雨音に隠れた恋心
ポツン
ポツン
ザーーザーーザーーザーーザーー
雨。
酷く五月蝿いノイズのような、それでいて心休まる安定した音。
部屋でこの雨音に耳を傾けているのなら良かったのに……。
「はぁ…見事に降ってますね…」
今は放課後。
天気予報で午後から降り始めると言っていた通りになってます。
こんな日に限って傘を忘れてしまうなんて…。
どうしましょう。
走って帰っても…確実にびしょ濡れですね。
やだなぁ……。
「よう天野。今帰りか？」
相沢さんが近寄って来ました。
「相沢さん…そうですけど何か？」
相沢さんへの反応が素っ気無くなってしまいます。
これも全部この雨の所為ですね。
憂鬱な気分にさせられます。
「いや、そこで突っ立ってたからな。もしかして、傘持ってないのか？」
「はい。」
そうなんですよ。
それ以外にここで待ってる必要なんかありませんもの。
ええ、私は傘を忘れましたよ。
「相沢さんも持ってないじゃないですか。」
相沢さんも人のこと言えませんね。
「俺は折りたたみ傘を持ってるんだ。」
そう言って相沢さんは意地悪い笑みを浮かべながら鞄の中から傘を取り出しました。
不覚です！
相沢さんにしてやられました。
「騙しましたね？」
「騙すも何も、俺は持ってないなんて一言も言ってないぞ？」
笑いながら相沢さんは言います。
やっぱり相沢さんは意地悪です。
でも、相沢さんと話してたら元気が出てきました。
「意地悪です…。」
頬を膨らましてみます。
可愛らしく見えるかな？
「あ、天野？らしくないぞ。」
「それって…私がおばさん臭いってことですか？」
酷いです。
「いつもいつもおばさん臭いって言われて傷ついていないとでも思ってるんですか？」
思わず声が大きくなってしまいます。
「いや…そんなことは…」
「じゃあ何だって言うんですか？好きな人におばさん臭いって言われれば、私だって傷つきますよ！」
あ……言っちゃいました。
「天野……好きな人って……？」
こんな最悪な形で思いを伝えることになるなんて……。
「…………」
涙が出てしまいました。
「ごめん、天野。でも、俺が天野の事をからかってたのは……天野のことが好きだからだぞ……」
こんなおばさん臭い子は嫌いなんですね…って好き？
「今なんて言いました？」
よく聞こえませんでした。
「俺は天野の事が好きだ。だからからかってたんだ。」
そんな……相沢さんも私の事を好きだったなんて……。
嬉しい。
それに顔を赤くして照れながら言う相沢さんはちょっと可愛いです。
「嬉しいです。……でもおばさん臭いと言われるのは嫌です。」
いくら私の事が好きだからって、おばさん臭いってのはちょっと……あれですよねぇ。
「悪かったよ。……なんか変な告白だったけど……俺と付き合ってくれないか？」
ボッ…という音が聞こえてきそうな程、顔が赤くなるのが自分で分かります。
心臓もバクバクで……。
「はい……」
小さくそう答えるだけで精一杯です。
「よかった…。じゃあ一緒に帰ろうぜ？送って行くからさ。」
微笑みながら言う相沢さんは、すごく大人びていて格好良いです。
「はい。先程は大きな声を出してすみませんでした……。」
今更ながらに恥ずかしくなってきました。
「気にするなよ。帰ろうぜ？」
相沢さんが傘を開こうとしたその時
今までの雨が嘘のように止んでいきます。
夕日が雲間から差し込んで、辺りを輝かしています。
木から落ちてくる雫がキラキラと綺麗で
おもわず見惚れていると
薄らと虹が出てきました。
まるで…私たちを祝福するみたいに………。
「傘……いらなかったな……」
「そうですね。」
そう、私が傘を忘れていなかったら……きっと相沢さんの思いは分からなかったでしょうね。
たしか今日の朝…テレビの占いコーナーで…
「射手座のあなた。
あまり良い運勢ではないんですが、思いもよらぬ事が起こるかも。
油断は禁物。
バッドかハッピーかはあなた次第！」
なんて言ってましたね。
本当に思いもよらない事でしたよ。
でも、よかったです。
なんてったって、相沢さんと付き合える事になったんですから。
ライバル多いですからね。
でも
「相沢さん、帰りましょう！」
腕を組んで走り出します。
「お、おい。天野？」
相沢さんが何か言ってますが聞きません。
「ったく……」
苦笑してるのが見えなくても分かります。
もっとギュッと相沢さんの腕に抱きついてみます。
「離しませんからね♪」
「あ………天野……」
自分でも不思議なくらい自然に出来た笑顔。
相沢さんが赤くなってます。
「可愛いぞ、天野。」
そんな…可愛いだなんて…顔から火がでそうです…。
そう思ってると相沢さんの顔が近づいてきて……。
唇に触れるだけの軽いキス。
ほんの一瞬だけど、身体中を駆け巡る感触。
心臓が暴れまわってます。
恥ずかしいですけど……。
「お返しです……ちゅ♪」
「相沢さん……いえ、祐一さん。好きです。」
「俺も好きだぞ。天野……いや、美汐。」
「大好きです♪」
Fin
投票結果
神代 悠 (採点:3)
素直にいい！ 正統派ですな。
taka (採点:3)
天気の移り変わりは、心の移り変わりを表してるといった所ですか・・・。ううむ、いい表現方法ですね。
名夜 (採点:2)
恥ずかちー（笑） ただ、台詞の最後に句点は付けない方が見栄えは良いです。
十七夜 (採点:2)
どうとも言えず、展開が急ですね。
Alice (採点:2)
全体的にちょっと唐突だったかな？と第一印象。美汐がどさくさに告白するって展開は良いとは思うんですけど、心情をもう少し語って欲しかったですね。シチュエーションはとても良かったので。ラストの方も少し突貫臭かったので、この作品はあとほんの僅かで良いので、作り込めば良くなると思いました。
akira (採点:5)
甘い！！甘々すぎる！！美汐でこの手の甘いラブ話大好きですよ♪ 照れた美汐もキュートでグー！！
naoki (採点:1)
やりすぎです。興ざめです、ここまでくると。
Kanade (採点:3)
どうして大概の天野さんは、後半になると人格が変わるのでしょうか。可愛いけど。
ASKA (採点:4)
美汐がかなりいい感じです。
Lv2 (採点:2)
悪くはありませんが、終盤が急激すぎる進展が少々強引でしょう。
ugen (採点:2)
話の進め方急ぎすぎ
藍翔 (採点:5)
いい・・・。
piro-suke (採点:1)
なんだか美汐じゃないような気が・・・目の前でやられたら吐血しそうな二人ですな（＾＿＾；）
名無しさんだよもん (採点:1)
ちょっと待て。走りすぎ。制限速度は４０キロ。
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。話の展開がありきたりかつ性急。溜めというものを意識した方が良い。モノローグだけでなく、もう少し情景描写もしっかりと。文章のレベルも低い。
グＥ (採点:3)
告白シーンがちょっと急すぎだと思いました。もう少し照れた描写とかがあったらよかったと思いました。
十七夜 (採点:2)
短編だから仕方ないか。展開がすこし唐突かな。
コーダイ (採点:5)
美汐が激かわいい・・・・サイコ〜
naka (採点:4)
天野と祐一・・・、貴重です。あえて真琴のことは出さないのも◎
かずき (採点:1)
だめだ・・・、祐×美汐もだめだ。
kuryu (採点:2)
脳みそが解けそうなほど甘い感覚です。
アーリマン (採点:2)
よく読む話ですね
神崎隆一 (採点:3)
冒頭の空白は読む気を削がれる人もいるのでやめた方がいいでしょう。あと「〜〜。」は一般的に読みにくいとされているので書かないほうが無難です。
Ｇａｒａ (採点:1)
告白からの展開があまりにも安易。「告白したら相手も自分を好きだった。ハッピー」で終わり、では単純な話過ぎ
ＮＧ翁 (採点:3)
なんかごちそうさまでしたって感じです。香里派なオイラですが、このSSで美汐派に傾いたのは秘密（何）
浮動明王 (採点:2)
美汐が原作と違い過ぎ 原作の美汐は失言でも「好き」などと言うことはない
Ｖｉｓ (採点:2)
こんなに簡単でいいの？ というのが最初に思ったことです。
すなふ (採点:2)
いいなぁ、としみじみと。とても文章が綺麗なところと、一本調子で単調になる箇所と、文体にむらがあるのが減点でしょうか。
ひゅう (採点:3)
告白とそれに対する反応が急で変です。それが無ければいいんですが、それを取るとこの作品は成り立たない・・ということで３点。
シューマン (採点:3)
あっさりとした感じでしつこくなくスラスラと読むことができました。 美汐の一人称もいい感じに書かれていたとおもいます。
全採点
5点 : 10
4点 : 10
3点 : 73
2点 : 85
1点 : 24
このSSは、作者の方に二次著作権が存在します。
転載、無断引用を固く禁止します。
戻る