始まりへの眠り
……私は娘に何をしてあげれたのだろう。
冷たいベンチに身体を預け、そのことだけを考えている。
娘とした、たくさんの約束。
どれも守ってやることができなかった。
今だってそう
『一緒に動物園へ行く』
こんな些細な約束さえ守ってやることができない。
もう身体は動かない。
辛うじて意識はあるものの、それがいつまで持つのか。
そんな私を心配そうに見つめている雪うさぎたち。
娘が作った雪うさぎ―２人だけの動物園……。
娘は今も私のために雪うさぎを作りつづけている。
なにもしてやれなくて悲しいはずなのに、
なにもしてやれなくて悔しいはずなのに、
娘を見ていれば自然と笑顔が浮かんでくる。
私の笑顔を見て娘も笑顔を浮かべてくれる。
それが嬉しくて、悲しかった。
目の前の動物園が霞んできた。
必死に抵抗しても、動物園は白くなることをやめない。
そんな中で最後に見たもの。
犬とじゃれあいながらも、雪うさぎを作る娘の姿。
―嬉しそうな、楽しそうな横顔―
たったひとつ、約束とは違うけど、この場所で娘にしてやれたこと。
「ごめんね……舞……」
なにも見えない白い世界の中、私は笑顔で娘に謝った。
投票結果
- 春日 姫宮
- 舞の母親の視点というアイディアはいいですが、もう一ひねり欲しかったです。
- はむ
- うーん、それだけだとちょっと……。という感じです。前半はよかったのですが。
- 屈折する星屑
- ああ…けなげな舞がかわいくて、かわいそうで。なにか、こころに、感じるものがありました。
- Manuke
- ちょっと物足りない……。
- 山の上
- 悲しすぎて・・・
点あげれません。
- 電光刑事バン
- 長い作品のワンシーンだけを抜き取っただけの構成は減点対象です。
ただ、舞母の描写と言うのは面白かったです。
- Foolis
- 寂しい感じがなかなか出ていていい感じですが、もうすこしなにかほしかったかなぁと思います。
それが残念でした。
評価Ｂ
- りょーと
- うーん。
超短編でやるにはちとネタ的に厳しい気がします。
- 言之米
- ほぅ。
- ふうがみこと (採点:1)
- シンプルで、でもいい話です。
ちょっと感動しました。好きです。
- 荒野草途伸
- ７くさとし。
- Q-bird
- 川澄親子のＳＳですね。とてもおもしろいと思いました。
ただ、題名から判断すればこの後母親は生き返るんでしょうけど、
話の雰囲気と若干の違和感を感じます。
母親の心情が中心で、舞の心理描写が少ないので、母親と一緒にいたいという舞の気持ちがあまり
伝わって来なかったからだと思います。
Ｋａｎｏｎ本編に続く、というよりも、読みきりの舞の母親のＳＳという印象を受けました。
- みすずさん (採点:1)
- 一つの物語が白く埋め尽くされる。新たな物語を描くため。
母の想いは悲しいまでに純白で。その想いは言葉には成らなくとも、必ずや届くはずです。
- 歩人
- 娘を残して逝ってしまう事への無念さも感じる。哀愁漂う作品。
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