二つの交わる思い…二つのぶつかる想い







<ある日曜日のこと…

「お母さん、栞は?」
「さっき祐一さんと出かけたわよ」
「そう…」
「あの二人…仲がいいわね」
「そうだね…」

私は自分の部屋へ戻る
(…相沢くん…)
(…栞…)
(『あの二人…仲がいいわね』…か」
ふと窓の方を見る
レースのカーテンを通りぬけて陽射しが部屋へと入りこむ
こんなにもさわやかな天気なのに…私の心は…
(ふぅ〜どうしたのかしら私…)
(こんなにも相沢くんのことが気になるなんて…)



「それでな、香里ったら名雪に珍しく責められてたんだぜ」
「そうなんですか? でも、どうしてですか?」
「珍しく香里が日直の仕事忘れていて、たまたま名雪とペアだったんだ」
「それで?」
「『香里〜日直の仕事やってよ〜』て感じか」
「珍しいですね」

私はいま祐一さんといつものように並木道を歩いている
さっきまで祐一さんと遊んでいたんだ♪
これって、デート…ですね♪
(でも…最近…祐一さんの口から出てくるのはお姉ちゃんのことばかり…)
(…祐一さん………)
(お姉ちゃんのことが好きになったの?)
(でも…そんな事…聞けない…)
(だって…怖いから…)
(『好き』というその2文字を聞くのが怖いから…)



<数日後…

「相沢くん」
「どうした?香里」
「最近…栞とどんな感じ?」
「それは、栞本人に聞くことじゃないか?」
「だって…恥ずかしいし…」
「そうか?…まぁ…相変わらず…って言う感じだな」
「そう。それならいいわ」
「でも、珍しいな」
「何が?」
「香里がそんな事を俺に聞くのが」
「そうかしら」
「まぁな…それじゃあ俺、帰るから」
「えっ、えぇ、それじゃあね」

(…なんで話しかけるだけで…動揺するの…)
(ただの…友達じゃない…)
(ただの………)



「栞」
「なに?お姉ちゃん」
「最近学校楽しい?」
「はいっ♪とっても楽しいですよ お友達も沢山出来ましたし…祐一さんと一緒に帰れるし」
栞は香里に本当に楽しそうに説明する
「そう…」
「お姉ちゃんは?」
「私?…まぁ…楽しい…かな?」
「えぇ〜楽しいですよ〜」
「そう?じゃあ…楽しいかもしれないわね」
「はい♪やっぱり学校は楽しくなくちゃ♪」
栞が笑い出すのを見て、香里もつられて笑い出す



「祐一さん?」
「どうした?」
「最近、お姉ちゃん学校でどんな感じですか?」
「それは香里に直接聞くことじゃないのか?」
「だって…はずかしいし…」
「そうか?…まぁ…いつも通り…って感じだな」
「そうですか」
「それがどうかしたか?」
「えっ、お姉ちゃんどうしてるのかなぁ〜って」
「そうか」

(お姉ちゃん…)
(お姉ちゃんは…祐一さんのことが好きなの?)
(お姉ちゃん…)
(最近…おかしい…)
(お姉ちゃん…)



<数日後

「はぁ〜」
私は、机の上に自分の鞄を置く
いま、学校から帰ってきたばかり…
椅子を引き、椅子に座る
「はぁ〜」
ため息が多くなった気がする
栞のこと、学校のこと、名雪のこと、
………………………………相沢くんのこと………………
「どうしたのかしらね」
私は自分に笑った
(私は…相沢くんのことが好きなの?)
(………)
(違う…)
(私は…栞が好きなの…そして、栞の彼氏である相沢くんが気になっているだけ)
(栞を幸せにしてくれるか…)
(そう…それだけ………)



「ただいまぁ〜」
私は家に入る
「お帰り」
お母さんとお姉ちゃんが出てきて私を出迎えてくれる
「ただいま」
もう一度私は言う
靴を脱ぎ、自分の部屋へ向かう
机の上に鞄を置く
「栞、はいるわよ」
お姉ちゃんの声がドアの向こうから聞こえる
「いいよ、お姉ちゃん」
ドアが開く音がしてお姉ちゃんが部屋に入って来る

「今日は遅かったのね」
「うん」
「なるほどねぇ〜」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「栞の顔を見れば何があったかすぐわかるわよ」
「それじゃあ、何があったか当ててみてくださいよ♪」
「相沢くんとデートしてきたでしょ」
「当たり♪」
「ほーらやっぱり…」
お姉ちゃんがため息混じりに言った
「すごいですっ、何があったか言い当てちゃうなんて」
「そりゃあわかるわよ、そんな顔をしてたら」
「そうですかぁ?」
「はいはい、のろけ話もそこまで。ご飯食べるわよ」
「はいっ♪それじゃあ、下に行こうよ」
私達は部屋を出ると階段を降り、一階のリビングへと向かった



「お姉ちゃん…」
私はその言葉を口にした
真っ暗な部屋
ここは私の部屋
私だけの空間
ここにいれば落ち着く
「お姉ちゃん…」
私はもう一度その言葉を口にした
(お姉ちゃん…やっぱりお姉ちゃんは祐一さんのことが好きなの?)
(祐一さんも相変わらずお姉ちゃんのことばかり話すから…)
(祐一さんは…どうなの?)
(私とお姉ちゃん………どっちが好きなの?)
(お姉ちゃん…)
(祐一さんのことを話すときのお姉ちゃんはいつもと違う…)




「………」
私は窓から空を見上げた
真っ暗な部屋
ここは私の部屋
私だけの空間
ここにいれば落ち着く
「………」
(私の中に芽生えている小さな思い)
(それが………だんだん大きくなっていくのを感じる)
(相沢くんへの普通ではない感情………)
(それが何かはすぐにわかる…)
(でも………)
(それがわかったら…何かが壊れる気がするから…)
(何もかも失ってしまう気がするから………)
私はカーテンを閉める



<日曜日…

「おはよ〜」
「おはよう」
栞が香里に朝の挨拶をする
香里はそれにたいして笑顔で答えた
いつも通りの光景
「今日は遅かったね」
「えぇ…」
「もうご飯できてるみたいだよ」
「そう、それじゃあはやく準備していくわ」
栞と香里は別れた



「…」
私は鏡の前に立つ
「めずらしいわね」
思わず言ってしまった
すでに時間は10時を回っている
(いつもの日曜日はもう少し早いのにね………)
いつもより少し遅く起きたじぶんに疑問を感じる
でも、その疑問はわかりきっている
…つかれている
最近の自分の心の変化に気がついている
だから………



私はリビングに入る
「お姉ちゃん、起きたみたいだよ」
「わかったわ」
「珍しく遅かったみたいだね」
「えぇ、香里にしては珍しいかもね」
「うん」
「まぁ、たまにはそんな事もあるわよ」
私はキッチンの方へ向かう
「何か手伝うよ」
「無理しなくてもいいわよ」
「えぇ〜なんで〜」
「あなたが手伝うと料理のおかずが増えちゃうから。それにもう朝ご飯はできてるってさっきもいったでしょう」
「うん」
いつもと違う風景がそこにあった
お姉ちゃんより私が早く起きる
日常の歯車がずれはじめている
たった…たった…少しの心境の変化が…
私も…お姉ちゃんも…祐一さんも…
そう、少しのずれが大きな歪みをつくろうとしている



「いただきます」
家族そろっての食事
どこの家でも見られる光景
穏やかな日常がそこにあった
だが…
家族の団欒の場所であるそのばにはいつもと違う思いが交錯する



<数日後…

「…」
暗い部屋
私は最近そうしているように椅子に座って窓の外を眺める
考えることが多すぎる
私は栞のことが好き…そして栞は相沢くんが好き…
私は相沢くんのことを好きになってしまった………
ずっと前から気がついていた
でも、理解することが怖かった
だけど、それは現実から逃げているだけ
栞の彼氏である相沢くんを私は好きになってしまった…
それが…現実

『私は相沢くんが好き…』

栞には…まだ…内緒だけど…
いつかは言わなければならない



「…」
暗い部屋
私は最近そうしているように椅子に座って窓の外を眺める
考えることが多すぎる
私はお姉ちゃんが好き…私は祐一さんが好き…
お姉ちゃんは…祐一さんのことが好きになってしまった………
お姉ちゃんは隠しているつもりだけど…私にはわかる
だって…
ずっとお姉ちゃんをみていたから…
お姉ちゃんのことが大好きだからっ!

『お姉ちゃんのことが好きだから…お姉ちゃんを幸せにしてあげたい!』

だから…私は…
………だから…私は…





二つの交わる思い…二つのぶつかる想い
そこから…全てが変わろうとしていた





<次の日

授業中
先生の声が教室に響く
だけど私の頭の中には届いていない…

(私は…どうしたらいいの)
私は窓の方を向き空に聞いてみた
何も答えてくれない…
お姉ちゃんの気持ちを知ってしまった…
でも…自分にウソをつきたくない…
私は祐一さんが好き
私はお姉ちゃんが好き
お姉ちゃんは…祐一さんのことが好きになってしまった
大好きなお姉ちゃんには…幸せになってほしい
だから私は…





……


………


あきらめる…
そう、それでいいの………

私が決めたことだから………



授業が終わると、私はお姉ちゃんのいる教室に向かう
全てが重かった
だけど…
私は勇気を振り絞ってお姉ちゃんを呼ぶ
すぐにお姉ちゃんは気がついて私のところにやってきた

「どうしたの?栞」
「話したいことがあるから…放課後に裏庭に来てちょうだい」
「?………わかったわ」
「うん」
「それじゃあ、私はこれから掃除があるから…終わったらすぐ行くわ。それまで裏庭で待ってて」
「うんわかった。じゃあね」



私は中庭にいる
いまの生活の全てがはじまった場所
春、夏、秋…お昼はいつもにぎわっている
だけど…放課後は誰も来ない
空気は新鮮で、空は澄みきっている
私の今の心ももう澄みきっていた
すべてがふっきれていた
私は、お姉ちゃんの幸せを願う

後ろの方から足音が聞こえる
私は振り向いた

「待った?」
「ううん…」
「そう…。所で話って何?」
「うん…。大事なこと…」
「わかったわ…」
私はお姉ちゃんを見つめる。
そして…



「お姉ちゃん………」



「お姉ちゃん…祐一さんのことが好き?」
「なっ、何を言ってるの!?そんな事があるわけ無いじゃない」
「うそ………」
「…」
「私にはわかるもん!」
「栞…」
「お姉ちゃんの事…毎日見てるもん」
「…」
「お姉ちゃん…いつも悩んでいた。祐一さんのことが好きだということに気がついてから。
 お姉ちゃん…いつも苦しんでいた。私の気持ちのことを考えて。
 お姉ちゃん…いつもと変わっていた。本当に小さなことだけど…。
 私にはわかるもん
 大好きなお姉ちゃんだから
 いつも一緒にいるお姉ちゃんの妹だから
 本当のことを言って!!
 祐一さんのことが…祐一さんのことが好きになったんでしょう?」
「…」
「黙ってないで本当のことを言ってよ」
「………わかった」
「…」
私はお姉ちゃんの次の言葉を待った
短い時間だけど…とても長く感じた
「…好き…かもね…」
お姉ちゃんの言葉
全てが重く伝わってくる
でも、私にはわかっていたこと
ショックなんて感じなかった
だから…
「やっぱりね〜思ったとおりだよ。お姉ちゃんはいつも素直じゃないから」
「栞?」
「だからね、私考えたの」
「?」
「私ね………」
お姉ちゃんを心配させちゃいけない
私はつとめて明るくいった
「私ね………………祐一さんをあきらめる」
「栞!?」
「私はお姉ちゃんに幸せになって欲しい…だから…私は祐一さんをあきらめる」
「栞…」
「お姉ちゃんのことが好き…だから…祐一さんをあきらめる
 私はお姉ちゃんのことが大好きだから…お姉ちゃんの幸せな姿が見たいから…」
自分の視界がぼやける
頬をつたわって暖かい物が滑っていくのを感じる
お姉ちゃんの複雑な顔も今は見えない
「だから…私のぶんも幸せになってちょうだい」
「…」

長い沈黙
それを破ったのはお姉ちゃんだった

「栞………………馬鹿にしないでくれるっ!!」
「お姉…ちゃん?」
「私の幸せを願って?笑わせないで!!
 私は………そんなそんな恩着せがましいのは大っ嫌い!!
 たとえ…たとえそれが栞からだったとしても…
 私の幸せを願って…
 何を言ってるの!?
 あんたに私の何がわかるの!!
 私の幸せを願ってなんて考えていたらそんなのがどうして考えられるの!?」
「だって…お姉ちゃんが…祐一さんのことが好きだから…
 お姉ちゃんと祐一さんが結ばれるのがお姉ちゃんの幸せだと思ったから」
私の頬をまた暖かい物が滑り落ちる
だけど…さっきとは違う物を感じた
「私と相沢くんが結ばれるのが本当の幸せ?
 栞!!あなたは何もわかっていない!!!
 私の心をわかってないくせに…そんな下らないこと言わないで!!」
「お姉ちゃん…」
「栞…あなた…私の幸せがわかる?」
「…」
「なら教えてあげる…」
お姉ちゃんが間を空ける





「私の幸せは…相沢くんと…」



(やっぱりそうだったんだ…お姉ちゃんは…)



「相沢くんと栞が仲良くなっくなって………二人が幸せになることなのよ!!」


「!?」


「たしかに…私は相沢くんが好きになったかもしれない…

 でも…それは違うときがついたの…

 私は相沢くんが好きじゃなかった

 でも好きだった…

 好きというのは…兄弟、付き合っている二人、親子、いろいろあるけど…

 私の場合は…栞を幸せにして欲しいと願う…思い

 好き…という感情じゃないわ」


「………じゃあ…お姉ちゃんは…」


「そう…私は相沢くんが好きだけど…好きじゃない。

 私にとっての幸せは…栞が幸せになること

 そして…私が幸せになって

 お母さんやお父さんが幸せになること」


「お姉ちゃん…」


「だから…栞…相沢くんと幸せになって」


「うん」


「それに…私には好きな人がいるから」
「えっ!?」
「いっておくけど…まだ教えないからね」
お姉ちゃんの表情が急に和らいだ
それまでの空気が一気に変わった

「えぇ〜そんなのずるいですぅ〜」
「何がずるいの?」
「だって…だって……だって………」
「ほ〜ら、言えないじゃない。せいぜい考えてね♪」
「ひどい…そんな事言う人…嫌いです」
「なんと言われても教えない…それにね…」
「それに?」
「後ろを見てごらん」
「えっ?」
私は言われたとおり後ろを振り向く
「祐一さん!」
「よっ、二人で何をやっているんだ?」
「あいたかったです」
私は抱きついた
「おいっ、こら…いつも会ってるだろ?」
「今日はもう話しませんよ」



私は二人の幸せそうな光景を眺めていた
「次は…私の番よ」
意味深にだれにでもなく笑う
(私の好きな人は…)

「お姉ちゃんっ!」
そこまで言いかけて栞に呼ばれる



「なに、栞?」
「祐一さんがこれから百華屋に連れて行ってくれるって」
「よかったわね〜」
「お姉ちゃんも一緒に来てって」
「そう…それじゃあ遠慮無く誘われるわ」
「名雪さんや、北川くん…いっぱいよぼうよ」
「おい、おごるのは俺だぞ…」
「気にしないでください♪」
「そうね。たまにはおごってくれてもいいわよね」
「…」
「それじゃあ今すぐ行こうよ!」
「わかった…俺も男だ…あきらめる」
「いっておくけど…私は食べるわよ」
「わかった」
「ふふっ♪それじゃあいこうっ♪」



3人は学校の中に戻る
校門を出る頃には5人になっている

それぞれの幸せをそれぞれの人が望む
そしてその幸せをまたほかのひとが望む
だから…世界は…世界中の人は希望を持って幸せを願うことが出きる
そうして…世界は幸せになっていく…

二人の小さなすれ違いは…幸せというかたちになって二人に…
いや………皆に伝わる…



栞…祐一…そのほか沢山の人が幸せであるように



もう夕日が綺麗な時間になっていた…
5人の長い影が商店街にうつっていた…
5人の笑い声が商店街にこだましていた…
5人の幸せがそこにはあった…

投票結果

荒野草途伸 (採点:4)
これが、香里です。


Lv2 (採点:2)
最後の美坂姉妹の会話にやや不自然さを感じました。


十七夜 (採点:3)
大切な存在が必ずしも恋愛対象ではない。そういう答えも存在するものです。


TOM (採点:1)
祐一の気持ちが描かれていないのは残念でした。これでは説得力がないのではないでしょうか?


kuryu (採点:3)
形にならないから幸せ、感じあえる響き会えるから幸せって感じがしました。


Doll (採点:1)
タイトルを見ても思うのですが、文章はもう少し考えながら書くものだと思います。本当に必要な言葉だけを使っていますか?


グE (採点:4)
香里と栞、二人の気持ちの葛藤がよく描かれていてよかったです。


ugen (採点:2)
ありがちな話なのにうまくまとまっていない


Gara (採点:3)
香里の「好きな人」というのが、栞を納得させるための方便なのか、本当に好きな人がいるのかが判りにくいですね。わざとぼかしているのかもしれませんが、それだと、結構肝心な「香里の真意」が読み手には伝わりません。


かずき (採点:3)
ああ、ほっとした。いろんな意味で。


KOU (採点:3)
香里は最後にどんな答えを出したんだろうか?


橘征五郎 (採点:1)
まずは基本的な文章作法の勉強を。文章力があまりに酷過ぎて読み進めるのが苦痛なほど。ストーリーの展開も強引、唐突でご都合主義の塊。論外。


(採点:4)
最後の「そのほか」って言葉は毒舌では・・・。


naoki (採点:3)
意欲作ですね。表現方法は面白いです。


taka (採点:3)
恋愛模様は人それぞれですね・・・。私的にはこんな感じもいいかなと思ったりします。


全採点
5点 : 1
4点 : 20
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2点 : 43
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