灰老児とよく澄んだ空


　老人が路上にうずくまっていた。
　街は無人で、空は薄いガラスのように澄み渡っていた。
　私は任務を終え、来た道を戻っていた。
　老人はまだそこにいた。
「避難しないのかね」
　私は尋ねた。
「できない者もいるさ」
　老人は疲れたように笑った。
「知ってるかい。ここは昔、雪が降ってたんだよ」
　私は曖昧に頷きながら、空の一角に攻撃の前兆である黒い点がないか注視していた。
「なあ、あんた、うさぎは飼ってないか」
　老人は唐突に言った。
「ぬいぐるみでもいい。だが色は白がいいな」
「さあ」
　空を気にしつつ生返事を返すと、老人は遠い目をした。
「ずっと三人で暮らしてたんだ。でも、二人になってしまってね。その日からまいが見えるようになったんだ。きっとうさぎは喜んでくれると思う」
　老人は私でない誰かに目を向けて言った。
「そうだ、まいは子供のままだ。喜んでくれるだろう。でも舞はどうかな。もう髪も灰色で寝たきりだ。笑ってくれるだろうか」
　それから、白い点を探すように空を見上げた。
「せめて雪が降ればなあ。うさぎも作れるんだがなあ」
　冬の空は静かで相変わらず澄み渡っており、お互いあと何日かは命が持ちそうだった。
　その楽観と、雪が降れば誰かが喜んでくれることだけが老人の慰めだった。

投票結果

竹仙人
　雪雪降れ降れ。


ふうがみこと
読み始めの印象は蛍の墓……いつ死の灰が降ってくるのかと、かなり怖かった。
でも、いい話しだとおもいます。


屈折する星屑
いやこんなのいきなり出されてもー！？


山の上
ちがうコンペに出品したらいいでしょう。


Manuke
……えっと。


はむ
切ないお話ですね。ただ……攻撃ってどこから！？


Revin
む、意味深そうなSSですが、真意が読めず……。


ミダ (採点:1)
わびしいっすぅ。


Foolis
ネタ的には面白いがもう一歩掘り下げて欲しいようにおもった。
それが残念。
評価Ｂ


言之米
こんな未来はいらないなぁ。


神城蒼 (採点:1)
雰囲気が好き。大好き。どうも昔からこういう雰囲気に弱いんです


電光刑事バン
　カノンとは何の関係もない上、状況がまるでわからないために評価不能です。
　内容もあってないようなものです。


荒野草途伸
６くさとし。


歩人
日本陥落！？


名無し＠デフォ
ダメ老人じゃん・・


投票者四回目
物凄く切なくなるので思わず加点…しようとしましたが、既に使い果たしてました。残念。


waya_k (採点:1)
黒い点と白い点。舞とまい。
最終行が少し気になりましたが、世界観を買います。


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