白い花


私の目には街はモノクロームの風景写真のように映っていた。
信号機は白と黒をちかちかと光らせていて。
行きかう人々の顔はなく黒で塗りつぶされていて。
踏みしめる雪の音はやけに大きく感じた。

祐一が帰ってくる。
その事実に私は動揺していた。
今でも忘れないあの七年前の冬のできごと。
受け入れてもらえなかった気持ち。
今でもその事を鮮明に覚えている。──けれどもう、あの日から七年経った。
時間はなによりも優しい。時は傷を少しづつ癒してくれた。
だけど今、その時間は私の心を抉ろうとしている。
だから祐一の待つベンチへの曲がり角から足を踏み出せないでいた。

　ふと道端を見ると白い花が咲いていた。
それは七年前と同じ場所に咲いていて。私は思った。
きっと来年もまた同じ場所に咲くのだろう。
白い花が。
当たり前のように。
力強く。

　ポケットを探ると少しだけお金があった。
だからそのお金でコーヒーを買った。
この世界はまだモノクロームだから。
真っ黒で白く湯気立つホットのブラックコーヒーを買った。
──それと。
もしも……
白い花のように、私の気持ちを届けて。
あの七年前の雪が溶けて、新しい春を二人で迎えられたら。

「雪、積もってるよ」

暖かく祐一の手を繋げるように。


投票結果

はむ
あー、まぁまぁのお話でした。可も不可もなく。


春日　姫宮 (採点:1)
　ＯＰネタは食傷気味なんですが、やはり好き。
　そんなことを再確認させてくれたこの作品に感謝します。


山の上
いいと思います。
もち点がもう少しあれば一点入れたかった・・・


Manuke
花？　比喩表現？


Foolis
名雪の心情がいい感じで描けていていいと思いました。
評価Ｂ


電光刑事バン
　なんと言うか、以前読んだアンソロジーの内容みたいです。


木村圭
ずっと祐一を待ち続けていた名雪が、何の事情も無く二時間も遅れて来るわけがない。
そんな名雪の心情を語ったSSはたまに目にすることがありますが。
コーヒーという小道具が印象的でした。


ふうがみこと
悪くはないんですが……やはりもう一つ欲しい。
シリアスでＩＫＢって、すっごく難しいんだなあ、と、これ読んで改めて思いました。


荒野草途伸
花と名雪の心の結びつきが、よくわからんです。
１くさとし。


屈折する星屑
モノクロの世界。ブラックコーヒー。なかなかいいですな。それでも、面白みには欠ける部分がある気がします。


歩人
前から思っていることですが……祐一は何故二時間馬鹿正直にベンチで待ち続けたんでしょうね？寒さをしのげる場所からベンチ辺りを観察しても良さそうですが……。

作品はなかなか。


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