった。
「北川、すまん。」
「ごめんなさい、北川さん。」
二人がすまなそうな表情をして言ってきた。
「何で二人が謝るんだよ。」
「いや…お前香里の事が好きなんだろう？」
「！！」
もしかしてばれてるのか？
俺が美坂を好きなのを…。
「もしかして…自分で気づかれてないって思ってたのか？」
「バレバレ？」
コクコク
二人して揃えなくてもいいんじゃないんでしょうか？
そんな酷な事は無いぞ。
「そうなのか。美坂は知ってるのか？」
「気付いてるわけ無いだろうが…。お前そっくりで相当鈍いからな、あいつも。」
「そうか。」
「ごめんなさい。私達がふざけたばっかりに…。」
「だから二人が謝る必要なんて無いって。」
「それより追っかけてやってくれ。」
「そうです。今ごろお姉ちゃん泣いてるかも知れません。」
「わかった。」
俺が会計をしようとすると…
「奢ってやるからさっさと行け！！」
「すまねえ！！」
俺は急いで百花屋を出た。
そういえばあれ美汐が食べた分も入っていたような気がする。
まあ奢ってくれるって言ってんだから気にせず俺は走り出した。
「クソ…どこだ？」
道がわかれる所に来てわからなくなった。
ずっと走ってきたせいで辛い。
「はぁ…はぁ…ヘヘ…こりゃ…運動不足だな。」
自嘲的な笑みを浮かべる。
部活にでも入っときゃ良かったか…。
いろんな所に行った。
商店街。美坂の家。学校。
クソ…いない。
そうだ。水瀬ならわかるかも、と思い彼女の自宅に電話をかける。
プルルルル…プルルルル
「はい、水瀬ですが。」
「もしもし！北川ですが…。」
「あら、北川さん？お久しぶりですね。」
電話に出たのは秋子さんだった。
この人に最後にあったのはいつだったかな。
って今はそう言う事じゃなくてだ。
「すみません、水瀬…名雪さんは？」
「ごめんなさい、名雪は今ちょっとお使いに出てもらってるんですよ。」
「あぁ。そうですか。」
「伝言があれば伝えておきましょうか？」
「伝言じゃなくて…今そちらに美坂がいますか？」
「香里さんですか？こちらには来ていませんが…。」
「…そうすか。」
水瀬の家にもいない…か。
畜生、どこだ？ったくどこに行ったんだよ、アイツは…。
「香里さんがどうかしたんですか？」
「え！？あっ…ちょっと色々ありまして…。」
「…そうですか。北川さん？」
「はい？」
「香里さんはきっと見つかりますよ。」
「え？」
「見つかります。私が保証しますよ。」
「…ありがとうございました。」
そう言って俺は電話を切った。
秋子さんはすべてを見透かしたような言い方だった。
それでいてこっちを安心させてくれる言い方だな。
美汐とはまた違うタイプだ。
本当に謎が多い女性だ…。
今は秋子さんの事よりも美坂だ。
ふとさっきの美汐の言葉が思い出される。
『うん。あのね、潤ちゃんが正しいと信じた事をやったなら、
ちゃんと道は交わるんだよ。わかる？』
道は…交わる。
どういう意味なのかはよくわからなかった。
けどその言葉ですごく安心できた俺がいた。
「道は…交わるんだよな。」
あまり考えずに…直感で道を走っていった。
美坂を見つけなきゃならない。
ただそれだけが俺の頭にあった。
そして…着いたのは…あの噴水のある公園。
美坂は…噴水の所で腰掛けていた。
何か疲れたような、そんな感じの表情だった。
見てるこっちが辛くなる。
「よぅ…急用はどうした？」
「北川君！？」
なんでここにいるのって顔だ。
俺自信どうやってここに着いたのかわかってないんだもんな。
「隣…いいか？」
「別に…構わないわ。」
「ん、ありがと。」
そう言って俺は美坂の隣に腰掛けた。
「「………」」
お互いに沈黙が走る。
何て言うか気まずい。すごく空気が重たく感じるぞ。
「「あの！」」
「美坂から…どうぞ！」
「北川君先で…いいわよ！」
ベタだ。ベタ過ぎる。
こんなありがちパターン嫌だ。
「北川君…天野さんの事が好きなの？」
「え？」
突然だった。
不意に美坂から話しかけてきた。
「どうなの？」
「俺は…好きだ。」
「…そう。」
「勘違いすんなよ！？」
「え？」
「一言言っておくけどな、俺と美汐は幼馴染なんだ。」
美坂が驚いたような表情になる。
なんかコロコロ変わる表情がちょっと可愛いと思ったりもした。
「でも幼馴染だからこそ好きになったんでしょう？」
「確かに昔アイツと付き合ってた頃もあった。」
「昔？」
「ああ…とっくに別れたよ。全部俺のせいだったんだ。
俺があいつを傷付けた。だから別れたんだ。」
「そんな。」
「あいつの事好きだったけどそれはどちらかといえば、
美汐は妹みたいな存在だったから。そこに恋愛感情ってのは無かったんだと思う。
酷いだろう？美汐の告白を受けて中途半端な気持ちでオーケイして
そんで結果的にあいつを傷付けた。本当…最低だよ。」
美汐の事を俺がどれだけ傷付けたかは俺自信が良く知っている事だ。
あいつも美坂と同じ…ではないがかけがえの無い存在であったのには違いない。
それを俺が…壊してしまった。
「馬鹿なんだよ。それからか…やたら恋愛に臆病になっちゃってさ。」
「北川君。」
俺は美坂に微笑みかける。
今までの俺の中で最高の笑みで。
「でも美汐には感謝してんだ。」
「え？」
「あいつは俺の背中を押してくれた。
ずっと立ち止まってた俺の背中をどんって押してくれたんだよ。」
「天野さんが…。」
すぅ〜〜っと深呼吸をすて自分を落ちつかせる。
「俺…美坂の事が…す…す……好きだ！！！」
「！！」
美坂が黙ってしまった。失敗…だったのだろうか？
でも…はっきりと言えて結構すっきりした。
駄目だったとしてもそれはそれでいいんじゃないかって思えるから不思議だ。
告白する前は断られたらどうしようかって事ばかり考えていたが…。
「きた…が…ぐすっ！うう！」
「え？」
美坂が今度は泣き出してしまった。
どうすれば…いいんだろうか？
いきなり不安になる。
…って何を今更うろたえているんだろう？
さっき覚悟を決めたじゃないか。なぁ…美汐？
「…あ。」
俺は美坂を抱きしめていた。
たぶんこうしていい、いやこうしなきゃならないように思えた。
間違っていないと思う。
「混乱させちゃったな。…ごめん。」
「そん…な…こと…な…い。」
最後らへんはほとんど聞き取れなかった。
でも拒絶の意思は無い。それが嬉しい。
美坂が落ちつくまで俺達はずっとそうやっていた。
俺はさっきから心臓がバクバク言ってる。
さっきからどれくらい経ってる？
３分？…それとも５分？…１０分ぐらいこうしてた？
もしかして…３０秒ぐらいしか経っていないのかもしれない。
そんな事も分からないぐらい俺は緊張していた。
でも…幸せだった。
「北川君。」
「え、何？…美坂？」
「わ…たし…も…」
「え？聞こえない。」
「私も…す…す…好きです！あなたの事が…大好き！！」
美坂が泣いていた。さっきの涙とは違う。
それは喜びの涙だった。
そして俺も気付けば…泣いていた。
美坂と一緒だ。嬉しいから泣いている。
文句あるか！畜生、今日は泣いてやる！！
そして俺達はキスをした。
「これからが俺達のスタートだ。」
「うん。」
「香里。ずっと一緒に…いてくれるか？」
「潤！うん…うん！！」
ここからが…俺達のスタート。
俺達が信じた道を歩きつづける。
ずっと二人で…香里と一緒に歩きつづける。
そう心に誓った。
その様子を遠くから見ていた人影があった。
「ったく世話が焼ける二人だよ。」
「そうですね。」
「しかし…よかったのか？」
「何がですか？」
「だってお前まだ北川の事好きなんだろう？」
「あの人が今までも、そしてこれからも私にとって大切な存在である事に変わりはありません。」
「あぁ…。お前は…強いな。」
「私は弱いんです。強ければあんな事にはならなかったから…。」
「そっか…。」
「それにあの二人が別れてしまったらあの人を取り返しますから。」
舌をちょっと出して笑った。
それはまるで悪戯を計画する子供のように。
「お前ならやりかねないな、天野。」
「どう言う意味ですか、相沢さん？」
「言葉通りだ。」
「…そんな酷な事はないでしょう。」
「祐一さん！美汐さんに酷い事言っちゃ駄目じゃないですか！！」
「うを！？栞…いつからそこにいた。」
「酷いです。私最初から一緒にいましたよ。そんな事言う人嫌いです。」
「うぐぅ…。」
「だから何なんですか、それは？」
「企業秘密だ。」
「相沢さん、一体どこの企業なんですか？」
「頼むから二人で苛めるのはやめてくれ…。」
「最初に言い出したのは祐一さんです。」
「私達が苛められてたんですよ。」
「待て！そんな誤解を招くような台詞はやめろ！！」
「行きましょう、美汐さん！」
「ええ。」
「あっ！！待てよ〜〜〜！！」
そして美汐は二人の事を心から祝福しながら…こう呟いた。
香里さん…潤ちゃんを悲しませたりしたら必ず取り返しに行きますから♪
Ｆｉｎ
投票結果
Ｇすぽると (採点:3)
同じパターンのSSが沢山あるので出来れば違う見せ方をして欲しかったです。
璃亜 (採点:3)
かなり特殊な関係ですね、でもこれも有りかと（ぉ
Alice (採点:2)
美汐のイメージが違っていてびっくり。冒頭の展開から登場するまで「美汐がどう関ってくるのかな？」と思っていたのだが、この展開は全然予想していなかった。寧ろ、真琴シナリオに存在する美汐のイメージを誰もが持っていると思うのだが、このSSに合わせての方向転換が難しい。ちょっと強引過ぎな展開ですね。香里と北川の関係がメインなんでしょうけれど、美汐のことでこんがらがってしまって…う〜ん。ラスト、美汐のキメ台詞ですけど「これはダメですよ〜」と思った。幼なじみという設定ですけれど、おもいきってオリキャラの方が良かったんじゃないでしょうか？もしくは、この美汐にものみの丘の話題を折り混ぜてあれば、もっと受け入れるこ
荒野草途伸 (採点:1)
キャラの分析しっかりしてください。香里や美汐は、こんな人物ですか？
ヘキサ (採点:4)
予想を良い意味で裏切る展開で面白かったです。
hiro (採点:3)
ほのぼのとして良かったです
いしす (採点:4)
香里×潤ってのは固定観念みたいで嫌いなんですよね、二人とも他の人との可能性が消されているみたいで。でもこれはちょといい点数
十七夜 (採点:4)
おおー、天野っちが反転してるｗ
ugen (採点:4)
ありがちだけどもよいはなし美汐である必要がわからないが
naoki (採点:2)
うーん、狙いはいいと思いますけど。展開がちょっと……。
雨音 (採点:3)
北川クンと美汐の組み合わせは何か意外でした
ASKA (採点:3)
北川のこういう話、かなり好きですね
sein (採点:5)
あまり天野が天野らしくなかったような気もするけど……いい作品ですね。フェンス直撃のタイムリー３ベースという感じ？
taka (採点:1)
美汐のイメージとちょっと違うので違和感が。
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。一人称と三人称が混在している。北川の一人称は「オレ」。香里の一人称は「あたし」。美汐は昔とは性格が変わっているはず。全般的にどのキャラクターも性格が作者に都合良く本編と変えられている。話の展開が安直で手抜き。美汐が単なる狂言回しでしかない。文章も低レベルでどこかで見たような表現が並ぶ。
グＥ (採点:3)
美汐と北川が幼馴染だという設定は面白いと思いました。あとこういう展開は私好きです。欲を言えば、ラストシーンとかもうちょっとこっていたらよかったんですが…。
コーダイ (採点:3)
美汐が魅力的でした。
かずき (採点:3)
途中が都合よすぎる。ラストは良い。
竹仙人 (採点:4)
ありがちな展開ですが、美汐の立場は新鮮でした。そして、これから幸せになってほしいです。
kuryu (採点:4)
設定がうまいです。結構いい感じです。
まちゃる (採点:4)
基本的に北川×香里派なんですがこれ読んでる時無意識に美汐に目がいってました（爆）
ＪＩＭＭＹ (採点:4)
この美汐の設定は結構驚きました。香里Ｘ北川ラブに美汐が絡むとこんなムードなのか、と新鮮な感動をしました。「昔の口調」と「今の口調」の対比が効果的に話を盛り上げていると思います。
神崎隆一 (採点:2)
ラストの取って付けたとような展開は勘弁です。あと「〜〜。」は一般的に読みにくいとされているので書かないほうが無難です。
ruka (採点:4)
珍しいSSが読めてよかったと思います。
神代 悠 (採点:3)
ふむふむ…美汐がいいなぁ。ちょっと可哀想だけど。
TempFighterZ (採点:3)
潤ちゃんと天野には抵抗あるなぁ
クローズ (採点:5)
ひたすらに良かった！
浮動明王 (採点:2)
原作の美汐と性格と設定が違うキャラに「美汐」という名前を使うのはSSとしては反則です
Ｖｉｓ (採点:3)
天野さんの役どころ上必要なのかもしれませんが、キャラクターの変わり方がきつかったです。話としては良い話なんですが……
ひゅう (採点:5)
台詞の書き方が可愛い。
はぐ (採点:1)
「読むのは疲れました」 キャラ作りの拙さが全てではないでしょうか。キャラの描き方が悪いので、それぞれが一歩二歩ズレた感じで、全体も歪んだものにしか読めませんでした。内容は、ありきたりの話をじっくりまとめていると思います。
シューマン (採点:5)
美汐がとってもいい感じですね。 それにしても、北川と美汐が、幼なじみで元恋人という設定には一本取られたと言う感じでした。 とても面白かったです
ふぉっけ (採点:5)
すごく話が練り込まれていて、ほんと良かったです。
全採点
5点 : 20
4点 : 45
3点 : 65
2点 : 42
1点 : 19
このSSは、作者の方に二次著作権が存在します。
転載、無断引用を固く禁止します。
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