春を掴むもの
可愛らしさの欠片も無い白のウォークマンは昔母にねだった物だ。
「女の子なのに」
母に笑われながらも買った。華やかな色は苦手だった。
只真っ白だったそれも今や傷が付き汚れている。
「悲しい曲は嫌だ」
イヤホンを付けたまま、私を見て言った。
それはまだ真っ白で光が当たる度きらきら輝いて。
面白いと言って動かして遊んでいたかと思えば。
「可哀想だ」
歌詞分かるの？と聞くと首を横に振った。でも悲しいと。
でも私はそんなバラードばかり聴いていた。
「楽しい曲聴こう 美汐」
笑顔に揺れたが、私はそういう曲は全く持っていなかった。
りん
突然鈴の音が響き、固まる。
ストーブがごうごうと唸る。
…ああ CDか
力が抜けた。鈴の音が入ると知っていたのに。
くすんだ白をちらりと見て教科書に戻る。
『お名前は？』
「…」
静かに立って財布を取る。
…肉まん
折角暖かい部屋に居て、外は寒いけれど。
CDショップにも。明るい曲も聴いてみよう。
…きっと真琴も悲しい曲は嫌いだった。
曲は終わっていた。
…これもその内買い換えようか。新しい、そう赤色の。
貯金を使って。
コートを着て、白い四角は静かに教科書の上に。
少しずつ、少しずつ、春へ。
久しぶりの出費に酷く優しい気持ちになって、私はストーブを消した。
投票結果
- 2% (採点:2)
- りん に1票、久しぶりの出費に酷く優しい気持ちになったのでもう1票。
- はむ
- 分かりづらい内容でしたが雰囲気はよかったと思います。
- Manuke
- うむむ……。
- Revin
- いい感じでした。
- 山の上
- うーん。
消化しきれない。
- Foolis
- １ＫＢという制限のなかでなかなか巧くまとまっていていい感じだと思う。
評価Ｂ＋
- 屈折する星屑
- いい感じです。１ｋでこんだけ書ければ十分だと思います。
- ふうがみこと
- 悪くはないんだけれど……やはりインパクト、もとい響くものが不足気味……
- 電光刑事バン
- いわゆる美汐ネタですが、内容がいまいち。ウォークマンと言えばテープレコーダーの事ですが、美汐の年代でそのようなものを所有しているのは不自然です。
まあ、おばさんくさいから所有しているともいえますが、それにしても物持ちがいいとしかいえません。
- 木村圭
- 心が、少しずつ春へ。
止まっていた心が動き出すきっかけは真琴。
未来への始まりを告げる、優しい物語。
- 荒野草途伸
- ６くさとし。
- waya_k
- 次点。
いわゆる良いＳＳなんだけど、少しありきたりかなぁ。
- 言之米
- 物腰上品
- 歩人
- ふむ、良い雰囲気。
- みすずさん (採点:3)
- 少しずつ和らぐ冬のように、柔らかく変化する美汐の心。
季節が変わり、環境が変わり、そして自分も変わってゆく。
それを穏やかに見つめることが出来る彼女には、色彩豊かな春が訪れることでしょう。
超短編で一番印象に残った作品でした。
- 名無し＠デフォ
- （゜д゜）ウマー
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