三歩分の距離
「祐一なんてキライ」
口を尖らせた舞はずんずん先を歩いていった。
「祐一さん、舞にちゃんと謝らないとダメですよーっ」
横を歩く佐祐理さんは花のように顔をほころばせた。
そして、その距離は姿を見せる。
買い物の帰り道、動物園への道すがら、キャンパスのただ中。
いつも側につきまとう、手の届かない距離。
三歩分だけ先行く彼女は、赤らめた顔を俯かせ、
付き添う彼女は、俺の顔をうれしそうに覗きこむ。
先の彼女はちらりちらりと振り向き、横の彼女は手を振って応える。
スネた彼女の羞みも、見守る彼女の微笑みも、
凛々しい彼女の歩みも、緩やかな彼女の歩みも、
風を切る黒い髪も、柔らかく撫でる亜麻色の髪も、
揺らめく切れ長の瞳も、優しく細めた瞳も、
三歩分の距離の中にある。
瞬きより速くかき消え、また新しく現れて、目の前に溢れ出る。
雨あがりの虹のように。
俺は意を決して駆けた。一息の合間に彼女の側に寄り、黒髪をくしゃりと撫でた。
「俺は舞のこと、好きだぞ」
舞は顔をぷいと背け、後ろで佐祐理さんがはやし立てた。佐祐理さんが駆け寄り、舞が俺たちの頭にチョップした。
俺たちは並んで歩く。
冬の風を跳び越えるように、虹を渡るように。
どうかこの距離が三人とともにありますように。
投票結果
- はむ (採点:1)
- キレイな描写でいいですねー。
- Manuke
- ちょっと足りない……。
- 山の上
- 上手にまとめているなあ・・・
いい感じですね。
- 屈折する星屑
- あ、いいなあ。あったかいお話ですね。
やや詩的な表現が、他の「詩！」って感じの作品よりもうまいように思います。
- 電光刑事バン
- いつでも舞が先を歩き、その後を祐一と佐祐理が歩いていく。いつもの構図です。
逆に当たり前すぎて面白くなかったりします。
- Foolis
- なんでもない３人のやり取りがいい感じでした。
評価Ｂ
- 荒野草途伸
- ３くさとし。
- ふうがみこと
- 師の影を踏まず。
なんか不満が残ります。３歩の距離に込めたものを、私は上手く感じれませんでした。
- Q-bird (採点:1)
- 理想的な３人ですね。佐祐理さんがいい味出してます。
祐一が舞のそばに寄ったことで、佐祐理さんだけが３歩分だけ離れてしまわないか心配ですが、
彼女にとってはそれが幸せということなんでしょうか。
３人の性格や役割がしっかり描かれいて、舞エンド後のSSとしてとても説得力があると思いました。
- 広咲瞑 (採点:1)
- 綺麗な文章にくらっと来ました。
最近遠ざかってましたが、舞も佐祐理さんも好きなんです。やっぱり可愛い、二人とも。
- 歩人
- 喧嘩して、で、仲直り。ほのぼの的関係。いい感じ。
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