笑顔の舞台裏に
朝。
「ふぁーあ。」
香里がまたあくびをした。
「どうしたの香里。最近ずっと眠そうだね。」
不思議そうに名雪が聞く。
「名雪病でも感染したか。」
１日２０時間の睡眠を必要とするこいつの体質は、まさに病気だといっても過言ではない。
「わたしそんなに寝てないよー。」
ぐはっ、また口に出てたのか。
「だけど本当にどうしたんだ？」
すると香里は遠い目をしてぽつりと言った。
「夜が激しいのよ。」
その台詞で教室中が一瞬にして静かになる。
そして・・・
「ね、相沢君。」
本当に幸せそうな笑顔を俺に向けてきた。
「ど、どういう意味だ！？」
うろたえる俺に
「言葉通りよ。」
と、いつもの言葉で締めくくる。
しかし、俺にはまったく覚えがない。
もしあったら忘れるわけがない。いや、絶対忘れてなるものかっ！。
「祐一、嘘・・・だよね。」
涙目で名雪が聞いてくる。
「あーいーざーわー」
後ろから弱りきった北川が全ての体力を振り絞って怒りのオーラを発生させている。
そういえば、こいつも最近おかしい。（もともとおかしいが。）
「うっ・・・」
北川が呻き声を出して倒れた。こいつは最近だんだん衰弱してきているのだ。
「わたし、もう笑えないよ・・・」
名雪の言葉は、俺の耳には入らなかった。
なぜなら、俺は香里と北川の様子に何かただならぬものを感じたからである。
俺の知らない所で何かが起きている。
俺の灰色の脳細胞がそう告げた。
昼休みになり、俺は恋人の栞と中庭で（大量の）弁当を広げながらこのことを話した。
「なぁ、何か知らないか？」
栞は、アイスクリーム（バニラ味）を食べながら、にこにこ笑って答えてれた。
「それは多分、祐一さんをからかっただけなんだと思います。」
「どうしてそう思うんだ。」
「だってお姉ちゃんは北川さんが好きなんですから。写真だって隠しているんですよ。」
香里は、北川の気を引くためにわざと俺を利用したのだと栞は言った。
「なんか、お姉ちゃんもドラマみたいですね。」
「俺たちとは大違いだな。」
「そんなことないです！！」
ぷくぅとほっぺを膨らませて抗議する。それを見て、
「か、可愛い・・・。」
俺はつい声に出してしまった。
栞はというと、真っ赤になってうつむいている。
「いや、フグみたいだったんでな。」
栞のあの言葉を聞くために、俺は嘘をついた。
「そんなこと言う人、嫌いＤＥＴＨ！！」
案の定栞は引っかかった・・・って、あれ？
・・・・・・。
思考が一瞬フリーズした。
今、何と言った？。
俺の聞き間違いだろうか。妙に正確な発音でＤＥＴＨと言ったような・・・。
いや、まさか・・・な。
俺は不安になり栞を抱き寄せた。
「あ・・、祐一さん？」
俺の胸に顔をうずめる。
確かに今、俺の腕の中にいるのは栞だ。
『ＤＥＴＨ』なんて絶対に言わない。言ってない。
さっき聞いたのは間違いなのだと俺は自分自身に納得させた。
「祐一さん・・・。」
栞が俺に笑いかけてきた。本当に幸せそうな顔で・・・。
そこでふと気づいた。栞の今の表情は、朝の香里のそれと同じであることに。
「なぁ、栞。」
「なんですか、祐一さん。」
「俺、今笑ってるか？」
「ええ。とても幸せそうですよ。」
そうだ。今、俺たちがしている表情は演技なんかじゃ作れない。
だとしたら朝の香里の笑顔は何を意味するのだろうか？
・・・謎は深まった。
ちょうどその頃、保健室でオレ（北川）は目覚めた。
誰かがオレのそばにいるのが分かる。
それが誰なのかまでは差し込む陽射しでわからない。
「北川・・・君？」
んっ・・・、この声は香里か？どうしてこんな所にいるんだ？
「よかった・・・。」
ようやく視界がはっきりしてくると、彼女が泣いていることに気づいた。
「泣くなよ・・・。」
オレは髪をなでてやった。
「私にはあなたが必要なの。」
こ、これは告白っ！？
「美坂・・・」
オレたちは見つめ合う。
そして徐々に顔が近づいていき・・・。
キーンコーンカーンコーン。
・・・唇が触れ合う寸前でチャイムが鳴った。
予期せぬことに体がビクッとなる。
「あ、じゃあ私は帰るからね。」
そう言って立ち上がり、保健室を出て行く。
いかにも香里らしいし、オレらしくもある。
いつのまにか心の中が暖かくなっているのがわかった。
・・・保健室から出て、香里はクスリと笑った。
しかし、その笑みは朝とは違う。
それは冷笑のようであったが、違う。
それは咲き誇る毒花そのものであった。
その夜。美坂家。
「・・・それで祐一さんが抱き寄せてくれたんですぅーっ！」
私は今日の出来事を夕食を食べながら報告しました。
「香里にもそんな彼氏ができるといいわね。」
私の報告が終わると、いつものようにお母さんがいつもの台詞を言いました。
「もうっ、変なこと言わないでよ。」
お姉ちゃんが照れてます。
「そうですよ。」
私はお姉ちゃんに同調しました。お姉ちゃんには北川さんがいるからです。
「写真隠してるの知ってるんだから。」
あ、お母さんスゴイ。あの写真を見つけるなんて。
「あれは違うのよ。」
お姉ちゃんはムキになって否定しています。余計に怪しいです。
「いいかげん白状なさい香里っ！！」
お母さん、だんだんマジになってます。
「だから、そんなんじゃないのよ。何度言えばわかるのっ！？」
お姉ちゃんもです。
サッ。
二人が腰に手をやりました。そして、人形を取り出し、精神を集中させます。
しばらくすると、同時に目を見開きました。
その瞬間からテーブルの上で二人の取り出した人形が戦い始めます。
まるで、本当に生きているような錯覚に陥ります。
一見いい勝負に見えますけど、最後に勝つのはいつもお母さんです。
「まだまだ甘いわね香里。そんなことでは立派な法術（別名：オートマター、レイヤーｅｔｃ・・・）
使いになれないわよ。」
この日もお母さんが勝ちました。
さて、そろそろ眠いので私は自分の部屋に行くことにしました。
「じゃあ私も寝るわ。」
そう言ってお姉ちゃんも自分の部屋に戻りました。
最近私は寝る前に、一日を祐一さんとの思い出の曲を聴きながら、振り返ることにしています。
どんなに眠くてもこれだけは欠かしません。
早速、曲をかけます。
「えいっ。」
ドォオオオオオオオン！！
ガガガガガガガガガガガガガガ！！！
オーディオの再生ボタンが押されると同時に辺りに爆音が響き渡るっ！
『さよなーらはぁ、いわな−いぜーＹＥＡＨ！！』
この曲は私が祐一さんと（あゆさんもいましたけど）初めて商店街に言ったときに見つけたんです。
タカの詩（うた）といって、裏悪（リア）さんヴォーカルのハードロックです。
その、あまりに攻撃的な歌詞とフレーズが問題になり、販売中止を余儀なくされた幻の曲。
ずっと聴いてみたいたいと思っていました。
それがこんなに簡単に見つかるなんて・・・
『これも愛のなせる技ぁあああああああああっっっっっ！！』
そうです！。愛の力でこの曲は私の元に来たんです！！
『そうだぜベイベーっ！！』
「そうなんですベイベーっ！！」
ああ、なんて心に響く曲なんでしょうっ！！。
祐一さん、私はこんなにも熱くあなたのことを想っているのです。
もう我慢できません。
このやり場のない想いはどうすればいいのでしょう？。
『他人にぶつけりゃいいのさＲＥＶＯＬＵＴＩＯＮ！！』
「そうですね！ＲＥＶＯＬＵＴＩＯＮ！！」
私は祐一さんから（無理やり）買ってもらった
（呪いのかかっているらしい）ぬいぐるみを取り出しました。
「祐一さん、この想いを受け取ってくださぁぁぁぁいっ！」
そう叫ぶと私は、ぬいぐるみに必殺のエメラルドフロウジョンを仕掛けました。
続いてシャイニングウイザード！！。
おまけにピープルズエルボーもつけちゃいます！！。
なんだかぬいぐるみがぴくぴくしているような気もしますけど関係ありません。
「ああ、祐一さんっ！！」
両手でぬいぐるみの側頭部を渾身の力でチョップします。
俗に言うモンゴリアンチョップです。
「ぐわぁっ・・・！？」
同時刻、北川が鼓膜の痛みを訴えたことを知る者は少ない。
『昇ろうぜさらなる高みへとっ！！願おうぜぃこの世の終わりをっ！』
「祐一さんっ！！。大好き・・・」
曲と栞の叫びがシンクロする。
「『ＤＥＴＨ！ＤＥＴＨ！ＤＥＴＨ！ＤＥＴＨ！ＤＥＴＨ！』」
（ちなみに、日本語に訳すと
「『死を！死を！死を！死を！死を！』」
であり、ついでに言うと、今は真夜中である。・・・怖い。）
そして、曲はフィナーレを迎える。
「『ＧＯ！ＧＯ！ＧＯ！ＧＯ！ＧＯ！ＧＯ！ｔｏ ｔｈｅ ｈｅａｖｅｎ！！』」
曲が終わると同時にオーディオのスイッチが切れ、再び夜の静寂が訪れる。
さすがに体力を使ったのか、息が上がっている。
「おやすみなさい祐一さん。」
最後に、机の上に飾ってある祐一の写真にそう言って眠りについた。
「終わったようね・・・。」
香里はつぶやいた。
そう、香里が最近寝不足な理由はこのせいだったのだ。
「相沢君も罪な人よね。あのこにここまで惚れられるなんて」
そして笑う。朝の、祐一に向けたあの笑顔で。
栞が幸せにすごしている姿が嬉しくてつい笑ってしまう。
私は誓ったのだ。
どんなことをしても彼女の幸せを守ると。
「どんな犠牲を払ってでもね・・・」
再びその美貌が笑みに変わる。だがそれは咲き誇る毒花に似た笑みだった。
机の引き出しの中から何かを取り出す。
それは北川の写真だった。
香里は、北川の姿を見ようともせずに写真を裏返す。
すると、魔法陣の周りにびっしりと呪文が書かれていた。
私は、（多分栞が無理やり相沢君に買わせた）あのぬいぐるみを見た瞬間に、
それが呪いのぬいぐるみだという事に気づいた。
そのことを栞に言うと、
「だから買ってもらったんです。ドラマみたいでかっこいいですよね。」
と、軽く流されたのだった。
だけど、ぬいぐるみの呪いの力は、ソロモン王の７２柱の悪魔全ての力をも凌駕していた。
あんな強力な呪いがこの世に存在するなんて信じられなかった。
このままだと栞が危ない。
呪いを防ぐには、呪いの宿るあのぬいぐるみを処分するのが一番だ。
しかし、ぬいぐるみを取り上げると栞は悲しむだろうし、かといってあのままにはして置けない。
そこで、呪いの力を別の人に向けることを思いついた。
ぬいぐるみの受けたダメージを呪いの力を媒介として
そのまま北川君のダメージとしてフィードバックさせる。
そうすれば、いつかはぬいぐるみから呪いの力は消えてなくなるはずだ。
「大丈夫よ北川君。死なない程度には制御するから。」
香里は北川の写真に語りかけた。
憐れなり北川。
彼はこの後１週間、毎晩のように苦しんだらしい。
投票結果
ガウガウ (採点:4)
北川君の幸せそうでいてド不幸なところがいいです（ｗ
荒野草途伸 (採点:2)
なんだかなあ・・・これよくわからん。
広木 (採点:1)
スペルくらい確認しましょう
ugen (採点:1)
いきおいだけ
烏賊悪魔 (採点:2)
Aが抜けてる・・・。中途半端な伏線と設定が多い。もっと統一感のある作品を！！
Ｇすぽると (採点:2)
Death Death Death と歌い狂う栞、最高!!
naoki (採点:2)
すさまじいオチですね。面白いのにつまらないです。
せいる (採点:4)
お姉ちゃん・・・やりすぎです・・・（笑）
taka (採点:4)
相当、面白かったです。鳥の歌の壊れっぷりとか。
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。文章が説明的で不自然。ギャグにセンスがなく、つまらない。香里の一人称は「あたし」。栞一人称のパート、栞が普段敬語を使っているとはいえ地の文も敬語なのはおかしい。言葉の使い方がいい加減。「法術使い」「オートマター使い」「レイヤー使い」、人形を使役するということをいいたいのだろうが、それぞれは微妙に違うはず。「レイヤー使い」とは恐らく「エンジェリックレイヤー」（「レイヤー」で調べてみた）を意識したのだろうが、「レイヤー」とは人形を置く装置のことを指し、操縦者は「デウス」。法術使い（エンジェル使い、デウス）が正解。視点の移動は慣れないうちはやめておいた方が無難。最後の段落、同段落内で香里視点と神の視点が行ったり来たりしているのは論外。慣れてもやってはいけない。恥ずかしながら浅学なので「DETH」という言葉がどこの国の言葉か知らない（発音は恐らく「デス」だろうとは思う）のだが、この言葉は一般常識のレベルなのだろうか。そうでないとすれば、そんなマイナーな言語（ネタ）を使用する場合には読者に対するなんらかのフォローが欲しいところ。ちなみに補足しておくと英語の「死」は「DEATH」である。
Alice (採点:1)
わかるネタを使ってください。それが最初。コンペの条件として、なるべく万人が理解する内容にするべきとありましたが、歌がわからない、ギャグのネタがわからないなどなど。北川と香里のいけない関係を連総させた序盤の罪は重いです。あと、スペルミスには注意だと…。ＤＥＴＨでも、通じるのかどうかはわからないけど、Ｄｅａｔｈなんじゃないですか？本当は。まぁ、他の人も同じ指摘をしている可能性もあるかと思いますが頑張りましょうってことで。
かずき (採点:1)
最初は良かったのに・・・、北川の扱いが酷すぎです。
コーダイ (採点:5)
最初から最後まで大爆笑しました。
グＥ (採点:1)
私は世界観についていけませんでした・・・。
通行人Ｂ (採点:1)
こういう話だめなんです。ごめんね
kuryu (採点:1)
何がテーマか明確にして欲しいです。
暇人 (採点:4)
呪いって恐ろしいですね・・・
由樹 (採点:5)
栞がかなりブッ飛んでますな。北川が凄ェ憐れだ…。
naka (採点:4)
北川のあるべき姿ですね・・・。
TempFighterZ (採点:5)
勢いに飲まれてしまった。
おーふな (採点:2)
うーん、つまんなくはないんだけど、なんか元ネタのありそうな感じが気になるー。
舞耶 (採点:3)
えっえっ？そういう落ち・・・?（汗）
神代 悠 (採点:1)
エメラルドフロウジョンとか使うなー！ 三沢か貴様はー！ｗ
KOU (採点:5)
魔王カオリン？
浮動明王 (採点:4)
美坂家に法術が伝わるとはいかにも似つかわしくてよいですね
Ｖｉｓ (採点:4)
DETHって……DEATHのことですよね？
はぐ (採点:1)
採点不能「読めません」
神崎隆一 (採点:1)
スペルチェックはしましたか？ 重要なギャグにこんなミスを入れるなんて最悪です。ってか評価にも値しません。最後にもう一回、念入りにチェックを入れるべきだと思います。というより、ギャグそのものを見なおしたほうがいいと思います。
シューマン (採点:3)
北川哀れなり、と言うか美坂家って一体何者だ
全採点
5点 : 6
4点 : 26
3点 : 58
2点 : 57
1点 : 56
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