SSこんぺ No.024 : Ｔｅａｒｓ～涙の理由～

Ｔｅａｒｓ～涙の理由～

＜Ｙｕｕｉｔｉ　Ａｉｚａｗａ＞

「祐一・・・起きる」

ん？・・・この声は・・・もう朝か？

「・・・起きない」

だって、今日は日曜だろ？もう少し寝かせてくれ・・・

と言うわけで俺は声を無視して眠りに入ろうとした

「・・・こういうときは」

ちゅ

俺の頬に柔らかい感触が・・・

「って何するんだ！舞！！」

そう、今まで俺を起こそうと試みていたのは舞だった

俺は一年前の舞と佐祐理さんが卒業した日から舞と一緒に暮らしている

佐祐理さんも一緒に住むはずだったが・・・どうしても両親の了承がもらえなくて今は別に暮らしている

と言っても、ほとんど毎日来て、夕飯食べて帰るから一緒に暮らしているのと変わらないけどな

はい。話題終了

「・・・祐一が起きないからキスした」

真顔でそんな恥ずかしいことを言うな～！！

・・・って真顔じゃないな。少し、頬が赤い

「それは分かってる！！どうして俺が起きなかったらそんなことするんだ！？」

「・・・佐祐理が祐一が起きなかったらキスしろって」

恥ずかしいのかさっきより頬を赤くしてさらに俯いてる

舞萌え～

じゃなくて・・・佐祐理さん・・・あなたは天使ですか？悪魔ですか？

「ま、いい。取り敢えず・・着替えるから先に行っててくれ」

キスしてもらった事自体は嬉しいしな

「分かった。早く来る」

それだけ言うと舞は部屋から出ていった

ったく、日曜だって言うのにどうしてこんなに早く起きなくちゃいけないんだ？

そばにあるまったく役に立っていない目覚まし時計を見ると時刻は７時をさしていた

「ふあ～っ・・・まったく、舞ももう少し寝かせて」

そこまで言って気がついた

今日は日曜日・・たしか、あの約束をしたのも日曜日・・・

って今日じゃないか！！

舞が起こしてくれなかったら間違いなく寝坊してるな・・・

よかった。今日は早く起こしてくれたことに感謝しなくちゃな

「・・・祐一、遅い」

俺が着替えて、舞のいるところへ行った時の舞の第一声がそれだった

「遅くはないと思うがな」

現に俺はあの後、急いで着替えて来たのだから時間としては５分ぐらいしかかかっていない

「・・・遅い。みそ汁が冷める」

「ああ、スマンな。それじゃ、冷める前に食べるか。舞の愛のこもった手料理をな」

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるのはお約束だ

ズビシッ！！

「いって～～！！何するんだ！？舞」

舞のチョップが俺の額にばっちり命中した

「・・・祐一が恥ずかしい事言うから」

そう言いながらもう自分の作った料理を食べていた

ふ～、まったく舞の照れ方も変わらないな。一年前と

「それじゃ、俺もいただきます」

俺も冗談抜きで腹が減ったので取り敢えず目の前にある手料理を口にすることにした

「ごちそうさま」

「・・・お粗末様」

このやりとりももう一年も経つのか・・・

最初の方は舞が一方的に照れて何も言わなかったが・・・最近やっと板に付いてきた

「・・祐一」

「ん？なんだ？」

舞から話しかけてくるなんて珍しいな。大体そう言うときは決まっている

「・・・買い物」

荷物持ちである

「なんだ？今日は重たい物でもあるのか？」

「・・・ない」

「だったらどうして俺が必要なんだ？」

いつもは舞一人で行っているのはずだが・・・

「・・・祐一と買い物に行きたいから」

顔を赤くして俯いてボソボソと言った

くぅ～！朝からええもん見せてもらいました！

「で、いつ行くんだ？」

「・・・お昼から」

そりゃそうだな。午前中はいろいろ忙しいらしいし

「よし、わかっ」

”た”と言いかけて思い出した。って言うか忘れすぎだな俺。今朝、思い出したばかりなのに

「・・スマン。舞、今日の午後からは先客があるんだ」

「・・先客？」

「ああ、ちょっと北川と行かなくちゃいけないところがあったんだ」

「・・・そう」

そう言う舞の顔は残念がっていた

「今度、埋め合わせするからな。マジでスマン」

「・・分かった。先客があるならしょうがない」

ふ～、よくできた彼女でよかったよ

その後、掃除やら片づけやらやっているとあっという間に１時になっていた

・・・たしか、約束は１時半。そろそろ行くか・・

「舞、ちょっと俺、行って来るわ」

「分かった。気をつけて」

「おうよ」

俺は近くにかけてあった上着を手に取り・・・季節は春とは言えまだ寒いからな・・・外に出た

＜Ｍａｉ　Ｋａｗａｓｕｍｉ＞

・・・今日の夕飯・・・何にしよう

私は商店街を歩いていた。今日の夕飯の材料を買うために

本当は祐一と来たかったけど、北川と言う人と約束があるらしい。残念

・・・決まらない

佐祐理から習った料理はいっぱいあるから目移りしてしまう

・・どうしよう？

やっぱり祐一に訊けばよかった

そう思ったとき視界の端に祐一が着ていった上着が見えた

・・・祐一、見つけた

いくら北川という人と約束があっても今日の夕飯を訊くぐらいの時間はあると思う

祐一に駆け寄った。でも祐一の隣を歩いていたのは今朝、祐一が言っていた人とは違う

女の人・・・あれは・・・佐祐理？

・・・佐祐理がどうして祐一の隣を歩いてるの？

しかも、佐祐理の方は祐一と腕を組んで笑っていた。祐一も笑っていた

その二人を見て私はその場から動けなかった

二人は何か言ってすぐそばにあった店の中に入っていった

宝石・結婚指輪・リングと看板には書かれてあった

しばらく、のぞいていたら祐一と佐祐理が店員に頼んで・・あれは、指輪？

しかも、佐祐理の薬指にはめていた

・・・・・決定的だ。祐一は私ではなく佐祐理を選んだ

私はそれを頭で理解するとその場からすぐに引き返してしまった

今、見た光景をうそだと思いたかったから

商店街を出て、祐一と一緒に住んでるアパートまで戻る間、私の頭の中ではさっきのことを考えてしまっていた

祐一は佐祐理を選んだ。もう、あの家には帰ってこないかもしれない

考えたくなかった。そんなこと、絶対に考えたくなかった

でも・・あの光景は・・・決定的すぎる・・・

私は走った。走りながら私の目から涙が出ていることに気づいた

・・・涙？

その涙は家に帰って一人でうずくまっているときもずっと目から頬へと伝っていた

悲しい涙がこんなにも辛くて痛いと言うことを初めて知った

・・・祐一のことを忘れたらこの涙はなくなる？

この涙の原因は祐一だ。祐一に嫌われて悲しいのだ。だったら・・・祐一のことを忘れたら・・・

できない・・・私は祐一のことが好きだから・・・

その考えが頭の中でリピートされ、誰かが止めなければ半永久的に続いていただろう

しかし、泣いたための疲れからか、ショックが大きかったためか私はそのまま眠りについてしまった

「ただいま～」

・・・祐一？

ドアの開く音で目が覚めた。涙はとまっていたがつらさと痛みはまだ残っていた

「ん？舞、いるのか？」

ぱっと電気がついた

「舞、何やってるんだ？こんなところでうずくまって」

「・・・祐一、どうして戻ってきたの？」

「何言ってるんだ。ここは俺たちの家じゃないか」

・・・祐一はいつもの通りの笑顔を浮かべていた

「・・・俺たちって・・・誰？」

「俺と舞に決まってるじゃないか」

「うそ！！」

私は珍しく大声を出して祐一に怒鳴った

「舞・・・」

「祐一は私のことが嫌いになった。祐一は・・・佐祐理を選んだ」

思い出したらまた涙が出てきた

「はぁ？ちょっと待て！それはどういう意味だ」

「・・・私は見た」

「見たって何を？」

「・・祐一と佐祐理が商店街の店で結婚指輪を買うところ」

しばらくの間があって

「っく・・・ははははは」

祐一は笑い出した

私、何か笑われるようなこと言った？

「はははっ・・・ま、舞・・それお前の勘違い」

勘違い？

「ふぅ・・・それにしてもあれを舞に見られてるとはな。わざわざうそをついてまで行ったかいが
ないじゃないか」

「・・どういう意味？」

祐一の言っている意味が分からなかった

「ほれ、これがお前が見た指輪だ」

祐一がポケットから青い指輪を入れる箱を私に渡した

「開けてみな」

祐一に言われたとおり箱を開けてみる

中には思った通り、指輪が二つ入っていた。でも、よく見てみるとそこには名前が彫ってあった

一つの指輪には『Ｙｕｕｉｔｉ　Ａｉｚａｗａ』

そして、もう一つには・・・『Ｍａｉ　Ｋａｗａｓｕｍｉ』と

「・・・祐一・・・これ」

「本当は明日、言おうと思ってたんだけどな・・・ま、知られてるならしょうがないか・・・」

祐一は滅多に見せない真顔になって

「舞、俺と・・・結婚してくれないか？」

祐一らしい、単刀直入な言い方だった

「・・・・はい」

私はその一言言うのが精一杯だった。でも、祐一にはその一言で十分だったようだ

私を優しく抱きしめてくれた

そして、私の目からはまた涙があふれていた

でも、今度は辛くも痛くもなかった

だって今度の涙の理由は悲しいのではなく嬉しいのだから

Ｆｉｎ

投票結果

荒野草途伸 (採点:2)
ん～、舞はかわいいけど、・・・祐一がなんか祐一っぽくないし

qawsed (採点:3)
ベタだけど、こういう話が好きなので1点+

ヘキサ (採点:2)
内容的にはまとまっていて良かったです。ただ、ラストのシーンで結婚指輪を渡すなら『mai　aizawa』の方が良かったのでは？と思いました。

ａｓｈ (採点:1)
話はありがちなもので、目を引く点はないです。舞の恋愛オンチぶりがもっと発揮されると、違った展開になったのではないでしょうか？

十七夜 (採点:3)
面白いですねーちょっとパターン化してるような気もしますが

akira (採点:4)
舞が奥さんですか・・・・・・。それはそれでかなりいい感じですね♪おはようのキスに、愛情こもった手料理、舞のダンナになれるものならなりたいですｗ

naoki (採点:3)
可もなく不可もなく。オチは途中ですべて読めましたし。

Alice (採点:2)
素直に読めました。悪くないＳＳだったと…。可も無く不可もなくという部分もありますけれど、良い感じの雰囲気だったなぁ～と。佐祐理と祐一が逢引（指輪を選んでいる）しているシーンを目撃した舞の心情というか、そーゆー部分がちっと物足りなかったかもしれないけど…。あくまで予想範囲以内の展開でした。

藍翔 (採点:5)
かなり萌えました

TOM (採点:2)
お約束ですね

ugen (採点:3)
お約束なお話し」でも舞が変に子供過ぎるSSが多い中女の子としてうまく書けている

taka (採点:4)
・・・舞萌え。舞は可愛いですね～、やっぱり。純情だし。そこがよく出てたと思います。

SYN (採点:4)
佐祐理の指に指輪を……の下りは少し不自然な感じがします。

Kanade (採点:4)
二人とも、自分より相手の方が優れていると信じているからこその勘違いがある訳で、そんな二人は愛しいなぁ、と。思います。

橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。全体的に説明的すぎる。文章力が皆無。舞の哀しみや喜びがまるで伝わってこない。ただ「悲しい」「嬉しい」とキャラに思わせればいいというものではない。なぜいきなりプロポーズなのか？　そこに至るまでのプロセスは？　背景が読み取れない。この二人にリアリティがまるで感じられない。祐一と舞が一年間同棲していたらどうなるか？　その間にどんな出来事があってどういうことを思ったのか？　心の中に作り上げた二人の人生とその世界観がリアリティを作る礎になる。例えば一年間も同棲していればペアの歯ブラシとかあるだろうし、家事の当番、毎日の日課などもあるだろう。それらが祐一と舞の場合どうなるか。リアリティとはそういうもの。そういった作業を手抜きしてはいけない。

十七夜 (採点:3)
王道すぎた感があります。

ASKA (採点:3)
言葉が少ない舞の感情がよく表れている。が、展開が読みやすい

かずき (採点:3)
舞かわいい。

グＥ (採点:3)
ほのぼのして雰囲気がほんとにいいんですが・・・、始めのほうの祐一の心情描写の一部が台無しにしていると感じたのが残念でした。

naka (採点:5)
素晴らしいの一言に尽きますね。舞ＳＳはあまり読まないんですが・・・、これはいい！

ちいーゆ (採点:3)
萌える……萌えるのだが、ネタとしては普通だったかも。その分だけ減点しました

白 (採点:5)
ほのぼのとシリアスが混ざった一品（笑）

まちゃる (採点:4)
やっぱり舞もいいなぁ…（爆）

神崎隆一 (採点:2)
わかりにくい。内容はいいだけにもっと読みやすい文章を書いて欲しかったです。

Ｇａｒａ (採点:2)
この展開なら別に視点を変えなくてもいいのでは？舞視点で統一した方がよほど判り易いかと。

ＮＧ翁 (採点:2)
王道な展開って好きです。でももう少し表情や仕草の描写を細かめにしてもよかったんじゃないかと思うのは我侭でしょうか。

神代　悠 (採点:2)
お約束ですね～♪

Ｖｉｓ (採点:3)
舞が可愛くて読んでて楽しいのですが、誤解を解くあたりが簡単すぎる気がしました。

はぐ (採点:2)
「ひとまず読み切りました」オチに関してはバレてもともとの方向性かな？（ボクはそう読みました）。もしそうなら、逆にもうひとひねりしていればなぁって感じです。でもまとまりのある作品でした。

全採点
5点 : 7
4点 : 31
3点 : 75
2点 : 57
1点 : 16

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