ため息の日曜日
「ボクのこと、忘れてください。」
奇跡は、起こった。
あゆは７年もの長い夢から覚め、再び俺の前に現れた。
７年前に止まった二人の時が動き出すーーー
―――と、同時に沸いて出たのは高校入試と言う現実問題。
あゆが高校入試に向けて勉強をするのを手伝うことになった。
最近は碌にデートにも行かずあゆの勉強を見ている。
日曜日の今日もあゆは俺の部屋で勉強をしている。（ちなみにあゆは秋子さんの「了承」で居候している。）
「祐一君……どう？」
心配顔で覗き込んでくるあゆに見えないようにして渡された問題集の採点をはじめる。
・
・
・
「まぁ…なんだな。」
予想はしていたとはいえ、
「ここまでうぐぅな採点結果になるとは思わなかったぞ。」
「…うぐぅ。」
採点結果を眺めながらうぐうぐ唸っている。
「ここまで見た目通りの学力しかないのは大問題だぞ。」
「大丈夫だよっ！まだ一年もあるんだから！」
そう言うあゆの表情には説得力が無い。
「普段から小○生に見えてしまうとはいえ…」
「だって７年間も眠ってたんだからっ。」
「だけどなぁ、幽霊って言うか……生き霊のようなものになってたんだし勉強は出来ないか？」
「出来ないよっ。ボクの行ってた学校はボク一人しかいなかったんだから。」
しょんぼりとうな垂れるのを見てさすがにまずいと思った。
（やっぱり冗談でも７年前に関することは言わない方が良かったな。）
「……悪い。一番寂しい、苦しい思いしてたのはあゆなのにな…。」
たまに軽率な発言であゆを傷つける時がある。
気を付けようと思っていてもいつもの口調でつい言ってしまう。
あの時の傷は二人とも触れないようにしているのに……。
あの時の傷を触れられたくないはずなのに……。
「大丈夫だよ。」
そう、にっこりとあゆは答えた。
「大丈夫。たしかに７年前から辛いと思った事もあったし寂しかったり、悲しかったりしたけど…それ以上に今が幸せだからいいんだよ。昨日を悲しむよりも今日を楽しんで明日を楽しみにすればいいんだよ。」
「そう…だな。」
―――俺が思っていたよりもあゆはずっと強くてずっと大人だ。
そう思っているとあゆが少し顔を赤くして言ってきた。
「でも、たまには振り返るのも良いかも…」
「なんでだ？」
「…だってせっかく二人が出会って、楽しかった思い出もあるんだから。」
過去は悲しい事ばかりじゃなかった。苦しい事ばかりじゃなかった。
月宮あゆ。彼女に出会えた。
あゆを好きになった。
これからもずっと一緒にいられる。
俺はそれだけで充分に７年間は報われる。
「…うん。ボクも、こうして祐一君のそばにいられるなら７年間は報われると思うよっ。」
「へ？……まさか、口に出してたか？」
「う、うん。そうだよ。」
真っ赤になって肯くあゆ。
「ぐはっ。とんでもない事を口走ってしまった。」
ちらとあゆの方を向くと、
「……うぐぅ。」
同じように俺の顔を見るあゆの顔があった。
「……………。」
「……………ま、まぁ、これから色々あるけど楽しんでいこうか。」
自分でもなんとも的外れな事を口走ってはいるがあゆも少し混乱しているようなので大丈夫…か？
あの７年間は変わらないし埋らない。けどこれからは7年でも１０年でも思い通りに変えてゆける。
「これからも一緒だ。ずっと…な。」
にっと笑ってあゆを見る。
「うんっ。」
あゆも嬉しそうに笑って俺を見る。
俺達二人は７年前から共に歩き始めたばかり。
これから色んな事が俺達を待っているーーー
「だが楽しんでいるイメージを膨らます前に、目の前の問題だな。」
そう言って現実に目を向ける。
「うぐぅ…ほどんど丸がない……。」
改めて問題集の採点結果を眺めてぼやいている。
「ぼやきたいのはこっちだぞ。これ何年の問題集だ？」
「えっと……小６…。」
消え入りそうな声で言ってくるそれを聞いてはぁと溜め息をついた。
「……いいさ。まだまだ時間はあるんだからな。」
「うん…。」
「俺が一緒に勉強を手伝ってやるから、来年は一緒に学校に行こうな。」
「うんっ。ボク頑張るよ！」
「よし、その意気だ。」
あゆが新しい問題集に向かうのを眺めながら高校に入学して一緒に登校するのを思い浮かべる。
「―――あゆ、頑張れ。」
「祐一君も頑張るんだよっ。もうすぐ受験生なんだから。」
「……うぐぅ。」
ま、まさかあゆに言われるとは思わなかった。
〜おわり〜
「あれ？よく考えたらボクが高校に入学した頃って…祐一君は卒業してる……。」
「あ、そういえばそうだな。」
「祐一君っ、留年して！」
「それは嫌だ……。」
投票結果
ugen (採点:3)
普通の作品可もなく不可もなく
グＥ (採点:3)
二人のほのぼのとした雰囲気が非常によかったです。
naoki (採点:3)
ほほえましい話ですね。
kuryu (採点:3)
最後の部分がないす
かずき (採点:2)
まあこんなもんかなと。
Alice (採点:2)
う〜ん、微妙。笑いをとるのか、しんみりとした展開をとるのか？どっちか一つにした方が良いと思われる。理由、短いから。どっちつかずの展開だったのでこれは勿体無いでしょう？評価：Ｄ
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。ギャグか、シリアスか、ラブコメか。一体何を書きたかったのか中途半端。文章力＆センスの欠乏症か。オチもイマイチ。
taka (採点:3)
祐一、愛のために留年。なんか本末転倒のような気が（笑）結構それはそれで面白いんですけどね。
すなふ (採点:3)
キャラの魅力が良く生きているんじゃないかな。ほのぼのとして、少しだけせつなくなって、幸せになって、きちんとKanonの世界を描いてる。
はぐ (採点:1)
「読むのは疲れました」 せめて、会話だけでも読み直してみましょう。違和感がありすぎて。言わせ過ぎると読むほうとしてはかなりきついです。
神代 悠 (採点:3)
全くこいつらはｗ こうなったら大学まで追いかけるしかないっｗ
全採点
5点 : 1
4点 : 17
3点 : 68
2点 : 55
1点 : 14
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