『ターゲットはＫＩＴＡＧＡＷＡ』
俺の名前は北川潤。
只今――――――
「待つんだお〜〜〜」
「待ってください北川さん！」
「………待て」
「あはは〜待つんですよ〜」
「逃げては駄目です北川さん」
どたどたどたどた…
………ヒロイン達に追われてます。
相沢なら当たり前の光景で、普段の俺にとってなら凄まじく歓迎する所なんだが…
一つ重大な問題がある。それは――――――
「「「「「そのくせ毛貰ったあああああーーーーーーーーーっ！！」」」」」
「何でだよっっっ！？」
と、言うわけで俺の頭のこのくせ毛を狙われている事だ。
…取りあえず今は逃げるしかない。
え？死なない内に大人しく剃られとけって？
それは無理だ！何故なら…
「このくせ毛は俺の大切なチャームポイント…生き甲斐なんだーーーっ！！！」
「「「「「嫌過ぎっっっっ！！！」」」」」
…なんとでも言ってくれ…うう。
あ、くせ毛を狙われてる理由なんだが…話は昨日に遡る。
たまたま部活の無い日だったので…俺、相沢、水瀬、そして美坂…４人で帰ってた訳だな。
その時…
「北川…お前ちょっと髪の毛のびてないか？少しうっとーしいぞ」
と、相沢がのたまった…おい、お前だけには髪について言われたくないぞ。
特に前髪とか。
「あ〜そうだね、北川君の髪の毛一箇所だけ伸びてて不気味だもん」
「そうね、いっその事剃っちゃったら？」
って、水瀬に愛しの美坂までそんな事を！？
駄目だ駄目だ、この俺の…
「マイくせ毛、『よし子』を剃られる訳にはいかーーーーーーーん！！！」
「「「名前付きなのっっ！？」」」
…てな訳で昨日はそれで終わった。
しかし、翌日の朝（つまり今日）…起こってしまった、それが。
「よお、相沢」
「お、北川か」
朝…少し遅めに家を出た俺は、偶然に相沢と水瀬に出会った。
今日はこいつら早いなーとか思っていた時…俺は妙な感覚を覚えた。
不思議に思ってよくよく見ると…
「お、おい…どうした名雪？」
「………」
不信げに自分を見る相沢にも構わず…妙に逝っちゃった目をして体をガクガクさせている水瀬。
…ははーん、これは彼女の猫を見た時の発作だな？以前見た事あるぞ。
と、言う事は直ぐ後には例の台詞で…
「毛〜〜〜〜〜毛〜〜〜〜〜〜」
「「毛ですかーーーーーーーっ！？」」
あまりと言えばあまりの台詞に驚愕する俺と相沢。
あ、冷や汗出てきました。
「毛〜〜〜毛〜〜〜〜剃るんだよ〜〜〜〜」
「な、何言ってるんだ名雪！？」
ぐわしっ！
流石の相沢も慌てて取り押さえる。じたばたもがく水瀬。
その手にはキラリと光る………鉈（ナタ）っっ！！？？
しかもそれが狙ってるのは俺の毛…ええと鉈は毛を狩る物ではないです水瀬さん。
「に、逃げろ北川っ！」
「わ、判った…」
こうして俺こと北川潤は逃亡生活に入ったのだった…
って、自分で言った事だけど生活ってなんだ俺。
「うう、何でこんな事に…」
相沢達から逃げ出し、取りあえずと言う事で学校に逃げこんだ。
元々来る筈の場所とか言うなよ、これでも色々と悩んだんだからな。
と、急に俺の名前が聞こえたような気がした。
「あ、北川さん発見ですっっ！」
「…居ましたね」
一人は美坂の妹の栞ちゃん…もう一人は確か相沢の知り合いの天野さんだったっけ？
２人ともハサミを手に俺を指差している…追っ手か。
相沢の言った一言のせいでまさかこんな事になるとは…流石は主人公、侮りがたし。
この調子だと他のヒロインも全て俺のチャームポイントを狙ってると考えた方が良いな。
とにかくここは…
「逃げるしか無いっ！」
だだだだだだっ
「ああっ！待ってください〜」
「……逃げられました」
全力でいくつかの曲がり角を抜けて走ると…あの２人は追って来れなかったようだ。
…良かった、一年生２人だったから逃げられたな。
「お、ここは生徒会室の前か」
気がつくと俺はこんなトコまで来ていたようだ。
…良い考えが浮かんだぞ。
「今の時刻ならまだ久瀬が居た筈だ…匿ってもらおう」
そう、俺は生徒会長の久瀬と知り合いなのだ。
奴が例の一件―相沢達とのいざこざで丸くなってからは更に友達付き合いが深まった。
ああ、持つべきは友と言う訳だな。
がちゃ
「おや？北川君じゃないか、どうしたんだい？」
早速生徒会室に入ってみると、案の定久瀬は居た。
「いや、実はかくかくじかじかと言う訳なんだ、匿ってくれ」
「…何だかすっごくはしょった説明だった気がするが…判った、暫くはここに居ても良いぞ」
そう言って久瀬はソファーを指した。
安心して腰を下ろす…ふう、少しは落ちつけたな。
そんな俺を見ていた久瀬は…唐突に机の上の呼び鈴を押した。
チリリリリリン♪
…呼び鈴？何の為にそんな物を…
と、俺が聞く間もなく俺が入ってきたドアとは別のドアが音もなく開いた。
そこには、
「…………北川君、発見」
「あはは〜、見つけましたよ〜」
…３年の倉田先輩と川澄先輩！？
って、２人とも相沢の関係者じゃないか…と、言う事は追っ手か！
それはつまり…久瀬が裏切った！？
「ど、どう言う事だ久瀬…お前が裏切りなんて…」
「見た通りだよ北川君、友情とは愛の前に簡単に敗れ去る物なのだよ」
久瀬は椅子の上で腕を組んだまま平然と言った。
「愛だと…？」
「そう…愛する者が望んでいる事―今は君のくせ毛を刈り取る事―それをするのが愛の奴隷だ！」
しまった…俺とした事が何て迂闊なんだ…
こいつはあの倉田先輩にぞっこんで、その倉田先輩は相沢の事が確か好きな筈だ！
つまり倉田先輩の命令なら何でも聞くと言う事で…くっ。
愕然とする俺に久瀬は止めの言葉を放った。
「フフフ…北川君、僕の『相沢君への愛』の為、その毛、貰ったあああーーーーーっ！！」
「って、お前も相沢ＬＯＶＥかいっっっ！！」
…い、今までこんな奴と友達だったなんて…最悪だ。
「そうですよ〜、久瀬さんも佐祐理や舞と同じく、祐一さんを好きな同志なんですよ」
「……誰が祐一を取っても恨みっこ無しのライバル……」
いや、その場合相沢が恨むと思います川澄先輩…って、言ってる場合じゃねえ！
川澄先輩は剣を、倉田先輩と久瀬は既にハサミを手に持って準備万端だ。
このままでは…
がちゃっ！
「あっ！居ましたよっ！」
「今度は逃げられませんよ」
「だお〜」
と、唐突に俺が入ってきた方のドアから栞ちゃん、天野さん、水瀬が顔を出した。
あまりに急な事だったので久瀬や倉田先輩もかなり驚いている。
チャンスだ！
「あっ！相沢が窓の外で裸踊りしてるぞっ！」
「「「「「「ええっ！？」」」」」」
俺の声に窓に群がるヒロイン達と久瀬…あっさり引っかかったな。
この隙にそーっとドアから外へ…
「「「「「「誰かと絡まないと裸は駄目ーーーーーっ！！！」」」」」」
「そう言う意味で引っかかったんかいっっ！」
要らない突っ込み入れてたので逃げるのが遅れそうになりました、はい。
…つくづく突っ込み役な自分が憎いぞ…
「はあはあはあはあはあ………」
すっかり日も西に傾いた放課後…俺は屋上に逃げこんでいた。
しっかしホントにどうするかなあこのマイくせ毛…
いっその事…いやいや、ここまで１７年間付き合ってきたのに今更刈られる訳にはいかない。
そうだろう？
そんな感じで黄昏ていた俺の耳に…階段を駆け上がる音が聞こえた。
程なくして開くドア。
ばたーん
「北川君…やっぱりここに居たのね」
「み、美坂！？」
其処には美坂が一人で居たのだった。
夕日に照らされたその顔はまるで女神と見紛うかのように美しい――――
「北川君…そのくせ毛！狩るわっ！」
―――――手にメリケンサックと日本刀持ってなかったらだけど。
愛しの美坂までが俺のくせ毛を狙ってるなんて…って、言うか「狩る」は無いだろ。
「ちょっと待てよ…美坂、お前まで相沢に惚れてるのか！？」
「相沢君ね…栞を救ってくれた大切な人だけどまだ好きってほどじゃないわ」
「じゃ、じゃあ一体何故俺のくせ毛を刈ろうとするんだ？」
俺の問いに少し悩んだ表情を見せる美坂…これは…
はっ！ひょっとして愛する男の物だから他の娘に渡したくないとかか！？
もしそうなら…この俺の大切なくせ毛、美坂ならば刈らせても…
「あたしは北川君だけにチャームポイントがあるのか許せないのよっっっ！！」
「前言撤回ーーーーーーっっ！！」
美坂は俺の言葉も届いてないようで「私はチャームポイントが無いから地味なのよ！」とかブツブツ言ってる…こ、怖い…
何とか脱出を…って、ここは屋上だった、逃げられませんぜ旦那。
とか思ってる間に、
「あはは〜、見つけましたよ」
「………もう逃げられない」
「ふっ、追い詰めたよ、北川君」
「ここまですよ、北川さん」
「そんなに逃げる人、嫌いです〜」
「だお〜」
…開いたドアからゾロゾロとヒロイン達（と久瀬）が…
彼女等を引き連れる様に美坂が一歩前に足を踏み出した。
「さて北川君…チャームポイントを失う覚悟は出来たかしら？」
そう言って両腕の獲物を構える美坂…こ、これまでかっ！？
「ちょっと待ったああああーーーーーーーっ！！」
あ、何か懐かしい掛け声が…それは置いといて、誰だ！？
俺を含む屋上に居る全ての面子が顔を向けたその先には………相沢の姿が！？
「みんな待て！北川は悪くないんだっ！」
言って給水答から降りてくる相沢…助けてくれるのは嬉しいが早く出てこいよ。
しかし俺以外の面子に取っては相沢の登場はかなりショックだった様で…皆声も出ないようだ。
構わず奴は続ける。
「俺が言ったのは、北川の頭全体がうっとおしいのであって、あのくせ毛は関係無いんだ」
相沢の台詞にみんなきょとんとした顔をしている。
…髪の毛全体？…あ、早とちりしたのは俺もだったのか…ちと反省だな。
「あははー、そうだったんですか〜」
「………迂闊だった、許して欲しい」
「えう〜、早とちりでした」
「そうだったのかい…いや、悪かったね北川君」
「申し訳ありませんでした…気が立っていたようです」
相沢の一言で急にしおらしくなるみんな…単純だ…
まあ、これで皆も判ってくれた様だから大丈夫……かな？
「嫌よ！私は北川君のくせ毛…チャームポイントが許せないのよ！」
いや、まだ香里が居たよ…しかしここでも相沢は相沢だった。
叫ぶ彼女に近づき、奴は言った。
「香里…君はあのチャームポイントが霞むくらい綺麗だよ」
「北川君、悪かったわ」（１秒）
「「「「「「はやすぎーーーーーーーっ！？」」」」」」
流石相沢、稀代の女垂らし…１秒で愛しの美坂を落すとは。
…そして助かったのに頬を伝う涙が止まらないのは何故でしょう…ううううう。
まあ良いか、今日は帰るとしよう…
そう思って屋上を後にしようとした俺だった。
……………が。
ずばっ！
え？何かが俺の頭上を通り越した感覚が…思わず手をやる俺。
しかし…
「な、無い、マイくせ毛が無いっ！」
慌てて周りを見回すと…分離したマイくせ毛が空を駆けて行くのが見えた。
って、何いいーーーーーっ！！？？
だ、誰かが切り落としたのか！？でもみんな相沢に説得された筈…
絶望のあまり立ち尽くす俺の前に妙な台詞を喋ってる少女の姿が目に入った。
「毛〜〜〜〜毛〜〜〜〜〜〜〜」
あ………一人だけ説得が効かない人が居たんですね、あははー。
そんな訳で俺のくせ毛は、チャームポイントは、ゆっくりと放物線を描いて飛んでいった…
ずっとずっと、遠くまで――――――――
ああ………こんなオチだったのか………
さらば…マイくせ毛…
「………『ボブ』ーーーー！！！」
「「「「「「って、名前変わってるやーーーーん！！！」」」」」」
ちなみに飛んでいったボブのその後は…
「あら？何か妙な物が飛んできたわね…新作ジャムの隠し味にしようかしら？」
…翌日水瀬家に色んな意味で嵐が吹き荒れたのは別の話である…
終り
投票結果
神月祐 (採点:5)
滅茶苦茶ウケました。最高です
荒野草途伸 (採点:5)
北川最高！ 前ハネは人類の永遠のテーマだよ！！
空明美 (採点:5)
北川君にギャグと不幸は良く似合います
アーリマン (採点:2)
面白くも無いしつまらなくも無い作品だと思います
烏賊悪魔 (採点:4)
ツッコミギャグいいですねぇ。この手のネタで久瀬をからませるのは新しいかも。
殺陣倉Xp (採点:3)
北川潤。決して報われない男。そして、水瀬家に北川のホムンクルスが……
ugen (採点:4)
突拍子もないネタをうまくギャグにしている
kuryu (採点:3)
ちょいうけでした。
すなふ (採点:3)
つい笑ってしまったので‥‥。
おーふな (採点:3)
うー、もったいないよー。着眼点は面白いのに、展開が一味足らない感じ。
グＥ (採点:1)
・・・北川の癖毛をねらうというネタは面白いと思ったんですが・・・。
Ｇａｒａ (採点:2)
ヒロイン達が「毛を刈る」事に固執する理由づけが希薄。これでは祐一がなにかを「うっとうしい」と言うたびにこんな騒動が起きなければならない。又、「とにかく祐一が言えばヒロインは猪突猛進する」とするならば、「髪全体がうっとうしい」と言い直した時点で、対象が髪全体に拡大しなければおかしい。もっとネタを練ってから書くべき
雨音 (採点:2)
小ネタとしては面白かったです。
naoki (採点:5)
くせ毛でこんな話がかけるんですね。すごい。
かずき (採点:1)
つまんね、読んで損した。
TOM (採点:3)
とても読みやすく、テンポがいいですね。獲物が「くせ毛」は少し弱かったかもしれません。
十六夜 睦月 (採点:3)
くせ毛が。。。。
いしす (採点:4)
だいれくとな突っ込み好き
橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。展開が強引で唐突。ギャグだから何をやってもいいというわけではない。そもそもギャグがつまらない。各キャラの個性が出ていない。単にそれっぽい口調で喋らせればいいというものではない。文章自体のレベルも低い。
taka (採点:5)
ナーイスボブ！ライフスペースへ逝けそうですよ（激謎
はぐ (採点:1)
「読むのは疲れました」 いいんじゃないでしょうか。ボクとしてはおもしろくも何ともなかったですけど。
全採点
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