kiss×kiss×kiss
Act.１:お見舞い日和で空爆日和
唐突だが、何もすることがない。
本当に、何も。
「むぅ……。」
……と、不機嫌ちっくに呟いてみても何かすることができるわけでなく。
仕方なく美坂香里は、傍らのベッドをのぞき込んだ。
そこには金髪童顔・香里と同い年くらいの少年が顔を火照らせながら寝ている。
北川潤。
男の物であれど綺麗と思える金髪と頭の頂上からポッと突き出たアンテナちっくな髪の毛がチャームポイントの彼女のクラスメイトだ。
そしてここは彼の部屋である。
何故話の初めからいきなり彼女がクラスメイトの部屋で暇をもてあましているのかというと―
１：今日は休日で、北川と買い物に行く約束があった（決してデートでは無い、とは香里の言い分）
２：北川、昨日から39℃を超える熱を出し今朝買い物に行けないことを香里の携帯電話に報告。
３：香里、別に他に予定もなかったのでマンションの北川の部屋にお見舞いに
４：そのままお粥を作ったり話をしたりしていたが北川が寝てしまったので暇に
おお便利。番号付けると説明が楽。論理的説明バンザイ。
……とかはさておき。
北川の熱ももう大分平熱に近くなった。まだまだ平静にしておく必要はあるだろうが、濡れタオルとかは必要なさそうだ。
実はもう香里が側にいる必要もないのだが。本人寝てるし。
しかしだからといってこのまま帰ってしまうのも、心配だったり、癪だったり。
乙女の気持ちは複雑怪奇、人外魔境なのである。
ともあれ、そういう次第で、彼女はとても暇なのだ。
だが、別にそれが嫌というわけでもない。
何もせずにボーッとしてるのが少しばかり性に合わないだけだ。
「そんなに根を詰めて生きてるとすぐにオバサンになるよ。」とは昨日の妹の言葉。
今頃は昨日の夕食の［辛さ２０倍スパイシーカレー・ジャガイモ抜き（香里作）］が未だに糸を引いて唸っていると思うが。
（……まぁ、どっちみちすることないし。北川君の部屋でも眺めながらボーッとしてますか。）
結論が付いたらしい。良い趣味と言えるかどうかは人によるだろうが。
だが、見慣れぬ部屋で一人に（正確には横のベッドで北川が寝てるが）なってみると、今まで気付かなかった――というか頭に入らなかった――ことが色々と分かってくる。
例えば部屋。
入ってしばらくはあまり感じなかったが、年頃の少年の部屋としては殺風景に過ぎる気もする（比較すべき記憶が彼女の頭には存在しない以上「気がする」止まりだが）。
それ以前に、今日お見舞いに来て初めて北川が一人暮らしであることを知った。
何か事情があるのだろうか。
もしかしたら、ドラマチックだったりスキャンダラスだったりするような何かが。
そこまで考えてふと、あることに気付く。
（私、本当は北川君の事あんまり知らないのね。）
……という事に。
思わず、傍らで寝ている思考の対象をもう一度のぞき込み、その寝顔を見つめる。
『子供のような』…本当にそんな形容が似合っている寝顔が彼女の方でなく天井を向いている。
学校では名雪に次ぐ親友。
男に限定すれば、おそらく１番の友人だろう。
相沢祐一と争うが、付き合いの長さという面で一歩抜きんでている。
―そして、この頃妙に気になる少年。
気がつけば、無意識にその言葉を、その仕草を、その表情を目で追っている自分がいる。
それがどういう感情に寄る物かを、彼女はまだ完全に理解してはいなかったが。
ともかくそれ故に、他の人よりは良く知っていると思っていた。
しかし考えてみれば自分は彼がこんな寝顔で寝ることさえ知らなかったのだ。
過去も、家族との事情も、知るわけがない。
唐突に認識されたその事実は、彼女に「なんで今まで気付かなかったんだろう」というような驚きと同時にその胸にチクリとした痛みを与えた。
その痛みの理由もまた、まだ彼女には良く分からなかったが……
（もっと彼のことを知りたい、と思ってるのかしら？ 私……）
ボンヤリと、心の奥底でそんな事を考えた。
――その瞬間。
何の偶然か、北川が香里の方向に寝返りをうった。
結果、北川の顔はあろうことか覗き込んでいた彼女の間近―距離にして僅か数センチ―に移動する。
ちょうど北川のことを考えている時に目の前に本人の寝顔。
この不意打ちに香里の思考は完全にショートする。
故に――
故に、次に自分がとった行動は意識した物では無かった。
完全な衝動のみの行動。
自分がしていることが良く分からないまま北川の顔が香里の視界一杯に近づいてくる。
――いや、近づいて『くる』のではなく、これは……
ちゅっ…
そして、少年と少女の唇がつかの間、重なる。
時間にすればほんの一瞬。
外国ならイタズラでも許される位のものだ。
だが、生憎ここは日本であり、彼女は純粋な日本人であり、良くも悪くも彼女は日本的乙女だった。
ぽけーっとした表情で顔を上げた彼女は、数秒後ハッと気付いたように口に手を当てる。
そしてその顔は瞬時にリンゴかトマトを彷彿させる物になった。
ようやく自分がした行動を認識したご様子。
「え？ え？ 今、あたし何を――」
と口にしたところで返ってくる答えがあるわけもなく。
ってゆーか何したかは彼女が一番知っているわけだし。
真っ赤な顔のまま、思わず鞄を取って、あわあわ言いながら煙さえ立て逃げるように部屋を走り去る香里嬢。
部屋には―
「でへへへ、美坂ぁ〜。」
爆弾を投下された影響なのか。妙に妖しい寝言を言う北川の姿が残された。
……コレを彼女が聞いてたら別の爆弾が投下されてたかもしれない。
Act.２：お嬢様はキャッツアイ
「ふぇ〜」
彼女は目の前の予想外の光景におもわず驚きの声を漏らした。
それにしては『驚き』の欠片も感じられない声だが、彼女はそういう人間なのだから仕方がない。
彼女――倉田佐由理は、現在大学一回生。
この春から親友である川澄舞と同居しながら同じ大学に通っている。
いつも大抵一緒にいるのだが今日は舞はバイトである。
学費は自分で払うという条件で家から出てきたのは佐祐理だけなのだが、舞は自主的に家の母の仕送りを断った。
だから２人とも普段は掛け持ちのバイトで忙しいのだが、今日はたまたま佐祐理だけ空いてしまったのだ。
ちなみに今日の舞のバイト先は牛丼屋。リーズナブルな値段で学生に社会人に大ウケである。
ともあれ空いた時間に図書館で明日の講義の予習をしようと来たのだが――
――そこで意外な光景を目の当たりにした次第である。
うあ。やっぱし短編だと先輩コンビはシチュエーションの説明が大変だぁ。くどっ。
……とかはやっぱりさて置こう。話が進まない。
とにかく、その『意外な光景』とは何かというと…
佐祐理が座ろうとした席の向かいに人が寝ているのである。
無論、図書館で人が寝ているのは珍しいことではない。不謹慎とは言えるかもしれないが。
問題は寝てる人物である。
久瀬利樹（としき）。
年齢は彼女の一つ下。
父親同士が古い知り合いなので、佐祐理と彼とも小さい頃からの知り合いである。
二年まで生徒会長をしていた経歴が物語る通り、生真面目の典型といった人柄。
が……
勉強している途中で眠ってしまったのだろう。参考書やノートは広げられ文具は転がっている。
前述の通り生真面目で堅物というイメージがある彼のそういう光景は、とても意外な物だった。
それで最初の驚きの声である。
いつもなら人が寝ているなら邪魔になると立ち去る所だが、この時佐祐理はそうはせず、そのまま席に座った。
そしてそのまま机に頬杖を付いて向かいの席で寝る青年の寝顔を見つめる。
この青年に色々と思うことがあったからだ。
先程も言ったように、彼女と久瀬は子供の頃からの知り合いである。
――そして同時に、高校時代彼女と舞を引き裂こうとした張本人でもある。
校則違反が多かった（何か理由があったらしいが）舞の退学をちらつかせて街の有力者の娘である佐祐理を生徒会に引き込もうとしたのだ。
その時は後輩である相沢祐一とその友人の尽力で事なきを得たが、それ故彼らの間では当然のように『久瀬は佐祐理と舞の敵』という共通認識が生まれている。
だが、佐祐理は彼を恨むことはしなかった。
いや、恨めなかったと言ってもいい。
彼がとった行動は（佐祐理を生徒会に引き込むという下心があったのかもしれないにせよ）生徒会長の立場にある物としてなんら間違った物では無かった。その事実は佐祐理も受け止めている。
だが…彼を憎めないのはそれだけで無い、他の要因もあるように思う。
それは、あの時の彼の眼が言い分とは裏腹にどこか哀しげな光を宿していたから？
事件の後、人知れず自分と舞に謝りに来た彼の姿に引っかかる物があったから？
あるいは……
――自分にとって彼がどこか『特別』な存在になりつつあるから？
そこまで考えて佐祐理は苦笑いしながら首を振った。
そんな事は考えても答が出る物では無い。
ともかく、今自分の考えている事で分かることが一つある。
堅物を絵に描いたような青年が思わず寝てしまっている微笑ましい情景――それを見て自分が楽しんでいる事だ。
何とは無しにある事を思いついて手を動かす佐祐理。
その手は、寝ている青年の顔から彼が掛けていた眼鏡を奪う。
その後に出てきたのは、普段は常に寄せられている眉間と堅苦しい感じの眼鏡に隠れていた無垢な――誰が見てもそう表現するだろう――且つあどけない、少年のような寝顔。
誰が普段の彼からこの寝顔を想像するだろう？
それを見て、彼女は知らず浮かべていた笑みを更に深める。
固くしめられているはずのカーテンのすき間から、昼過ぎの日差しが零れて狙ったように青年の寝顔に当たる。
微笑ましいような、くすぐったいような時間がゆったりと過ぎていく……。
しばらく眼鏡から解放された青年の寝顔をを見つめていた佐祐理だったが、更に何か思いついたのだろうか、傍らの自分の鞄をがさごそとまさぐる。
目的の物はすぐに見つかった。
――それは、この日の朝も彼女の親友へのイタズラに使った物。
それを手に納め、キョロキョロと周りを見渡す。
幸いにも、見える範囲にはあまり人の姿はない。
それを確認すると、彼女は微笑みながらもう一度久瀬を見て、呟いた。
「あはは〜、恨むならこんなところで寝てる自分を恨んで下さいね、久瀬さん。」
そのセリフは…なんかどっかの悪役みたいだった。
「ん……？」
周りが妙に騒がしい。その雰囲気に彼――久瀬利樹は目を覚ました。
そして目を覚まして初めて、自分が寝てしまっていた事に気付く。
寝ていた下にはテキストやノートが重みを受けて少し皺よってしまっている。
どうやら受験勉強の最中に寝てしまったらしい。
（迂闊だな……僕らしくもない。）
心の中で自分をなじると、勉強を再会しようとし――
――しようとして、妙な違和感に気付き、辺りを見渡す。
彼の周りにちょっとした人だかりができている。先程までこのフロアいは数人しかいなかったはずなのに。
彼らの視線は全て彼の方を向いている。
しかもあろう事かその中の数人は彼を見てヒソヒソ話さえしている。ここは図書館だから当然小声で内容までは聞こえないが。
その上、誰もが彼と目を合わせると目をそらす始末だ。正直言ってワケが分からない。
（……なんだ？僕の顔に何か付いてるのか？）
そんな考えに行き着いて、懐から身だしなみ用の鏡を取り出し、自分の顔を映す久瀬。
そして彼は見た。いや、見てしまった。
――彼の頬で自己主張している、赤いキスマークを。
隣の部屋から驚愕と混乱の叫び声が上がった。
それを聞き、佐祐理は手の中の犯行道具―彼女の年齢にしては少し背伸びした、赤の口紅―を見ながら微笑んだ。
それは普段のお嬢様然とした清楚な微笑みではなく、イタズラ好きな少女を思わせる無邪気な微笑みだった。
Act.３:対眠り姫戦用最終兵器
窓から差し込む眩しい日差し。
チュンチュン、チチチという擬音。
棚の上の目覚まし時計集団が指し示す時間。
全てが今の時間帯が朝であることを指し示す中…水瀬名雪は、未だ御就寝中だった。
「うにゅ…。」
聞く者まで脱力させそうな寝言を言いつつ、お気に入りのぬいぐるみであるけろぴーを抱きしめる。
本当に安らかそうな寝顔。
これを崩すのは誰とて罪悪感を感じずにはおれまい。
――今日が平日でなければ、そして彼女がれっきとした高校生でなければ、の話だが。
ドタドタドタドタ！
近所迷惑じゃないかとさえ思わせる音が水瀬家の廊下を駆け抜ける。
だが音を出した本人は気にしない。何故なら急がなければこんな足音など比べ物にならない程の近所迷惑な騒音が響き渡るのだから。
バタンっ！
やや物騒に部屋のドアを開ける音。
開けたのは相沢祐一――水瀬名雪の従兄弟にして、現恋人だ。
祐一は名雪のドアを開けると同時にベッドの横にある目覚まし時計群（というか軍）に対して臨戦態勢に入り、いかにしてこの数に手こずらず手際よく目の前の軍隊を全滅させるかに全神経を集中させ――
――ふっとその緊張を解いた。
その表情には困惑が浮かぶ。
彼にとっての毎朝（休日除く）の対名雪戦の前座たる目覚まし時計軍はセットされていなかった。
（忘れたのか？）
いや、それは有り得ない。毎晩あの量の目覚まし時計をセットしているのだ。それは既に日課になっているはず。それを昨日に限って忘れるとは考えにくい。
（セットする前に寝てしまった？）
それはまだ有り得そうだ。しかし昨日はちゃんと家族に「おやすみなさい」を言ってから寝たはずだ。
その後部屋に入ってから衝動的に寝たというのも変だ。
その日常のほとんどを睡眠欲に支配される従姉妹だが、そういうところはしっかりしている。毎晩の予習復習も欠かさない人間だし。
祐一の頭が高速で回転する。
だが彼はその理由―恋人が目覚まし達をセットし忘れた事について―として提唱されるべき説を一つ頭から外していた。
いや、考えたくなかっただけかもしれない。
だが事ここに至ってはそれが最も有力だろう。
それでも彼はそれを信じたく無かった。
彼にとってそれは一番最悪にして凶悪な選択肢だからだ。
（まさか……。まさかまさかまさか――！？）
嫌な予感が頭の中でラインダンスを刻む中、ついに彼はその予感を確信させる光景を視界に入れた。
――数多くある目覚まし時計の中で何故かそれだけ特別扱いのように孤立した場所におかれた見覚えのある目覚まし時計。
そして彼が反応する前に、そこから彼を絶望に誘おうとするように声がそこから流れ出す。
奇しくも彼、相沢祐一自身の声音で。
「『名雪……。俺には奇跡は起こせないけど――』」
「うおおおおおおおおおっっっっっっ！！」
問答無用で彼を地獄の入り口へと落とさんとする声を止める。
これを名雪以外の誰かに聞かれること、それすなわち彼の身の破滅と言っても過言ではない。
（誰にも聞かれてなかったよな……。）
辺りをキョロキョロ。だが、彼の望みは儚く散った。
いつの間にか彼の後人影があった。
さっきまで誰もいなかったはずなのに。
「あ、秋子さん……。」
そう、水瀬名雪の母親――水瀬秋子である。
祐一の方を見てニコニコ笑っている。
「あの…今の…聞いて……？」
「了承。」
呆然、といった感じの祐一の問いにいつもの答を返して部屋を出る秋子。
その意味は――言わずもがなだ。
（聞かれたあああああ。よりによって秋子さんに聞かれちまったあああああああ！！）
相沢祐一１７歳。彼は生まれて初めて目の前をすっごい嬉しそうな顔をして天使の姿した悪魔が飛ぶのを見た気がした。
「――んで、まだ起きんのかこの三年寝名雪は。」
朝っぱらから心に大きな傷を負ってしまった。これ以上の被害は御免被りたい。
せめてこの傷を抱えたまま早朝マラソンなんてことだけは無いように、目の前で未だにグースカ寝こけている恋人を起こそうと試みる。
布団を剥いでみる。
――効果無し。
揺すってみる。
「……地震だおー。」
――効果無し。
けろぴーを奪ってみる
――お、ちょっと反応があった。
頬を引っ張ってみる。
――寝言がすこし面白くなった。でも効果無し。
殴ってみる。
「うー。けろぴー、私を置いて逃げてー。」
――お姫様の頭の中で戦争勃発。ってかけろぴーもういないし。
戦果は散々だ。これだけガンバって得られたのはけろぴーだけ。
ちょっと泣きそうになる祐一。
『あの』目覚ましを使えばすぐに起きるだろう。
そんな考えも浮かびはするものの、すぐに却下する。
これ以上傷を広げるのは愚策中の愚策だ。というか自分が耐えられない。
もしあれを真琴に聞かれたら――想像するだに怖い物がある。
仕方なく、祐一は最終奥義―いわゆる切り札―を使うことにした。
「しゃあねえなぁ……」
と、言いつつその顔は仕方ない、と言うよりはチャンスを得た獣のような顔をしている。
そして――
彼は顔を恋人の寝顔に近づけると、問答無用でその唇を奪った。
さらには、舌まで入れる。
くちゅ…くちゅちゅ…。
しばし名雪の部屋という空間がその音のみに支配される。
どうでもいいが音だけ聞くとかなり淫猥な雰囲気がある。書いてる作者も筆があまり進まない。
まぁ、それよりも香里パートの「ちゅっ…」の方が抵抗あったのはここだけの話だが。
ともあれしばらく目を閉じて感触を楽しむ祐一。
そこに、ふと感じる違和感。
思わず祐一は顔を上げ――
そして、違和感の正体を睨み付ける。
「名雪……。てめえ、起きてやがったな……。」
「えへへ〜。祐一、大胆だよ〜。」
目を覚ました眠り姫は頬染めつつも心なしか満足そうだった。
（最近図太くなりやがったなコイツ……。）
別の手段を考えねば、と思考を巡らす祐一。
何げに、今朝は負けっぱなしの彼だった……。
「……真琴？」
朝食の準備をしていた秋子は席に座っている水瀬家第二の居候にして彼女の第二の娘――沢渡真琴を見て首を傾げた。
確か祐一が名雪を起こすのを手伝おうと二階に行ったはずなのだが、いつ戻ってきたのだろうか？
しかもまた表情が変だ。
彼女の顔は漫画などでショッキングな出来事を目撃した人物がする表情そのままに凍っていた。
その上呆然としているようだ。
そんな真琴の表情を見て、秋子は彼女が二階の水瀬家長女の部屋で何を目撃したのか、大まかな所を悟った。
「あらあら。」
――やっぱり、今朝の相沢祐一は負けっ放しだった……。
kiss。
それはどこにでもある物。
でも一つしかない物。
幻想的な物。
でも確かな物。
意地っ張りな才女の衝動kiss。
清楚なお嬢様のイタズラkiss。
眠り姫を起こす切り札kiss。
そして、この世に散らばる様々なkiss。
その意味は様々でも、ただ一つ、それらには共通点がある。
それは――
――そのどれもが、『想い』を伝える物だということ――。
おしまい……ではなく。
Act.４:余談
「うお！？『遅刻寸前の警鐘』相沢・水瀬夫婦が俺より先に来てる！？」
「北川……。何だそのありがたくも無い二つ名は……？」
「うむ、名付け親は俺と見せかけて実は美坂だ。……なんか元気ないな？どうした相沢？」
「今朝は色々と失った物が多くてな……。」
「？？言ってることがよく分からん……。ところで美坂は？」
「風邪で休みだと。」
「うあー……。伝染しちまったかねえ？」
「伝染すようなコトしたんじゃないか？」
「するか！……ともかく放課後にでも見舞いに行くか。」
「ああ、そうだな……。」
「ねぇねぇ知ってる？元生徒会長の久瀬先輩、図書館出入り禁止になっちゃったんだって。」
「へぇー、意外〜。結構マナーとかにうるさそうなのにね。どうして？」
「話によると、変な大声上げたらしいのよ。その上女の子と人目も考えずイチャイチャしてたんだって〜。」
「うっそぉ、あの堅物そうな人が？」
「ホントなのよ〜。人って見かけに寄らないのよねー。」
「なんで昨日の今日でこんなに広まってるんだ……？」
それはキミが自分が思ってるより有名人だからです。諦めれ。
今度こそおしまい。
投票結果
Kanade (採点:2)
多分に詰めすぎな感あり。一本一本は好きな展開なのだけれど。
hiro (採点:3)
ｓｓの終わり方はよかったが、余談はいらなかった
あきらくん (採点:5)
ヒロインが皆チャーミングで良いです。久瀬は不幸なんだか幸せなんだか。
ふーふぁいたーず (採点:5)
ほのぼのしてて良かったです。
風見鳥 (採点:5)
独特な語り口調で面白かったです。もちろんお話も。
雨音 (採点:3)
ネタ的には好きなんですが、久瀬×佐祐理さんがダメなので・・・
竹仙人 (採点:5)
同じキスでも色んな姿、形、味があるのですね。・・・羨ましい(爆)
TOM (採点:2)
内容を云々する以前に、文章が固くて説明的すぎると思います。
夏葵 (採点:4)
佐祐理さんが良い感じです。
kuryu (採点:3)
話自体はかなりいいですが、各話の練りが少し足らないような気がしました。
荒野草途伸 (採点:1)
最初のはともかく、最後のが全然おもしろくない。
グＥ (採点:4)
それぞれのキャラの異なったＫＩＳＳがいい雰囲気をかもし出していてよかったです。
おーふな (採点:5)
かなり×かなり×かなり、面白いです。そっけない語り口がまた良い。
yuxsan (採点:5)
香里の純情さ、佐祐理さんの小悪魔的な悪戯、名雪のあまあまぶりが凄く良かったです
ugen (採点:4)
佐裕理と久瀬の話が良かった
Ｇａｒａ (採点:3)
キス、でくくってはいますが、３つのエピソードがそれぞれテーマが違うので全体がバラバラです。オムニバス、という事かもしれませんが、短編としてはまとまっていない印象を受けました。どれかひとつに絞って書いた方が良かったように思います。
かずき (採点:5)
うますぎ、特に香里が良すぎ。ぜひ続きが読みたいです。
橘征五郎 (採点:3)
まずは基本的な文章作法の勉強を。各キャラの個性が出ているし、シチュエーションも考えられていてなかなかに面白い。軽い文体もマッチしている。だが最後の辺り、「kiss。それは――」から先はAct.4も含め蛇足か。それまでごまかせていた基礎的な文章力のなさも露呈してしまっている。
naoki (採点:4)
なかなかいいんじゃないでしょうか。
taka (採点:3)
確かにそうですが・・・、名雪と祐一が恋人という設定が多すぎてげんなりしてる最中なので・・・（哀
Ｖｉｓ (採点:5)
滅茶苦茶雰囲気が良かったです。佳作をありがとうございます。
全採点
5点 : 25
4点 : 37
3点 : 45
2点 : 27
1点 : 16
このSSは、作者の方に二次著作権が存在します。
転載、無断引用を固く禁止します。
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