あゆあゆお花見奮闘記
いつもは人の少ないはずの公園も今日はすごいぐらいの人でにぎわっていた。
当たり前かな。せっかくのお花見だもんね。
空を見上げると桜色に染まった世界の向こうにどこまでも青い空が続いている。
今日も、いい天気……
長かった冬も終わって、この街にも遅めの春がやってきた。色々あったけど、ボクは今幸せだよ。
あったかい人たちが側にいてくれるし、それに……
「……どした、あゆ？」
「ううん、なんでもないよ」
祐一くんの言葉に笑いながら首を横に振る。あはは、見てたのばれちゃったみたいだね。
「……変なやつ。あ、あれ？」
「へ？」
祐一くんが指差した先を見るけど、ただ桜の木があるだけ。
ちゅっ。
「ゆ、祐一くんっ！」
唇の感触に慌てて祐一くんの方を見る。な、なにするんだよいきなり……
「いやあ、なんかあゆがかわいく見えて」
「だ、だからっていきなりそんなことしないでよ……うぐぅ」
顔が熱くなってくのがわかる。顔を伏せようとして、
きゅっ。
「わっ……ゆ、祐一くん……」
いきなり抱きしめられる。祐一くんが笑いながらこっちの事を見てる。けど、周りの人も見てるし……うぐぅ……
「や、やめてよ祐一くん……」
「あゆはこうされるの、嫌か？」
「い、いやじゃないけど、恥ずかしいよ……」
「あゆ」
「え……」
顔を上げると、祐一くんがやさしい目でボクのこと見てる。だんだん近づいてきて、ボクもそれに合わせるように目を閉じていって……
「ん……。ふぁ……」
ゆっくりと、あったかいキス。
「祐一ぃー、あゆちゃーん、おまたせ……」
「っ！？」
声のしたほうを見ると、名雪さんを筆頭に他のみんなが笑顔を固めたままボクたちのことを見てた。
あはは……そういや、みんなで花見に来てたんだもんね。いても、おかしくなんかないよね、うん。
「うぐぅ、怖かった……」
「あらあら、はい、ジュース」
「あ、ありがと」
秋子さんにもらったジュースを一口飲む。ううっ、喉がからからだよ〜。
あの後遅れてやってきた秋子さんが名雪さん達を説得した。そのおかげで今はみんな機嫌が治ったみたいだけど、ちょっとあの目は怖かったよ。
きっとあれが殺気に満ちた目って言うんだろうね。
「うにゅ〜、イチゴがおいしいよ〜」
すっかり機嫌の治った名雪さんが重箱のなかにあったイチゴをほおばりながら言う。
「しっかし、豪華なメンバーになったな」
「うん、そうだねっ」
横でつぶやく祐一くんにうなずく。見まわしてみると、香里さんがアイスを食べようとしてる栞ちゃんを止めてて、その横で舞さんが佐祐理さんに取ってもらったからあげをうれしそうに食べていて、美汐さんが真琴ちゃんにおかずを取ってあげている。
「ボク、にぎやかな方が好きだからうれしいよっ」
「俺はあゆと二人っきりで来てみたかったけどな」
「えっ……？」
だんだん顔が熱くなってくのがわかる。ふ、二人っきりって……。うぐぅ、なんか、恥かしい……
「な、なんか、恥かしいよ……」
「あゆは、俺と二人っきりってのは嫌か？」
「い、いやじゃ、ないけど……」
「ならいいだろ」
にこっと笑ってくしゃっとボクの頭をなでてくる。
「わっ」
「なんかあゆの髪って柔らかいな〜」
「や、やめてよっ、祐一くんっ」
しばらくして祐一くんがやっと手を放してくれたけど、触ってみたら髪がなんだかくしゃくしゃになってた。うぐぅ、せっかくセットしてきたのに……
「祐一さん、あゆちゃん、楽しんでます？」
しばらくそうしてるとにこにこした秋子さんが近づいてきた。
「ええ、楽しんでますよ」
「うん、ボクもっ」
「そう、よかったわ……。ところで、祐一さん、さっきから何も食べてないみたいですけど」
「え？……あ、そういえば」
そういえば、さっきから祐一くんと話してばっかで何も食べてなかった。
「せっかくみんなでがんばって作ってきたんだから、食べてくださいね♪ 名雪や栞ちゃんや佐祐理さんも手伝ってくれたんですから」
「あゆは手伝ってないのかなー？」
「……うぐぅ」
顔を赤くしてうつむく。うぐぅ、いつか料理できるようになるもんっ。
「はい、祐一さん」
「あ、ありがとうございま……す……！？」
秋子さんからお皿を受け取った祐一くんの語尾がだんだんとかすんでいく。どうしたのかなって思って見てみると、
「……うぐぅ」
「お、なんだあゆ、いるか？」
「う、ううんっ！ ボクお腹一杯だからっ！」
ぶんぶんと首を横に振って祐一くんに言う。あ、祐一くん、冷や汗でてる……。でもごめんね、ボクも死にたくないんだよ。
「祐一さん、どうしたんですか？」
秋子さんがにこにこしたまま祐一さんに聞く。祐一くんは受け取ったお皿……というか、お皿の上に乗ったからあげを見つめながらうなずくと、
「い、いえ。なんでもないです」
かすれた声だった。うぐぅ、あれってやっぱり、見かけはからあげだけど……アレだよね。なんていうか、オーラが出てるもん。
「え、えと、それじゃ、いただきます……」
「はい、どうぞ♪」
祐一くんは汗をぬぐうような動作をしてから、見かけだけはからあげなアレをつまみあげる。そして……
ぱくっ。
「ゆ、祐一くん、大丈夫……？」
「だ、大丈夫じゃないかも……」
横になった祐一くんがぐったりした声でつぶやく。うぐぅ、ごめんね祐一くん……
結局祐一くんはなんとかアレは食べたけど顔を青くして倒れちゃった。秋子さんは薬があるとかいって来た時に乗ってきた車に取りにいっちゃった。
「祐一ぃー、寝ちゃだめだよー」
「そうよっ、寝てると他の人に迷惑よぅ！」
名雪さんと真琴ちゃんがそばに寄ってきた。
「別に寝てたくて寝てたわけじゃないんだけどな……」
「じゃあ何してるの？」
「そこのうぐぅに聞け」
「うぐぅ、ボクうぐぅじゃないもん……」
あゆだもん。
「何かあったの、あゆちゃん？」
さっきの事を見てなかった名雪さんがきょとんってした目でボクに聞いてくる。それで、さっきあったことを話すと、
「祐一っ、死んじゃだめだよっ！」
「誰が死ぬかっ」
「あはは、祐一ばっかみたいっ」
「真琴、お前それが俺に言う言葉か……？」
「うぐぅ、真琴ちゃん、言い過ぎだよ」
「あの、どうしたんですか？」
「祐一さん、大丈夫ですか？」
「相沢くん、どうしたのよ？」
「はぇ〜、祐一さん大丈夫ですかー？」
「……顔色が悪い」
他のみんなが不思議がって近づいてきた、今度は名雪さんが説明すると、
「……それなら、いい方法がある」
『え？』
一斉にみんなで聞き返す。舞さんは祐一くんのそばにかがみむと、
「祐一、頭上げて」
「え？……お、おう」
祐一くんの頭を、自分の膝の上に乗せちゃった。膝枕っていうやつだ。……って、ええっ！？
『あーっ！？』
みんなで驚きの声をあげる。舞さんはちょっと嬉しそうに顔を赤くしながら、
「……こうするといいって、前に佐祐理に教えてもらった。……祐一、気持ちいい？」
「え？ あ、ま、まあな……」
顔を赤くしてうなずく祐一くん。な、何してるんだよっ！
「ま、舞さんっ！」
「……なに？」
こっちを見てくる舞さん。うぐぅ、な、なんか目が怖いよ……。で、でも、ボクは負けないよっ！ 祐一くんは、ぼ、ボクのなんだからっ！
「ぼ、ボクが祐一くんの面倒見るから、舞さんはどいてっ！」
「いや」
うぐぅっ！？ 酷いよ一言で片付けるなんてっ！
「舞さん、ずるいよ〜」
「あぅー、真琴もそれしたいー」
「えぅー、舞さんずるいです〜」
「ふぇー、舞だいたんー」
「舞さん、やりますね……」
「ちょっと油断してたわね……でもね。あたしも負けないわよ」
「……祐一の世話は、わたしがする」
ばちばちとなんだか火花が散っているような気がする。うぐぅ、みんな怖い……
と、誰かがちょんちょん、ってボクの手を叩いた。
「え？」
「逃げるぞ、あゆ」
いつのまに舞さんの膝枕から抜け出したのかよくわかんないけど、祐一くんはボクの手をつかむと一気に走り出した。わ、わわっ！？
『あーっ！？ 待(ちなさい、って、ってください)よ祐一(さん)ーっ！』
後ろから聞こえる叫び声。でも止まらないで走りつづける。
「み、みんな追いかけてきてるよーっ！」
「わかってるっ！ 止まらないで走るぞあゆっ！」
結局、この後長い時間をかけて鬼ごっこをするハメになった。
「はあっ、はあっ、な、なんとか、逃げきったな……」
「そ、そうだねっ、う、ぐぅ……」
膝に手をついてぜーはーって息をしながら言う。うぐぅ。つかれた……
「はあっ、なんでみんな会うたんびにあー喧嘩するかな……」
「仲はいいはずなんだけどね……」
体を起こしながら言う。それに、ボクもみんなのこと好きだし……
「ま、どんな理由かは大体わかってるけど」
「……理由って、どんな？」
聞き返すと、祐一くんがあきれたような目でボクの事を見た。何か言おうとしたのか、口を開きかけてから、
「……秘密」
「うぐぅ、そういわれると気になるよ……」
「気にすんなって。とりあえず、俺がホントに好きなのはあゆだけだから」
「うぐぅ、なんか祐一くんすごい恥かしい事言ってるよ……」
「ホントの事なんだから、いいんだよ」
そう言ってくしゃってボクの頭をなでてくる。
「わっ……」
「……ずっと、一緒にいような」
「……え？」
「なんでもねえよ」
ちゅっ。
ボクのほっぺにちゅってキスして、そのまま後ろを向く祐一くん。今、たしか……
なんだか、顔がにやけてくのがわかった。
「祐一くん、今言った事、ホント？」
「ああ、ホントだ」
「じゃ、ずっと一緒にいてくれるんだね？」
「ああ。いてやるよ」
「……祐一くん」
きゅって祐一くんの背中に抱き着いて、そっと背伸びをして祐一くんにキスしてあげる。
「んっ……」
ボクの思いを伝えられるぐらい、長いキスを。
「……祐一くん」
唇を放して、祐一くんの胸にぽふって顔をうずめてつぶやく。
「ボクも、祐一くんと一緒にいたいよ……ずっと、ずっと一緒にいたいよ……」
「……そっか」
祐一くんがそっとボクのことを抱きしめてくれる。
そっと目を違うところに向けると、桜の花びらがボクの肩にふわってのっかかってきていた。
「……あはは……」
「……あゆ？」
不思議そうな顔をしてる祐一くんに、にっこりと笑って言ってあげる。
これからもよろしくね、祐一くんっ！
おわり。
投票結果
烏賊悪魔 (採点:3)
らぶらぶらぶ・・・・ひたすら『ラブひな』路線まっしぐらなSS。好きな人は好きだけど嫌いな人には・・・・かな？
殺陣倉Xp (採点:3)
こうやって見ると、かわいい女の子なんですねぇ（いつもどう見てたんだ俺？
ugen (採点:4)
あゆが鈍感なのが笑えた
空明美 (採点:4)
熱いです。こっちまで熱くなりました。
グＥ (採点:3)
作品に流れるほのぼのした雰囲気がいいです。
naoki (採点:3)
どっちつかずですねぇ。どたばたが書きたいのか、ラヴを書きたいのか。
白 (採点:4)
甘いのは嫌いじゃなかったり・・・。
かずき (採点:2)
あゆのらぶらぶ話はよかったのに、ハーレム物にしたので台無し。
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。単に全キャラを出してみただけという感が強い。もっと各キャラを動かし絡ませて話を面白く出来るはず。また、祐一にも一応は個性というものがあり、作者の都合のいいようにいじってはいけない。祐一の行動・台詞には違和感しか覚えなかった。あゆに魅力が薄い。状況に巻き込まれ流されているばかりで何も行動していないのが原因か。
musu (採点:1)
傍から見たら、幼女に手を出す変態だよなあ……。
taka (採点:4)
あゆあゆはやっぱり可愛すぎです。萌え〜♪
はぐ (採点:1)
採点不能「読めません」 感じた事：文がおかしいです。明らかに文としておかしいのが初めからどんどん出てくるのは正直キツいです。読めないんですから。
神代 悠 (採点:3)
完全にラブラブモードですねぇ。ライバル達も報われんなぁ（苦笑
全採点
5点 : 4
4点 : 26
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