だからわたしは、忘れるために思い出す。
「マラソン？ やらんやらん。参加するなら、ひとりでしろ」
「えーっ。祐一、わがままだよ」
「わがままはお前だ」
今度の日曜日、市内で行われるマラソン大会に、一緒に参加しようと誘ってみたけれど。
祐一の答えは、思ったとおりだった。
「うん。だったら、ゴールで待っててよ」
だからわたしは、考えていた言葉を口にする。
祐一は、「それくらいなら」と言って、頷いてくれた。
スタートの合図と共に、走り出す。目指す先に、あるものを求めて。
ずっと、走ってきた。何かを頭の中から追い出すように。
けれど、最近気づいた。
走ることは、思い出すこと。そして、それを忘れること。
からっぽになった頭の中を埋めるように、思い出がどんどん湧き出してくるから。
そしてそれを、整理できるから。わたしは、走る。
思い出にピリオドをうって、ゴールの先にあるものを目指して。
その先に、答えはある。わたしには、それがわかったから。
やがて、思い出の終わりを暗示しているかのような、ゴールのテープが見えてくる。
走る。走る。あの人が待っているから、わたしは走る。
その想いは、誰にも負けないと思うから。
だからきっと、一番乗りはわたし。
「名雪っ」
ゴールはあなたの、笑顔だから。
投票結果
- はむ (採点:1)
- なかなかいいですね。超短編だからいいと思える内容だと思いました。
- 山の上
- 普通ですね。
いいとは思うます。
- Manuke
- そーゆーものなの？
- ぽこぽんた
- 好きです。コレだけしかない文章なのに、思い切り飲まれました。
現時点で一番の作品。
- 屈折する星屑
- 妙にクササが目立ったのはどうしてだろう。他にもクサイのは結構あるのに（ぇ
何処か、もっと目を惹く部分があれば。
- Foolis
- 名雪の心情はなかなかいい感じですが、今ひとつ盛り上がらなかった。
まぁ１ＫＢというのは厳しいのですが。
評価Ｂ
- 電光刑事バン
- 構成、内容共に上手いと思います。
- 荒野草途伸
- ５くさとし。
- Revin
- 普通、と思いました。
- ふうがみこと
- 思いだけで勝てれば苦労はしねーよ！ 思いの分だけ苦労するから勝つんだよ！
つうか、私は真剣に走っている間に思い出が湧き上がってくることなんてありませんでした。
超短編だし、作者さんが悪いわけではありませんが、そんな訳で私は感情移入が出来ませんでした……
- 歩人
- で、胸元に飛び込んで包容ですな。やるねぇ（ニヤリ。
- 名無しさんだよもん (採点:1)
- おおっ、ストレートな話は好みだ。
この名雪は好きだ。
祐一ももうちょっと描写して欲しい気はするけど。
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