―もう少し―



「ん? ……朝、か?」
カーテン越しに、眩しい光が差し込んでくる。
身を切るような寒さがなくなってきたとはいえ、この街はまだまだ寒かった。
毛布に包まれて、出たくない。
「暖かいしなぁ」
少し寂しいような気もするけど。それに、そろそろ目覚しをセットしてる時間だし学校にも行かないといけない。
と、まどろみに包まれながら祐一がそんなことを考えていると、階段を上ってくる足音が聞えた。
その足音が、自分の恋人である――香里のものだとすぐに悟る祐一。
と、言うよりかは名雪は論外だし、秋子さんならば逆に足音を立てずに部屋まで入ってくるはずだ。
それに、何の意味があるのか知らないけど……。
「…………♪」
何か、思いついたのか寝たふりを始める祐一。
すぐに部屋のドアは開いた。
「おはよ、祐一♪ ってまだ寝てるのかしら?」



―もう少しだけ―



「祐一、朝よ?」
ゆさゆさと寝たふりをしている祐一を起こそうとする香里。小さいひよこがついているエプロンが眩しい。
「ふぅ……ダメね。まぁ、名雪と血は繋がってるんだからしょうがないかな?」
案外、簡単に祐一を起こすことを諦める香里。
それに、祐一だったらそのうち起きてくれるだろうしね。
それにしても……。
「なんでこんなに寝てるときは可愛い顔してるのかしら? 起きたらなに考えてるかわからないのにね……」
はぁ……。と溜め息をつく香里。
まあそれでも、そんな祐一に惚れているんだと自覚はしている。
祐一が寝ているベッドに座り込み、なんとなくこの部屋を見渡す。
大概は他人の部屋というのは少なからず居心地が悪いものだが、この部屋だけはそんな気持ちにならなかった。
むしろ、香里はこの部屋にいるときが一番落ち着いた。勿論、それは自分一人ではなく、祐一と一緒にいるときだったが。
少しだけ動悸が早くなっている気がする。やっぱり、少しは緊張をしているのかしら?
そんなことを考えながら、深く一度だけ深呼吸をして落ち着こうとした時に
「よっ、おはよ。香里」
「!?」
「おいおい、そんなに驚かなくてもいいだろ?」
「……後ろから急に抱きつかれたら誰だって驚くわよ……」
「そうだな。驚いた香里の顔が見たかったし♪」
はぁ……。こういう人なんだ。彼は。
わかってはいたけど、つい突っ込まずにはいられない。
「一体なにを考えてるのよ? 祐一は?」
「なに考えてるかわからないんだろ?」
「それを聞いてたってことはあたしが来る前から起きてたのね」
「おお。そうだぞ」
「じゃあ、どうしてこんなことしたの?」
ん〜、と少しだけ考える祐一。
「香里に抱きつける口実が欲しかったってのは?」
「ダメね」
「……………………一秒か」
「当たり前でしょ? 理由がなくてもいっつも抱きついてくるのに」
「イヤか?」
少しだけ、真剣な声。
「イヤじゃないわよ……。あたしだって祐一に抱きつかれるの好きなんだから……」
紅くなりながら答える香里。
「ん……よかった」
甘えん坊ね……。そんなことを考えながら、自分も彼から離れられないのは分かっている。
「なぁ……俺、香里の香り……駄洒落じゃないんだぞ?」
「わかってるわよ……」
「匂いって言ってもいいけど、なんかヤだろ?」
「そりゃ、なんとなくね」
「だろ? それでな、香里の香り、好きだぞ」
「……別にあたしは香水なんてつけないんだけど」
「そんなんじゃないさ。なんて言うかな……。こんな風に香里が近くにいると落ち着けるんだ」
恥ずかしそうに左手を香里から外し。鼻の頭を掻く祐一。
「だから、こうしてていいか?」
また、強く抱きしめてくれる。
「――ええ、もう少しだけ、ね」
「……ケチだぞ?」
「ふふ……そうかもね」
とりあえず、二人は朝の光を浴びながら、少しだけ笑いあった。






「それじゃ、おやすみ。香里」
「ええ――ってどうしたら気がついたら一緒に毛布に包まってるのよっ!」
「寒くてな。人肌の温かさが恋しかったんだ」
「ちょ、これから学校なのよ!?」
「俺は気にしないぞ?」
「あたしが気にするのよーーーーーーーー!!」





「祐一さん、香里さん。もう学校に行かないと遅刻しますよ?」
「すぅ……すぅ……」
「すぅ…………すぅ…………」
「あらあら、今日は二人とも学校はお休みですね」
秋子さんは、ただにっこり微笑みながらそう言って部屋を後にした。






「うにゅぅ……けろぴーがぁ……イチゴサンデーと世界をかけて……」
当然、名雪も欠席していた。

投票結果

神無 (採点:4)
iina


KOU (採点:4)
祐一と香里が一緒に寝ている場面が目に浮かぶぅ!


空明美 (採点:4)
平和だなと^^


荒野草途伸 (採点:4)
ちょっと甘いかなあ


雨音 (採点:3)
ほのらぶ加減がいいですね〜♪


B・C (採点:3)
香里の積極さが○。最後の名雪も笑えた。


十七夜 (採点:3)
羨ましい関係だなあと。こういう風にありたいものです。


紅 虹葉 (採点:5)
かおりんかわいい〜!


通行人B (採点:1)
香里ファンには受けがいいんでしょうか?


TOM (採点:3)
作者の妄想ストレートですね。


kuryu (採点:2)
いつかの日常って感じが好きです。


グE (採点:2)
祐一と香里の雰囲気がよかったですが、もう少し説明がほしかったように思いました。


ugen (採点:3)
おちに名雪の寝言と言うのは基本でしょうか


かずき (採点:1)
没。


tabibito (採点:4)
いい感じですねぇ


Gara (採点:3)
可愛い話で良い。もうすぐ鳴る筈だった目覚ましはどうした?、とか、毛布に引っ張り込まれたからって寝てしまうものか?、とか突っ込むポイントはあるものの、可愛さの邪魔になる程でもない。


舞耶 (採点:4)
何と戦ってるんだー?w


橘征五郎 (採点:1)
神の視点と祐一視点、香里視点がごっちゃになっている。香里のキャラが違うことに対する説得力がない。二人のラブラブな雰囲気が伝わってこない。文章力が絶無。


naoki (採点:4)
満点を付けたい衝動に駆られました。うう、いいよ、これ。


はぐ (採点:3)
「いい感じです」 見事なこっぱずかしいいちゃいちゃ系ですね。それだけに、変な違和感もなく、くすりと笑って読めました。もう少し文章が工夫されてればもっと良かったかもしれないですね。


taka (採点:2)
話より名雪の夢の内容が気になりました・・・。


全採点
5点 : 10
4点 : 30
3点 : 69
2点 : 41
1点 : 18

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