永久の眠り
「ふぅ・・・・・・」
俺の口から出る、白い煙。
煙草が作り出す白煙だ。
「俺も・・・・・・、しけちまったな・・・・・・」
まだ、俺は１８歳。
煙草を吸っていい歳じゃない。
「それも・・・・・・、去年か・・・・・・」
軽く思い出す、嫌な思い出。
今も続く、永遠の時。
「・・・・・・起きてくれよ、あゆ・・・・・・・・・」
あの時、俺は奇跡を信じてた。
それに、あゆもあの時起きたんだ。
イメチェンをしたいって言って、髪の毛切り過ぎて、俺が笑って、あゆが拗ねる。
そんな日を、俺は過ごしていたんだ。
・・・・・・数時間だけ。
「祐一君」
「なんだよ、あゆ？」
「・・・・・・ホント、ゴメンなさい」
「突然、何言い出すんだよ」
「・・・・・・眠く・・・なっちゃったよ・・・・・・・・・」
「疲れたか？ 俺が傍にいるから、安心して寝ていいぞ」
「・・・・・・ゴメンなさい」
「謝る理由がわかんねぇよ」
「お・・・やすみ・・・・・・・・・」
「ああ。ゆっくり寝な」
その後だ。
あゆは全く目覚めなくなった。
そして、今日でちょうど一年だ。
「・・・・・・あゆ」
前の病院の、前の病室で、前と同じ様に眠るあゆ。
心臓は止まっていない。
脈拍も正常だ。
でも、あゆは目覚めない。
「一緒に、一緒に学校に行くんじゃなかったのかよ・・・・・・」
あゆの寝顔は、とても安らかだった。
それが一年も続くとは思わなかったが。
「ホント、気持ちよさそうな寝顔だよな」
「そうだね。あゆちゃんって、本当に幸せそうに寝るんだね」
「前は、そんな事言えないぐらい寝てたんだけどな」
「ダメだよ、あゆちゃんが起きてるときにそんな事言っちゃ」
「そうだな。名雪の言う通りだ」
俺も、名雪も、すでに進路は決まっている。
同じ大学。
いつもと同じ様に、名雪と登校する事になるんだろう。
でも、俺の中はかなり変わってしまっていた。
「祐一、またここにいたんだ」
「名雪・・・・・・」
「煙草、ダメだよ。ここ、学校だよ？」
「屋上だからいいんだよ」
「関係無いよ〜」
名雪は変わらない。
でも、俺は変わった。
この煙草がそうだ。
煙草で気を紛らわせて、あゆの事を忘れようとしている。
でも・・・・・・、ダメだった。
「・・・・・・祐一」
「なんだよ」
「あゆちゃんの「言うなっ！」」
「・・・・・・ゴメン」
名雪の言葉を、叫んで止める。
俺とは違う人間、他人に、あゆの名前を呼んでもらいたくなかった。
それが、俺の従兄妹である名雪でも・・・・・・。
「忘れられないのは仕方がないと思うよ。でも・・・・・・」
「仕方が無いで済ますの、やめてくれないか」
「・・・・・・ゴメン」
「俺こそ悪かった。でも・・・・・・、クソッ！」
床を殴りつける。
拳に血が滲むまで、何度も、何度も、何度も！
「ゆ、祐一ッ」
「あれは俺のせいだっ！ 俺のッ！ 俺のぉッ！」
「名雪、あゆが寝て何時間だ？」
「そうだね・・・・・・、もう、５時間ぐらいじゃない？」
「そろそろ起こした方がいいかもな。晩飯だ」
「あゆちゃん、ここに住めること、すごく喜んでたもんね」
「秋子さんの料理、楽しみにしてたからな」
「じゃあ、祐一、起こしたら？」
「そうだな。おい、あゆ、起きろ」
「あゆちゃん、起きて」
「おい、あゆ！ 早く起きろ！」
「・・・・・・」
「あゆ！ 秋子さんが料理作って待ってっぞ！」
「・・・・・・ちょっと、祐一・・・」
「おい・・・・・・、あゆ・・・・・・。冗談通じねぇぞ・・・・・・」
「お、お母さん呼んでくる！」
「あゆ！ 起きろ、あゆ！ ここで暮らすんだろ？！おいっ！ 起きろっ！」
これぐらいしないと、気が治まらなかった。
辛かった。
あゆの永遠の眠りに対しての罪を償いには、これだけじゃ小さい。
一度、死のうとしたときもあった。
左手首に、カッターナイフを押し付け、一人、自殺をはかったときもあった。
でも・・・・・・、俺は今も生きている。
死ぬのが怖いんだ・・・・・・。
死んだところで、あゆがいないんだから・・・・・・。
「祐一、五時間目の授業、始まっちゃうよ？」
「サボる」
「・・・・・・また？」
「単位の心配は無い。それに、進学決まってる人間に、授業を聞かせる教師もおかしい」
「・・・・・・そう？」
そうやって考えてしまう、自分が嫌だった。
廃れたもんだ。
そういや、どこかにこんな言葉があったな。
“生きているのが嫌。死ぬのはもっと嫌。そんな我侭、この世界には通用しない”
俺は我侭だな。
いっそ、ここから飛び降りれればいいのに。
俺は怖くて、一歩も進めないんだ。
「とにかく、俺はここにいるよ。帰る時間になったら、また教えてくれ」
「・・・・・・え？」
「たまには、一緒に帰ろうぜ」
「う、うんっ！ じゃあ、帰りにまた来るね」
名雪が駆けていった。
こんな言葉、名雪にかけるのも、久し振りだったな。
いつも、いつもいつも、いつもいつもいつも、俺はあゆの事ばかりを考えていたもんな。
「嘘だろ・・・・・・、そんなの」
「祐一さん、これは・・・・・・現実です・・・・・・」
「一度起きれたのに、何でこんな風になっちまうんだよぉ！」
「完治していなかった・・・・・・と、お医者様は診断しています」
「そんなの、そんなのおかしい！ なんだったんだよっ！ 俺達のさっきの時間は！」
「一生起きないわけじゃありません！ 祐一さん、落ち着いてください！」
「こんなのっ、落ち着いていられるかっ！」
一年・・・・・・。
俺は待った。
待ちつづけた。
あゆが起きる事を。
「・・・・・・もう、もう起きるだろうよ。起きるはずだ。一年だからな」
こうやって、俺は望みを繋いでいた。
そして、それは一生終わる事が無いだろう
「あゆと過ごしてきた時間は・・・・・・夢？」
そう考えてしまう自分。
心の弱さの象徴だな。
「今日も行くか・・・・・・」
帰りになると、必ず病院に行くようになった。
あゆの寝顔を見るために。
「ッと、その前に、名雪を待たないとな」
その時間は、とても長いものに思えた。
「明日には起きる」
「そうね。明日には起きるわ」
「看護婦さん、あゆの病状はどう考えられてるんです？」
「実は・・・・・・、脳に異常が無いの」
「・・・・・・・なんだと？！」
「眠っている理由は、あゆちゃんの意思・・・・・・。それぐらいしか思えない」
「何処の漫画の話だよっ！ それに、あゆが起きたくないって思う理由なんてないっ！」
「ゴメンなさい。でも、それしか言えないのよ」
「・・・・・・クソッ！」
「祐一、また病院？」
「当然だ。あゆが今日起きてるかもしれないだろ？」
「そうだね。きっと起きてるよ」
「おう。起きててもらわないと困るからな」
名雪の“また”という言葉が気に食わないが、俺達は望みを捨てず、病院に行く。
絶対に起きてる。
そう考えて、病院へと歩む。
「こんちは」
「あら、また来てくれたのね」
「あゆはどうです？」
「・・・・・・いいから来てみなさい」
看護婦さんの笑みが気にかかった。
まさか・・・・・・起きたのか？！
「あゆちゃん、祐一君よ」
「・・・・・・ゆう・・・いち・・・・・・くん？」
・・・・・・起きてた。
あゆが・・・・・・起きてた！
「あゆっ！」
「・・・・・・」
起きてる・・・・・・、生きてる・・・・・・。
でも、目が虚ろ・・・・・・。
「・・・・・・誰？」
「な・・・・・・？！」
「祐一君って・・・・・・誰？」
「何・・・、何言ってんだよ・・・、あゆ・・・・・・」
「あゆ？ あゆって・・・・・・誰？」
まさか・・・・・・、記憶が・・・・・・。
記憶が無いだとぉっ？！
「・・・・・・嘘だよ。おはよう、祐一君」
・・・・・・は？
「・・・・・・う・・・そ・・・」
「ごめんね。看護婦さんと一緒に考えたんだけど・・・・・・」
「・・・・・・くっ、ははっ、冗談きついゼ・・・・・・」
冗談・・・だったのか・・・・・・。
冗談、ははっ、冗談か・・・・・・。
「殺すぞてめぇらぁぁぁぁぁッッッッッ！！」
「うぐぅっ？！」
「や、やっぱきつすぎた・・・かナァ？」
「うらぁぁぁぁ！ 冗談ですむかぁぁぁ！ ボケカスこらぁぁぁ！」
久し振りにキレた。
ブチギレた。
「こ、ここは病院よぉ〜。大声出したら・・・・・・」
「貴様の所為だろガァァァァァ！」
「や、やめてぇ」
「うぐぅぅぅぅぅ！」
暴れた。
爽快に。
病院という事も忘れて。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「祐一、もう帰りだよ」
「・・・・・・寝てたのか。今のは・・・・・・夢」
幸せな夢だったかもしれない。
あんな幸せな事が・・・・・・、またあったとしたら・・・・・・。
その見込みが少なすぎる。
だからかもしれないな。
夢にまで見ちまったのは・・・・・・。
「なぁ、名雪・・・・・・」
「何？」
「奇跡って起こると思うか？」
「起こるよ。でも、あゆちゃんが目覚める事は、奇跡じゃないよ」
「・・・・・・だったらなんなんだよ」
「必然、だよ。必ず起きるんだから」
「・・・そうだな。ははっ、俺が間違ってた」
なんか、久し振りに笑った気がする。
希望を捨てずに歩んできたこの日々の中で、俺はいろんな物を捨ててきてしまった。
１つは笑顔。
他にも数知れない。
「行くか・・・・・・、名雪」
「うん。病院、だよね」
「ああ」
「もう、半年ですね」
「そうね」
「あゆの体はどうなんですか？」
「前と同じよ。すごい事なのに、もうそれも実感できない」
「弱体化が・・・・・・無いんですか」
「あゆちゃんの体は、何か特別なものがあるのかもね」
「特別なもの・・・・・・ですか。そう・・・・・・ですね。あるかもしれません」
「・・・・・・祐一君も、変わったわね」
「そうですか？」
「半年前とは、全然違うわ」
「・・・・・・そうですね。少なくとも、考え方は変わった」
「・・・・・・どういう風に？」
「昔は、奇跡は起こるものだって考えていましたよ。でも、今は・・・・・・なんか曖昧です」
「病院に勤める人間がいうことじゃないかもしれないけど、奇跡は絶対に起こるものよ」
「・・・・・・そうですよね」
病院までの道程。
希望の道程。
「起きてる。絶対に起きてる」
「ああ。あゆは起きてる。絶対に」
そうは言い聞かせているものの、内心、信じれなくなってきていた。
さっきの夢。
あんな事があってほしいとは思うのだが・・・・・・。
「祐一」
「なんだよ」
「さっきの質問、何でしてきたの？」
「・・・・・・さぁな。ただ、お前に言われて、希望が強くなった」
「・・・そうなんだ」
「・・・・・・ありがとな」
「そんな、お礼を言われるようなこと、やってないよ」
名雪と歩く道程は、短いようで長くもある。
そのときも、俺は煙草を吸っていた。
美味い、不味い、関係なかった。
気を落ち着かせるための、常套手段だと考えている。
「この道を・・・・・・、俺は１年歩きつづけてきたんだな」
「そう・・・なんだ・・・・・・」
「これで終わりにしたい。あゆの目覚めと共に」
「そうだね。それが一番だよ」
「あゆ・・・・・・」
「・・・・・・」
「お前は何も話してくれないんだな」
「・・・・・・」
「息をしてるのに」
「・・・・・・」
「心臓も動いてるのに」
「・・・・・・」
「もう、年が変わっちまうぞ」
「・・・・・・」
「今年の終わりは、お前と一緒に迎えようと思ってる」
「・・・・・・」
「病院からも許可はもらった」
「・・・・・・」
「お前のお陰で、この病院の常連になっちまったよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・早く起きてくれよ。あゆ」
「・・・・・・」
「俺は・・・・・・、お前がいないと・・・・・・、壊れちまうよ・・・・・・・・・」
いつもの病室。
あゆ１人のための、真っ白な個室。
カチカチと鳴り響く医療器具。
ベットに横たわる少女。
その風景は、１年間、変わる事がなかった。
「あゆ・・・・・・」
「・・・・・・あゆちゃん」
二人同時に病室に入る。
しかし、あゆは眠ったままだった。
「・・・・・・まだ、起きてないんだな」
夢の通りにいくはずない。
夢も奇跡と同じなのかもしれない。
正夢なんて信じない。
それは、奇跡を信じていないのと同じなのかも知れない。
「あら、祐一君。名雪ちゃんも一緒？」
「あ、看護婦さん・・・・・・」
「あゆの具合はどうなんですか？」
「言うまでもなく、前と同じよ」
「・・・・・・そうですか」
寝顔も変わらない。
姿勢も変わらない。
動かない。
息しかない。
そんなの・・・・・・、生きてるって言えるのか？！
今のあゆは、本当に生きてるのか？！
「・・・・・・名雪」
「何？」
「今日、ここに泊まるわ。秋子さんに言っておいてくれ」
「・・・・・・わかったよ」
「看護婦さん、許可とっといてください」
「君の場合は、そういう事しなくてもOKなの」
「そうですか。なら・・・・・・俺はここにいます」
「何かあったら、ナースコールをお願いね」
「わかりました」
「あゆ、今日はお前の誕生日だったな」
「・・・・・・」
「プレゼント、用意しておいたぞ」
「・・・・・・」
「お前がよく食い逃げした、鯛焼き屋の鯛焼きだ」
「・・・・・・」
「つぶあんもこしあんもあるぞ。さぁ、食ってくれ」
「・・・・・・」
「いらないんだったら、俺が食っちまうぞ」
「・・・・・・」
「・・・・・・１つ、食うな」
「・・・・・・」
「・・・・・・しょっぱい。甘いのに、しょっぱいな」
「・・・・・・」
「昔お前が言ってた鯛焼きの味はこれだったのか」
「・・・・・・」
「泣きながら食う鯛焼きは、こういう味なんだな」
「・・・・・・」
「・・・・・・くっ、あゆ・・・・・・、早く・・・・・・、早く起きてくれよ・・・・・・」
名雪も帰った。
看護婦さんもこない。
俺は、あゆと二人きりになった。
「あゆ・・・・・・」
何も答えてはくれない。
「１年って、短いようで・・・・・・長いんだな」
寝顔を見つめながら話す。
端から見れば、１人事にすぎない。
だが、俺はちゃんとあゆに話し掛けているんだ。
「俺も変わっちまった。煙草、吸うようになっちまったし」
ポケットの中に入った煙草を出す。
病室は禁煙。
その事も忘れて、俺は煙草に火をつける。
「窓、開けるぞ」
ガラリと開いた窓からは、冷たい風が吹き抜ける。
あゆの髪がなびき、煙草の煙が漂う。
「そう言えば・・・・・・、俺ってお前と・・・・・・キスしたことなかったな」
前にキスをした時は、あゆの体はここにあった。
要するに、俺とキスしたあゆは本物じゃない。
実際の体とキスした事は、未だ無かった。
「煙草くさい唇だが、王子様のキスだと思ってくれると嬉しいぞ」
そう言って、眠っているあゆに唇を重ねる。
「お姫様はな、王子様のキスで目覚めるってのが道理なんだよ」
それでも、あゆは目覚めない。
だが、少し違う事はあった。
医療器具の表示。
心拍数が上がってる。
「眠ってても、ドキドキしてくれたんだな」
「・・・・・・ぅ・・・・・・ぃ・・・ん」
「ッ？！」
今・・・・・・、何か言わなかったか？！
「あゆっ！ 起きれるか？！」
ナースコールッ！
すぐに看護婦さんが来れるようにしないとッ！
「どうしたの？」
「あゆが！ あゆがなんか喋った！」
「す、すぐ行くわッ」
ま、まさか・・・、王子様のキスでお姫様が目覚めるのか・・・・・・？！
そんな童話じみたことが、本当に起こっていいのか？！
「あゆッ、起きれるかッ」
「・・・・・・・・・ぃ・・・ぅ」
また喋った！
寝言じゃない。
いや、寝言でもいい！
「あゆ、朝だ。起きろッ！」
「・・・・・・うぐぅ・・・」
「お、起きれるのか？！」
「・・・・・・祐一君・・・・・・・・・」
だんだんと開く瞳。
血の気が戻ってくる顔。
動き出す唇。
「は、ははっ、起きた、起きたよ・・・・・・」
「・・・・・・お、おはよ・・・・・・。祐一君」
「起きたぁぁぁ！」
思わずあゆを抱いてしまう。
あゆは呆然と、俺を見る。
「・・・・・・今何時？ すごく寝ちゃった気がするんだけど・・・・・・」
「・・・午後６時だよ。お前、ちょっと寝過ぎだぜ」
「うぐ？ ボク、眠たくなったの５時ぐらいだと思うけど？ むしろ、ここは何処？」
「は、はははっ、お前なぁ・・・・・・」
全部話すと、あゆの顔は呆然から驚愕に変わった。
「ま、また眠っちゃってたの・・・・・・？！」
「お陰で、俺も廃れたもんだ。こんなもんに頼るようになっちまったからな」
「煙草・・・・・・。だ、だめだよっ！ 祐一君、まだ１８歳でしょ？！」
「ああ、そうだ。でも、これでこいつともおさらばできる」
煙草の箱を一気に握りつぶす。
ぐしゃりと音を立てて、それは使い物にならなくなった。
「祐一君ッ、あゆちゃんが起きたってホント？！」
「ああ、この通りです」
「・・・・・・看護婦さん。前と同じ看護婦さんだ」
「起きたぁぁ！」
看護婦さんも、俺と同じ様にあゆに抱きつく。
「こんな奇跡、二度も無いと思ってわッ」
「おいおい、前の言葉は嘘だったのか？」
「奇跡は起こるかもしれないけど、同じ奇跡が二度も起こるとは考えてもみなかったわ」
無茶苦茶言うな、この看護婦は・・・・・・。
「あゆちゃん、体は動く？」
「う、うん。何でかわからないけど、普通に動くよ」
「なら、明日にでも退院できるかもね」
「え、や、やったぁ！」
「よかったな」
「やっぱり、王子様のキスが効いたんだよ」
「・・・・・・ッ！ お前ッ！」
「なぁに？ 王子様のキスって・・・・・・」
「ああ、もう！ 聞くな聞くな聞くなっ！」
起きる事を夢見て、
起きる事を奇跡と思い、
俺は１年の時を待った。
俺は１年間願った。
その願いは、
あゆの目覚めと共に、
夢と奇跡を運んでくれた。
ふと思う。
あゆが目覚めたのは奇跡なんだろうか。
それとも・・・・・・。
「悪い、待たせた・・・・・・」
「遅いよ、祐一君・・・・・・って、何笑いを堪えてるの？」
「お前、懲りないな。イメチェンとか考えない方がいいんじゃないか？」
「うぐっ！ これでも上手くできた感じだよっ！」
「前よりも髪の毛短くなってるんじゃないか？ 完全にショートカットだな、そりゃ」
「べ、別にそれならいいでしょっ」
「自分でやったのか？」
「・・・・・・うん」
「自信が無いならやめとけって」
「自分でやるからこそ、自信がつくんだよッ」
あゆが目覚めた今、再び俺たちはデートをする事にした。
去年のデートは、かなり嫌な終わり方をしたからな。
「別人みたいだ。俺のやった天使の人形みたいな髪型しやがって」
「そ、それ言わないで・・・・・・」
あの後、あゆが永久の眠りにつく事はなかった。
今もこうして、俺達は一緒に過ごしている。
「じゃあ、行くか」
「行き先は祐一君が決めてよ」
「じゃあ、映画でも見に行くか。今、ちょうどいいホラー映画が・・・・・・」
「百花屋に行こうよ！ イチゴサンデー食べたいなぁ！」
「・・・・・・ホント、ホラー系は苦手なんだな」
「意地悪したから、イチゴサンデーは祐一君のおごりね♪」
「へいへい、わかりましたよ、お姫様」
忘れた笑顔も思いだし、俺は本当の喜びを手に入れた。
一年前に忘れてきたはずの喜びを。
おしまい
投票結果
ugen (採点:2)
なんかよくわからない
グＥ (採点:3)
祐一のキスで目覚めるシーンがなんかよかったです。ただ、残念なのが・・・、途中の夢の中での喧嘩のシーン、ほのぼのとした雰囲気がほしかったように思いました。
naoki (採点:4)
これでまた眠りについたら面白かったのに。
TOM (採点:3)
心の中で「あゆ、がんばれっ！」って思わず言ってました。（笑）
kuryu (採点:4)
奇跡が起きて目覚める。奇跡が終わったから眼を閉じるってかんじがぐっときました。
Ｇａｒａ (採点:3)
昏睡状態から目覚めた人が、暫くしてまた昏睡状態に戻る、という症例は知識として知ってはいます。しかし、その症例をあゆのストーリーに当てはめるのなら、「再び昏睡する理由」と「再び奇跡の起こる理由」をきちんと理由づけて欲しかったですね。
かずき (採点:3)
ああよかった。
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。キャラに魅力がない。ストーリーに魅力がない。会話に魅力がない。文章に魅力がない。あまりに不出来な内容に読むのが苦痛だった。
雨音 (採点:2)
展開がベタ過ぎでしょうか。もう一ひねり欲しかったです。
浮動明王 (採点:4)
祐一の夢の内容が祐一らしいですね
taka (採点:3)
シンデレラストーリー イン あゆあゆ。祐一、「しとけばよかった・・・」ていう後悔がありそうですね・・・。
はぐ (採点:1)
「読むのは疲れました」 話の狙いとしてはいいんだろうけど、どうもやぼったくて読むのに疲れを感じました。
神代 悠 (採点:3)
今度は、寝かさないように（なんか別の意味に聞こえるなぁ….
全採点
5点 : 3
4点 : 26
3点 : 59
2点 : 34
1点 : 19
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転載、無断引用を固く禁止します。
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