よく晴れた日曜日には










生命の息吹があふれる季節


鳥は歌い、花は踊る


そして、それはここ、ものみの丘でもかわりはない






というわけで、私こと天野美汐は休日を利用して真琴と相沢さんと一緒にものみの丘へピクニックにやってきました。
何故こんな話になったかというと
それは昨日、久しぶりに三人で帰っているときのこと。真琴が唐突に

「明日、どこか行きたいっ!」

と、ごね始めました。
そこでお金もかからないということで祐一さんが提案したこのピクニック。
幸い、今日は気持ちいいほどの快晴で絶好のピクニック日和になりました。
丘を吹き抜ける春風が気持ちいいです。
まさに、真琴が待ち望んでいた春そのものです。


「ちょっと私の肉まん返しなさいよ〜、祐一。」
「早いもの勝ちなんだよ。」
「あぅ〜、こら待ちなさいってば〜。」
「そんなこと言われて誰が待つか。」


先ほどから真琴と相沢さんは持ってきたお弁当(といっても肉まんづくしですが)をめぐって追いかけっこ。
そして、私はお茶を片手に二人を観賞しています。
無邪気に緑のジュータンの上をかけまわる様子はまるで子狐のよう。
顔立ちのいいふたりがじゃれあう様子は本当に絵になります。
幸せそうな笑みを浮かべる真琴の顔を見ていると、この子が帰ってきたときのことが思い出されてきます。











真琴が帰ってきたのも今日のようなうららかな春の日でした。
相沢さんと熱い抱擁をしたあと、真琴はおずおずとこちらに視線を向けました。
そこで私は会えなかった日々を埋めるように真琴を抱きしめました。
真琴もぎゅっと私に抱きつきました。
二人して、わんわん泣きました。
あんなに泣いたのはいつ以来でしょう。
あの子を失ってから凍りついていた感情があふれて止まらないようでした。


このような再会を果たした私たちでしたが、一つだけ重大な問題がありました。
真琴がいなかった春までの間、私と相沢さんはお互いに励ましあい急速に仲が深まりました。
そして私の心の中にはいつのまにか、強くあり続ける相沢さんへの尊敬の念ともうひとつ、
その・・・・・なんというか、好意というか・・・・・・・・
え〜と・・・・・・・・・その、恋心が芽生えてしまったのです。


初めは悩みました。
自分の親友に対する不義理を心から恥じました。いっそ二人の前から消えてしまおうかとも思いました。
それでも私は相沢さんが愛しくて
それでも私は真琴と一緒にいたくて
二人がいない生き方なんて考えられなくて
だから私は思いきって真琴に告白しました。



はじめは驚いて聞いていた真琴でしたが、全てを語り終わったとき笑顔で、


「いいよ、だって美汐だもん。」


そう言ってくれました。
真琴の笑顔は恐怖であふれていた私の胸のうちにしみわたり、
私は涙を流しながらただただ感謝の言葉を繰り返しました。
真琴はそんな私を見て、照れながら


「もちろん、美汐にも負ける気は無いけどね。」


と付け加えました。





こうして親友にして恋敵という少し奇妙な関係になった私たちでしたが、相沢さんを巡るライバルは他にもたくさんいました。
しかも本当に美人ぞろいですし・・・・・ハァ
美坂先輩と栞さんは姉妹というチームワークの良さを有効利用していますし、
倉田先輩と川澄先輩は年上の魅力を存分に発揮してきます。
あゆさんも商店街で会うたびにモーションをかけてるという噂ですし、油断なりません。
そして、最後に最強のライバルになるであろう水瀬先輩の顔が浮かんできました。
従姉妹にして幼なじみ、おまけに同居までしているというアドバンテージ。
今は中立を保っている秋子さんもいつまで現在の立場でいてくれるのか。
はぁ、本当にあの人はどれだけ私の気をもめばすむのでしょう。



しかし、しかしです!!
多くの苦難を乗り越えてこそ恋は燃え上がるのです。
絆は深まるのです。
今こそ、真琴とともに相沢さんを手に入れ、最終的には私が・・・・・・・



「おい天野、大丈夫か?」
「ひぅ!?」



いつのまにか、相沢さんは私の隣に座っていました。
その片足には、真琴がぐっすりと眠っています。
はしゃぎ疲れて眠ってしまったのでしょうか。
少しだけうらやましいです、膝枕。


「それにしても今日の天野は面白いな。
 表情がコロコロと変わってじつにイイ。」


も、もしかして見られていたのでしょうか。相沢さんはそう言うと深々とうなずきます。
あ〜、顔が真っ赤に染まっていくのがわかります。
もうどうしていいかわかりません。私はただ下を向いているばかりでした。











しばらくそんな沈黙を続けていると相沢さんは突然、私の頭に手をかけてゆっくりと撫ではじめました。

ふわり

そんな心地よいあたたかさに体がつつまれます。


「あ・・・・・・・」


与えられた安らぎに、力の抜けた私の体はゆっくりと相沢さんの膝の上に倒れました。
触れた真琴の髪がくすぐったく、ほおを相沢さんの太ももにこすりつけました。
相沢さんの匂いが、胸がいっぱいです。
のぞきこんできた相沢さんと目が合います。


「ん、どうかしたか?」
「いえ、いい天気だな、と思いまして。」
「そうか・・・・・」


それだけ話すと、相沢さんはまた頭を撫でました。







突きぬけるような青い空には白い雲が浮かんでいます。

私の大好きな匂いとぬくもり。

春の優しい陽ざしとあいまって、大きな安心感が生まれます。

小さいあくびがひとつ。

そして、涼やかな春風。





今、胸にある幸せをそっと抱えて、私はゆっくりと目を閉じました。















投票結果

ヘキサ (採点:3)
ホンワカして良かったです。


音丸 (採点:4)
とてもきれいな終わり方だったと思います。暖かいSSですね。


naoki (採点:3)
典型的ですね。何も残さない、というのはうまい。


荒野草途伸 (採点:3)
タイトル通りのイメージが伝わってきそうです


名無しさんだよもん (採点:4)
萌えたので4点。しかしこの設定は苦しいな、やはり。


ugen (採点:3)
普通に良いでき


taka (採点:3)
まこみしコンビはやっぱりいいですね。心が和みます・・・。


夏葵 (採点:2)
短すぎたんじゃないでしょうか。あと、標準化を。


烏賊悪魔 (採点:2)
ほのぼのらしいノリは◎だけど、ヤマ、オチ、イミ、がかなり不足している。心に残る一言がほしかった。


橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。地の文が説明口調で敬語なのはおかしい。ストーリーの面白さが皆無に近い。ただのワンシーンを書き殴っただけであり、しかもそのシーンが魅力的でない。もっと文章力と構成力を身につけるべき。


Alice (採点:2)
一人称の、なおかつ、キャラクターのチョイスをちょいと間違えているような気がしました。美汐のキャラクターとしては、さっぱりとしていて合っているとは思うんですけど、ちょっとディフォルメし過ぎかな?あと、〜です。〜でした。この文法が多すぎるので、注意。


かずき (採点:3)
祐×美汐は苦手なんだがこれはなんかよいね。


コーダイ (採点:4)
可愛い美汐っていいですね。


グE (採点:4)
美汐がよく描かれていてよかったです。作品の雰囲気も非常にほのぼのとしていてよかったです。


神崎隆一 (採点:2)
雰囲気を文章で上手く出していていいなと思いました。


kuryu (採点:2)
はらっぱがいいですね。


神代 悠 (採点:3)
いいですね。ほのぼのしてて。


Vis (採点:4)
こういう雰囲気を求めていました……。のんびりとしていて、なおかつ美汐が少しエキセントリック。


全採点
5点 : 7
4点 : 43
3点 : 85
2点 : 46
1点 : 6

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