「笑顔になれる」
真琴の悪戯癖も大分落ち着いてきた。
学校途中まで俺についてくるようになったし、帰りは校門で俺を待ってくれている。
そんな真琴を可愛いと思うと同時に、なんとかしてやりたいと思う気持ちが出てきている。
ゲーセンの前で時々見かける真琴を見ていると。
寂しそうにシール印刷機の前に佇んでいる真琴を見ていると。
そんな時、俺は校門で待つ真琴をじっと見つめている一人の下級生を見た。
その子もまた、寂しげな瞳を持っていた。
どうにかしてやりたい、そう思わせる瞳。
その二人の少女は、きっと仲良くなれるんじゃないか。
そう思った。
天野が校門で俺を待つ真琴を見ている眼差しが、シール印刷機の前で楽しそうに写真を撮っている女の子たちを見ている眼差しと同じに見えたからだ。
だから俺はその下級生の少女、天野美汐に頼んでみることにした。
「・・・・・相沢さんが私にそれを頼むんですか？」
天野の言っていることがよくわからない。
「それは・・・・ひどく残酷なことなんですよ」
わからない。
「わからない」
「今に・・・わかりますよ」
「そう、なのか？」
「はい、きっと・・・・相沢さんは後悔します。それでも・・・いいんですか？」
天野は何故こんな脅しをかけたんだろう。
それを知るためには受け入れるのが一番だ。
「いいさ。頼むよ・・・・・」
その日から、真琴と天野は友達になった。
「いってきま―――――――――――――――――すっ！」
「今日も天野のところか？」
「うんっ！みしおが待ってるの！」
ま、頼んだのは俺だからなあ・・・・・
「天野によろしくな」
「うん！いってきま――――――――すっ！」
いいことだよな、うん。
真琴の意地悪もなくなったし、学校で見かける時、天野の笑顔も見ることが出来るようになった。
いいことだ。
「中庭で雪合戦？」
「ええ、相沢さんも一緒にどうですか？」
真琴とやるんですけど、と付け加えられる。
「そりゃまずいだろ」真琴は部外者なんだぞ。
「注意されたら終わりにしますから」
・・・・・・こりゃ放っておくわけにもいかないな。ましてや俺は真琴の保護者みたいなものだし。
「ゆういち――――――――――――――――――っ！」
・・・・・・・・やれやれ。早いところ終わらせよう。
「あたしと祐一チームだよ。だから祐一はあたしの方に来るの！」
「ああ、わかったわかった」
とにかく早いところ満足させてやろう。
真琴の側に向か・・・・・・・・う？
なんだぁ？
急に足元が頼りなく・・・・うわああっ！
がぼがぼがぼがぼっ！
これは・・・・一体・・・
「わーいっ！引っ掛かった引っ掛かった―――――――――――――っ！」
「ほらね？悪戯っていうのは普段いい子にしていた方が引っ掛かりやすいって言ったでしょ？」
上から笑顔交じりの声。
見上げると２人の少女が覗き込んでいた。
「祐一は落とし穴にかかったんだよ！あたしとみしおが作ったんだよ！」
「だからあの時言ったじゃないですか。「後悔する」って。自業自得ですよ」
俺としては、しばらく呆然と笑顔の２人の少女を見上げることしか出来ずにいた。
だけど、無邪気に笑う真琴を、そして天野を見ていると、俺も自然と笑みが浮かんでくる。
よかった。
この２人を引き合わせて本当によかった。
「ふふふふ。相沢さん、罠に引っ掛かったのにどうして笑っているんですか？悔し紛れですか？」
違うさ。
そんな顔で天野が笑うのが嬉しくて、だよ。
だけど、それを言うのが照れくさくて、恥ずかしくて。
つい違ったことを言ってしまう。
「いや、嬉しくて、さ」
「え？なにが嬉しいんですか？・・・・ひょっとして相沢さん、悪戯されるのが嬉しい趣味を・・・」
「違うよ。いい眺めが見れて嬉しいからだよ」
見上げれば鉛色の空。
笑顔の２人の少女、そして・・・・その２人は揃ってミニスカートを穿いている。
つまりはいい眺め、ということだ。
「とても・・・いい眺め、だ。ありがとうな、２人とも」
「・・・・・・・・・・・・・・・・きゃあっ！」
真っ赤になって前を押さえる。やっと気付いたらしい。
「え？・・・・・・わあああっっ！」
天野につられて真琴も慌てて前を押さえる。
その慌てぶりが楽しくて、また笑った。
さっきの笑顔、今の赤面しながらの慌てよう。
お前にもそんな顔、出来るんだな、天野。
ずっと・・・・そんな顔してろよ。
その方がずっと、天野にお似合いだぞ。
「・・・・・・・・・真琴」
「・・・・・・・・・うん」
ふと、笑顔が固まる。嫌な予感に。
「「埋めよう」」
おしまい。
投票結果
ａｓｈ (採点:4)
真琴と一緒にいたずらの計画を練る美汐の楽しそうな様子が、目に浮かぶようです。
ugen (採点:4)
真琴シナリオIFといった感じ、真琴と美汐のコンビが良い
naoki (採点:4)
ギャグですね。美汐がいい味出してます。
名無しさんだよもん (採点:4)
何色だったか書いてないので−１点。
Kanade (採点:3)
恐らく間違いなくこの後埋められたであろう祐一君に黙祷を。
qawsed (採点:3)
4に近いけど…3です
橘征五郎 (採点:2)
まずは基本的な文章作法の勉強を。序盤に伏線を張っておくなど、構成はなかなか。しかし最後がギャグで終わるのはどうか。話の印象は最初と最後で決まるので、「ほのぼの」を謳うからには最後はほのぼのとさせておきたい。あとは文章力を磨けば良くなるだろう。出来ればタイトルにも一捻りを。
荒野草途伸 (採点:2)
なんていうか。バラバラ。としか。
かずき (採点:4)
すれ違いが気持ち良いね。
コーダイ (採点:5)
天野の明るくなるほのぼのＳＳではかなりいい出来だと思います。
グＥ (採点:3)
本編の１シーンをうまく使ったＳＳだと思いました。
ちいーゆ (採点:2)
途中まではいい感じだったんですがね……
まちゃる (採点:3)
前半のシリアスちっくな匂いにフェイントかまされた気分です（笑）
Alice (採点:3)
高評価連続です。美汐ＳＳ嫌いを止めてくれたことに感謝です♪あっさりした内容に好印象。ですが、序盤から後半への流れ微妙にずれているのがもったいないかと。けど、ＳＳの言葉遊び的な要素は充分に良かったと思います。あとこれは蛇足ですけれど、写真印刷機…素直にプリクラにした方が良くないですか？わざとらしすぎて、ちょっぴり萎えます。
Ｇａｒａ (採点:2)
真琴が妖狐、という設定を無くしてますけど、それ以外には何も無い話ですね。美汐も悪戯好きだった。だから「後悔する」。というのは判るけど、では「残酷」は？
神崎隆一 (採点:2)
美汐の口調をもっとしっかりとして欲しかったです。
神代 悠 (採点:3)
バカですねこいつｗ でも、楽しそうでいいですね。
taka (採点:3)
祐一よ、エイエソに眠れ・・・（笑）
はぐ (採点:4)
「良かったです」 いい感じです。逆に祐一の内心を投影し過ぎないほうがもっと良くなったかもなんて考えをしてしまうくらいに。ボクはこういうの好きなんで余計にそういうところに目が…。
全採点
5点 : 9
4点 : 42
3点 : 66
2点 : 43
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