けっかはっぴょー

かのんＳＳこんぺ第二回・短編部門結果発表

香里「また性懲りも無くやってきたわね……かのんＳＳこんぺ、第二回よ」
栞「そしてまたお姉ちゃんが第一声なんですね……ていうか性懲りも無くって」
香里「言葉通りよ」
栞「わけわかんないです」
香里「仕様よ」
栞「――とにかくっ、行きますよっ、かのんＳＳこんぺ第二回短編部門結果発表。今回はうちの学校の学食からお届けします」
香里「はぐらかしたわね。まぁいいわ。……ふふっ」
栞「えぅーっ、今回のお姉ちゃん腹黒いですーっ、誰か助けてーっ」
名雪「香里……栞ちゃんをいじめたらだめだよ」
香里「それもそうね。行数も増えるし。そろそろ順位の発表に入りましょうか」
栞「私としてはもう何事も滞りなく進むのを願うだけです……」
名雪「意外に栞ちゃんのほうが保守的だよ～」
香里「それでは、第十位よ。……ふふっ」
栞「その含み笑いを止めてくださいーっ」

第１０位　62.19pts.　マリッジブルー

名雪「第１０位は、エントリーナンバー６９、中西矢塚さんのマリッジブルーだね。――ほら、美汐ちゃんっ、美汐ちゃんの話だよっ」
美汐「はぁ……私が主役……ですか」
栞「はい、ほら」
美汐「はい……ええと」

美汐「　　　　　」

名雪「今私は、彼女の背中に蠢動する宇宙を見ているのだ……だよ」
美汐「あいざわぁ――っ！！」
祐一「べぶふぉっ！！」
栞「故アンディ・フグの必殺技、踵落しですね。うぃ・うぃる・ろっく・ゆうです」
祐一「鼻にラーメンがぁーっ！　唐辛子が粘膜に痛いっ！？」
美汐「これは私の怒りではない……地球のみんなの怒りなのだ……」
名雪「美汐ちゃんがおかしな世界に入り込んじゃったよ～」
祐一「な、なんで……」
美汐「相沢さん、ちょっとそこに座りなさい。説教してあげます」
祐一「またそんなおばさんくさい……」
美汐「うるさいですよ。――いいですか？　高校生が子供を持つことの苦労を知ってますか？　生活費を捻出するだけの財力も無く、昼夜問わず働かねばいけないし、かといって子供の情操教育をスポイルするわけにもいかないんですよ。他にも社会的な環境要因に阻害され（中略）なんですよ。事実上普通の高校生が子供の養育を十分にこなせる望みはゼロに近いんです。分かりますか？」
祐一「わ、分かった……分かった」
美汐「いいえ、分かってません。そうでなければ避妊の準備を怠るなどという愚昧極まりない行為はできるはずがありません。統計によれば高校生が性交の際に……」
名雪「じゃ、祐一がいじめられてる間にコメントいくよ～。お母さーん」
秋子「はいはい。美汐ちゃんの妊娠をめぐるラブコメといったところかしら。でも、若くてもそうでなくても子供を生むって苦労するものよ」
名雪「経験者は語る、だね」
秋子「ええ、私も名雪ができたときは大変だったわよ」
名雪「それが何歳のときの話とか聞きたいよ」
秋子「あらあら」
名雪「結局謎なんだね……」
秋子「妊娠を契機とした女性の不安定な気持ちをうまく書いた作品ね。うまいわね、とにかくうまい。うまいったらうまいからこれについて語りましょうね」
名雪「もういいよ……でも、確かにそうだね。わたしも赤ちゃんできたら、相手が今までと同じような感情を自分に抱いてくれるかとか考えるだろうし、そんなときに他の女の人と話してたらつらいと思うよ」
秋子「そうね。ただ……美汐ちゃんの葛藤に比べて祐一さんの決意はすこしあっさりしすぎてたという評価もあるわ。年下の女の子と、その子供を抱えて生きていけるだけの能力は自分にあるか？　両方の幸せを考えると堕胎も悪くない選択肢ではないのか？　そこから、それでも自分は彼女を愛している、とまで言えるならもっと祐一さんをかっこよく見せられたかも」
名雪「女冥利に尽きる、ってやつだね」
秋子「でも、皆さんは避妊には気をつけてくださいね？」
名雪「教訓だよ～」
秋子「けど、避妊というのは男性だけに責任があるわけでもないわ。男女両方に、避妊するという意思がないと成立しないものよ。ねぇ、美汐ちゃん？」
美汐「……うっ」
秋子「あらあら。案外祐一さんとの子供、ほしかったんじゃないかしら～？」
美汐「……あぅ」
名雪「あれ～？　美汐ちゃん、顔まっかだよ～」
美汐「……やっぱり親子ですね、あなたたちは」

香里「ちなみに、順位変動と投票傾向よ」

投票数 153 : 単純平均点 6.52

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

名雪「好スタートをきってたんだけど、あとから後続に追い上げられたって感じだね」
香里「スタートダッシュを維持することができなかったのか、それとも後続のパワーがすごかったのか、微妙なところね」
名雪「真琴について触れられていなかったっていうのが響いたみたい」
秋子「投票数は７点が多いわね。やっぱりこのあたりは、もう一声あれば更に上にいける、惜しい話というところかしら」
名雪「うん、そうだね」
秋子「じゃあ、私はちょっと外すわね」
名雪「わかったよ。では、第８位いくね」

第８位　62.87pts　銀河鉄道と夜明け　
　　　　　　　　　　　『　銀　月　夜　話　』

栞「はいっ、第８位はなんと同着ですっ。まずはエントリーナンバー１１６、相沢和也さんの、銀河鉄道と夜明けでごふぅっ」
名雪「わわっ、栞ちゃんが血を吐いたっ！？　救急車救急車救急車！」
香里「保険業者もね」
名雪「分け前は半分こだよね、香里～」
香里「何言ってるの？　妹のものはあたしのもの。あたしのものはあたしのものよ」
名雪「見事なジャイアニズムだよ～、でも友情は血縁を凌駕するんだよ～」
香里「それよりも一千万の保険金は友情を駆逐するのよ」
栞「――そんな黒い話題で盛り上がらないでください……演出用の血のりです……」
香里＆名雪「……ちっ」
栞「ああ……味方が……味方がいません……私は独りです……」
香里「そんな小ネタを使う妹なんてあたしにはいないわ」
栞「だって……私死んでるんですよ？　やっぱりしょっくです～」
香里「まぁ、”栞死後の香里ＳＳ”ってかのんＳＳ界では十本の指に入るくらいメジャーだし。薄幸キャラの常として諦めときなさい」
栞「お姉ちゃんのいじわるーっ」
香里「はいはい、アイス注文してあげるから大人しくしときなさい。――あー、あと、北川君と相沢君！」
北川「ん？（ずるずる）」
祐一「ふぁ？（ずるずる）」
香里「ラーメン食べてないで、なにかコメントしてよ。出演してるんだし」
名雪「わたしはそのハチミツと唐辛子が気になるよ。さっきも食べてたけど」
香里「そうね、なによそれ？」
北川「ちゅるんっ……いや、すげえ甘いラーメンとすげえ辛いラーメン、どっちが耐え難いか実験してたんだが」
香里「馬鹿ね。馬鹿まっしぐら。馬鹿の穴へ行きなさい」
祐一「馬鹿の穴って」
香里「ほら、コメント」
祐一「馬鹿の穴って……」
香里「……コメント」
祐一「ひぃっ……は、はいぃ……」
北川「ちくしょう……やっぱりこういうのって男キャラは虐げられるんだな……席も隅っこだし」
名雪「あぱるとへいとだお～」
北川「仕方ない、コメントいくか、相沢」
祐一「そうだな……」
北川「銀河鉄道と夜明け。宮沢賢治作品のオマージュ的な話だな」
祐一「栞の死後――」
栞「えぅ～っ！」
香里「ああ、幻聴が聞こえるわ。相沢君、気にしないでいいわよ。幻聴だし。幻聴だものね。クレバーに、幻聴っぽく無視してくれるといいわ」
祐一「はぁ……えっと、栞の死後、失意の香里が北川と体験する不思議な話、ってところかな」
北川「銀河鉄道の夜をネタに取り入れたのはいいアイディアだよな。宮沢作品の死のイメージと栞ちゃんのシナリオはマッチしてると思うよ」
祐一「銀河鉄道、っていうのも幻想的だしな。車輪がレールとかみ合う音と、窓から見える星、列車はどこへ向かうのか……寂寥感みたいなのを感じるよ」
香里「ただ、評価にはそれを生かしきれていないというのがあるわね。すこし、感情とか展開を移行させる根拠に欠けていたと感じる人も多かったみたい」
名雪「なんでこの場面でこう思ったのか？　どうしてこういう展開になるのか？　っていうのが説明不足だったってことだよね」
香里「そういうことね。きっかけを巧く演出できれば、もっと良作になったはずよ」
名雪「ちなみに、順位変動と得票の傾向は……」

投票数 137 : 単純平均点 6.64

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

香里「１０位付近は、前回と同じく本当に接戦だったようね。誰が上に来てもおかしくなかったみたい。この話は、１１位のあたりで停滞していたのを追い上げて最後の最後で駆け上がったのね」
名雪「７点の割合が一番多いね。後もう一歩進んでればその７点も上がったかも」
香里「もう少しがんばってほしかった話、ってことね」
栞「がんばっても私死んじゃってるじゃないですかぁ……ぐすっ」
香里「ああ、ほら、泣かないの。仕方ないわね……ね、アイスでも食べましょ。それで元気だしなさいよ」
栞「お姉ちゃん……もので釣るのはやめてほしいです。食べますけど」
香里「結局釣られるじゃない。じゃあ名雪？　あたしと栞はちょっと出るわ。あと適当にやっといて。ほら、行くわよ鉄郎」
栞「お姉ちゃん……その帽子は……」
香里「銀河鉄道ときたらこれを扱わないわけにはいかないわ」
名雪「変な使命感発揮してるよー。まぁ、それはおいといて同着の『　銀　月　夜　話　』の解説いくよ、３．２．１．あくしょん～」
香里「なんか違うでしょう、それは……」

北川「ずるずる……ごっくん。エントリーナンバー１１０。作者名非公開、『　銀　月　夜　話　』だ」（※結果発表時は非公開でした）
祐一「ずるるっ……お、これも栞の死後の香里ＳＳだ。次は、俺とのカップリングなんだな」
名雪「っていうか、まだ食べてるんだね」
北川「何を言うべさーっ」
祐一「そうだべそうだべ！　米の一粒でも残そうもんならお百姓様に申し訳がたたねーべ！」
名雪「それは麺だよ……」
北川「でも、一応炭水化物つながりだし」
祐一「それに、意外とうまいんだなこれ」
北川「ラーメンのつもりで食わなきゃ、ハチミツ入りもいけるぞ」
祐一「いるか？」
名雪「全力で拒否するよ」
祐一「むぅ、そうか……うまいのに。ずるずる」
名雪「いいからコメントしてよ……」
祐一「おう……ずるずる……コメントするぞ……ずるずる」
名雪「食べながら話すのはよくないよとか言う前に、間にずるずるって効果音挟むのは止めてほしいよ……」
祐一「ちゅるっ……わかったよ。えっと、さっきも言ったとおり栞の死後の香里ＳＳ。カップリングは俺とだな。と言っても、銀河鉄道と夜明けと違うのは、もうすでに香里とある程度の関係になっているってことか」
北川「作者さんにはすまないが、比較させてもらうぞ。同傾向のＳＳで、さらに同着となると珍しいからな」
名雪「ナイスフォローだよ～。免罪符とか連想させるよ～」
北川「褒められてる気がしない……」
祐一「まぁ、とにかく。ここでキーワードになったのは”ビデオ”。そして相違は栞の生前のシーンが含まれていることかな」
名雪「銀河鉄道って、ビデオより幻想的でいいと思うんだけど……」
北川「でも、栞ちゃんがすこし目立たなかったかな。美坂の哀惜の感情をうまく演出するには、それがキーになるみたいだぜ」
祐一「栞ばーさす銀河鉄道、だな」

栞「――すっごいひっかかります～！　っていうかまた私死んでる～！」
香里「てやっ（とすっ）」
栞「はぅっ……がくり」

名雪「亡霊は香里が退治してくれたよ。続きいこ」
北川「友情って美しいなぁ……相沢」
祐一「ああ……涙が出るよ」
北川「感動じゃないよな」
祐一「うん」
名雪「じゃ、順位変動と得票傾向」
北川「ラーメンがしょっぺぇなぁ……相沢」
祐一「ハチミツ入りなのになぁ……」

投票数 144 : 単純平均点 6.61

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

名雪「これも、マリッジブルーと同じで追い上げられた作品だね」
北川「７点も多いし。このあたりはやっぱり僅差で競争してたんだろうな」
祐一「ただ、何が足りなかったと言うのはこの話じゃはっきりしてるみたいだぜ」
名雪「うん、盛り上がりだって。ある意味、トップ１０中一番平凡な話かもね。いい意味でも、悪い意味でも」
北川「山場がなかった。これもあとひとつだけで相当の良作になるんだろうな」
祐一「このあたりの作品には、もらった感想を活かせばもっといい話を書けるだろうから、がんばってほしいな」
名雪「ポイント稼ぎの爽やかな笑顔がむかつくんだお～」
祐一「ひんっ」
北川「無理すんなよ相沢……ラーメン食おうぜ」
祐一「ずるずる」
北川「ずるずる」
名雪「わたしもラーメン食べたいかも。イチゴラーメンってある？」
祐一「あれば食うのか……」

第７位　63.45.pts　“らくえん。”

美汐「はい、実況変わりました。天野です」
香里「いいノリね、天野さん」
美汐「はぁ……相沢さんに、こういうお祭り的企画のときはできる限り盛り上げるのが礼儀と言われまして……」
香里「まぁ、相沢君の言うことをいちいち鵜呑みにはするなと忠告しておくけど、正論ではあるわね」
美汐「とにかく、向こうでラーメン食べてる御三方に変わって、７位以降はこちらで解説いたします」
香里「７位。エントリーナンバー１２２、これも作者名非公開、タイトルは“らくえん。”ね」（※結果発表時は非公開でした）
美汐「私と真琴の話のようです。――真琴っ、すこし来てください」
真琴「あぅ……お品書きに肉まんがない……」
美汐「当たり前です。学生食堂に肉まんなんておいてるわけありますか」
秋子「あら。肉まんならあるわよ」
美汐「秋子さん……？　って、なんですその白衣と三角巾は」
秋子「一日食堂のおばちゃんよ♪」
美汐「いや、♪とかつけられても……」
香里「気にしたら負けよ」
美汐「……そうしますか。まぁご都合主義の妙技とでも思っておきます」
秋子「ほら真琴、憎饅よ」
真琴「ありがとーっ！」
美汐「あの、今ちょっと発音におかしなものを感じたんですが」
秋子「冗談よ」
美汐「意味が分からないんですが」
秋子「そういえば、人肉饅頭って映画、あったわね。ホラーっていうよりシュールって感じがしないかしら？」
美汐「……さっきからすごい不穏当な単語ばかり鼻につくんですが」
秋子「栞ちゃん、アイスのおかわりよ」
栞「ありがとうございますー」
真琴「はもはも。この肉まんおいしー」
香里「諦めなさいよ、天野さん」
美汐「うぅ……」
香里「じゃあ、解説行くわね。天野さんと真琴ちゃんの話。なんと、コメディでベスト１０にエントリーされた唯一の作品よ」
美汐「……ええ、今回のこんぺはシリアス率が前回に比べて大きいです」
香里「でも、これはそのシリアスがインフレ気味な中でがんばったコメディ作品。コメディじゃ、こんぺ作品中一番よ」
栞「シリアスが嫌いってわけじゃない方でも、ここまで多いと食傷気味になりますしね。そこにこんなコメディが現れると癒されます。……私が死んでないコメディとかほしいですね」
香里「後半部の本音が分かりやすくて好感度高いわね、栞」
栞「ぐれてやるんです～、今日も元気にドカンときめたら洋ラン背負ってリーゼントするんです。真琴ちゃん、一緒に夜の風になりましょう」
真琴「ニッショーキ入りのナナハンにまたがってトップクでブッコミするのよねっ」
香里「やめなさいって……」
美汐「だいたい、真琴自分で言ってる意味分かってないでしょう……」
香里「ともあれ、コメントしときましょうか」
美汐「そうですね。会話のテンポのよさをとにかく評価された話ですね。しかし……ごきげんようとか失敬なとか……私そんなこと言うように見えるんでしょうか……」
香里「……世の中知らないほうがいいことってあるわよね」
美汐「失敬な」
香里「言ってるじゃない」
美汐「……はっ」
香里「まぁ、こういう風にかけあいがウケたわけね。あと、キャラの細かい部分の掘り下げも効いたかも。ボタン三個以上のものを扱うのが苦手な天野さんとかね。こういう現実的な小さいくせが、感情移入しやすくさせることもあるわ」
美汐「ただ、会話とキャラクターの魅力、そして日常の温かみを評価する感想が多いんですが……それ以外の部分については触れられていないんですよね」
香里「たぶん、情景描写の簡易さを突っ込まれてこの順位に落ち着いたんだと思うわ。でも、シリアスと違ってこの手のノリであまり事細かに書き散らすと、テンポがスポイルされて冗長と言われかねないし……コメディというのも、難しいジャンルかもしれないわね」
美汐「つまり、使い分けでしょうね。想像させたいときは、ストレスを感じさせない程度に細かく、スパッと読ませたい場面は省略して。そういう能力を要求されていたということでしょうか」
香里「そうなのかしらね。下が、順位変動と得票傾向よ」

投票数 139 : 単純平均点 6.68

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

美汐「下位から追い上げたけど、中盤から息切れしてしまったと言うことですね」
香里「減っては来たけれど、やはり７点の割合が多いわね。つまり、まだ何かが足りないと感じる読者がいるってわけかしら」
美汐「そうのようですけど……まぁ、もうひとによってはどこに穴があるのかわからなくなるレベルですね」
香里「そうね。――ところで栞、特攻服着てシガレットチョコなめるのはやめなさい」
栞「ぷっはーっ、今を生きるだぜー」
香里「仕込みくさいわよ……だいたいその服、どこで手に入れたの」
秋子「こんなこともあろうかと♪」
香里「またあんたですか……」
美汐「気にしたら負けですよ……」
香里「そうね……じゃあ、６位行きましょうか」

第６位　63.50pts. No More Dying Then

香里「６位ね。エントリーナンバー１２４、仮面の男さんより、No More Dying Then……あら、あたしが主役ね」
栞「……けっ、です」
美汐「完全に拗ねてますね。ほら、美坂さん、今回はあなたも生きてるんですから……」
栞「えぅ～、一回くらいは主役になりたいです」
真琴「あぅーっ、真琴もーっ。だって、美汐ばっかりめだってずるいずるいー」
栞「真琴ちゃん、所詮私たちは狡猾なサブキャラにおいしくばりばり食われちゃったよわっちいバンビーなんです。これからは反体制っぽく生きていきましょうね。あなーきー・いん・ざ・ゆーけーです。Ｕ．ＫはＵｎａｔｔｅｎｄｅｄ　Ｋａｎｏｎｃｈａｒａｃｔｅｒｓの略です」
香里「今パンクが二十五周年だからって分かりづらいネタを使わないの……ピストルズ知らない人も読んでるのよ？」
栞「天上天下唯我独尊ですーっ」
真琴「生まれてきてすいませんー♪」
美汐「ああもう……二人とも服の刺繍を読むのはやめなさい……」
香里「まぁ、でも……二人の言いたいことは分からなくもないわね。今まで紹介したＳＳ、全部あたしか天野さんのどちらかが主役みたいだし」
美汐「そうみたいですね」
香里「シリアスが多いこととも関連性を感じるわね。確かに、あたしと天野さんのバックボーンから鑑みるに、シリアス的な雰囲気が成立しやすいのは確かだし」
美汐「けれど、そのぶん競争率が高いのは事実ですよ」
香里「ええ、このこんぺで成立したジャンルの中じゃ最も練度の高いもののひとつかもしれないわね」
美汐「ですね。そして、このNo More Dying Thenは、美坂先輩の人間的な成長に焦点を当てたＳＳのようです」
香里「そしてそこから、愛の定義に発展する……といったところかしら」
美汐「美坂先輩ひとりの心理描写の精度を錬成させるのに精力を費やしたみたいな話ですね。好評価を受けたのはそのあたりの理由が多いようです。まずはじめに美坂香里という一人の人間の葛藤ありきなＳＳのようです。そうやって作り上げられた話だから、深さを感じることができるのでしょう」
香里「ただ……短編の２０ｋｂというページ数でやったのはまずかったかもしれない」
美汐「哲学を扱い、その中で更に愛を問うことですね」
香里「ええ、心理と愛、どちらも体積がひどく大きいものよね。それら二つを扱って短編としてうまくまとめるのは、事実上不可能といっていいかもしれないわ」
美汐「心変わりがあまりに早いと胡散臭く捕らえられますし、愛は言葉に表してこれほど陳腐になるものは珍しいです。何重ものきっかけの向こうに人間の成長はあるのですし、愛という言葉を実感と重量を伴って届かせるには途方もない努力を要します」
香里「それを物語としての魅力を損なわずに実行するには、すこし短編では無理があるわね」
美汐「そこを突かれて、この順位に落ち着いたということでしょう。順位変動と得票傾向を見てください」

投票数 145 : 単純平均点 6.70

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

香里「ベスト１０の後半をさまよってるわね。安定した作品みたい」
美汐「ええ、得票数も８点が多くなってきましたし……７位以下にはないものがあった、ということなんでしょう」
香里「そうみたいね」
美汐「それでは、５位以降は別に方にお任せして、私たちはすこし休憩しましょうか」
香里「そうね。しおり……って、あれ、栞は？」
栞「――せんせいよぉー、おれたちゃ今を生きてんだよー、じゃますんなよー」
真琴「この金属バットでのうみそぶち割ってやるぜー」
石橋「や、やれるもんならやってみろー、だがなここは俺の教室だ。俺の戦場だ。ここで暴れた奴は生きたまま校門をださん。その覚悟ができてるんだったらそのバットを振り下ろせ。やってみ、み……みさらせ？」
栞「ＮＧですっ。そこはやってみろです」
石橋「はぁ……すまん」
栞「しっかりしてください先生」
石橋「うぅ……お前らは全部アドリブなのに……なんで私だけ台詞付き……しかも長い……だいたい配役に無理が……」
栞「問答無用です。さぁ、りていく――」
香里「やめなさいって」
栞「だって～。お姉ちゃんと天野さん二人だけでなにやらこむつかしい話ばっかりするんだもん」
真琴「ひまにもなるわよぅ」
美汐「だからって泣き虫先生の七年戦争ごっこはないでしょう……」
香里「まぁいいわ。あれね、壁にぶち当たったらトイレに行くのね。行きましょうか、栞」
美汐「それでは、お後がよろしいようで」

第５位　63.59pts. 踊り子に癒しを

佐祐理「遅ればせながら到着、撞着、降着ーっ、佐祐理です」
舞「……舞」
秋子「お疲れ様です。はい、麦茶ですよ」
佐祐理「あ、どうもです」
舞「……ありがとう」
秋子「秋とは言ってもまだ暖かいですね。麦茶作っておいてよかったわ」
佐祐理「でも、そろそろ涼しくなってきますよーっ。スポーツの秋っていいますしね、運動するにはちょうどいい気候です」
舞「……食欲の秋」
佐祐理「あれ？　舞、お腹すいた？」
舞「……（こく）」
秋子「あらあら、それじゃあ何か作らなくちゃね。何がいいかしら？」
舞「……牛丼」
佐祐理「あははーっ、たまには天丼とかカツ丼でもいいんだよーっ」
舞「……仕様だから」
佐祐理「それなら仕方ないねーっ」
舞「……私は仕様を守る者だから。というか、破ったらクレームがつくから」
佐祐理「もうここまでで十分問題発言とかやっちゃったと思うけどねーっ」
秋子「あらあら」
舞「ないすふぉろー」
秋子「じゃあ、牛丼でいいわね？」
舞「……（こく）」
佐祐理「佐祐理もそれでお願いします。でも舞、イエスならはちみつくまさん、ノーならぽんぽこたぬきさんっていうのも仕様なんじゃない？」
舞「あれは……できれば言いたくない」
佐祐理「どうして？」
舞「結構恥ずかしい……」
佐祐理「なるほどーっ」
舞「祐一、センスない」
秋子「舞ちゃん、佐祐理ちゃん、牛丼できたわよ」
佐祐理「あ、はい。ありがとうございます」
舞「ありがとう」
秋子「私もいただこうかしら」
佐祐理「一緒に食べましょーっ」
舞「大勢で食べたほうが、お米はおいしい……」
佐祐理「どんどん問題発言ポイントが溜まってくねーっ」
秋子「あらあら」
舞「ないすふぉろー、ぱく」

…………

香里「いや、いい加減路線戻しなさいよ」
秋子「もぐ？」
佐祐理「もぐぐーっ」
舞「……もぐ」
香里「ごめんなさい。食べ終わるまで待つわ」
秋子「ごっくん……あら、香里ちゃん、出かけたんじゃないの？」
香里「いや、あたしの話っていうから来たんですけど……とりあえず、ボケ役だけの場を放置する危険は認識しました」
舞「助かった」
佐祐理「実は収集つかなくなってたんですよねーっ」
香里「自覚してるんならやめてくださいよ……５位ね、エントリーナンバー１０２、作者名非公開、踊り子に癒しを」
佐祐理「香里さんと祐一さんの、ちょっとこそばゆい恋愛の話ですかねーっ」
秋子「ほんのりと暖かい雰囲気が、評価されたわけですね」
佐祐理「でも、ちょっとLonging/Loveはミスチョイスかもしれませんねーっ。同じ香里ＳＳなら、『銀月夜話』あたりのほうがＢＧＭとしては似合ってた気がします」
秋子「寂寥感を感じさせる曲ですからね。こっちは、軽めのバラードの方がよかったかしら」
舞「でも、いい曲」
佐祐理「ええ、イメージ曲をつけるのはいい技法ですよねーっ。文章はやっぱり、視覚から入ってるといってもそれを頭で処理しますから、音楽のほうが直接的ですし。合わせ技で話に魅力が増えます」
秋子「もっと印象付けるのなら、話の内容に対応した歌詞または作曲の背景がある曲がいいかもしれないわね」
香里「そろそろ中身に触れましょうよ……」
佐祐理「そうですねーっ。恋愛小説的な技法、表現が目立ったお話です。完成度の高い恋愛小説として高得点がつき、ベスト５入りとあいなりましたっ」
舞「……ちょっと、憧れる」
秋子「けれど、配役にかのんＳＳとしても矛盾を指摘されたわね」
佐祐理「学年主席の香里さんがなんで浪人してるのか、ってところですね」
香里「受験は時の運も大きく影響するけど……ああ、あたしが浪人か……」
佐祐理「そこから再受験をめぐって両親と対立、それが原因で家出して下宿先の温泉で管理人に着替え入浴のぞかれまくって怒りの鉄拳で”ぷろっ”なラブコメに発展するんですかねーっ」
舞「そしたら私も連れてって欲しい……」
佐祐理「佐祐理はとび蹴りとか好きですよーっ」
秋子「あらあらまぁまぁ……な役で」
香里「そんなことありえませんから安心してください。まぁでも、受験は本当に何があるか分からないわよ。模試でＡ判定とっておいて落ちることもあるからね」
秋子「それに、かのんの世界で一番”普通の女の子”らしいキャラといったら、たぶん香里ちゃんでしょうしね」
佐祐理「ドラマみたいな恋愛を演出したいなら、あながちミスキャストでもないですよね」
舞「……でも、伏線を活かしきれてないって評価もあった」
佐祐理「そうですねーっ。冒頭の背理法と、あとLonging/Loveあたりに話と関わりがあれば、もっとよかったです」
秋子「ちなみに、順位変動と得票傾向ね」

投票数 141 : 単純平均点 6.74

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

香里「一度落ち込んだけど、後から巻き返したわね」
秋子「でも、中盤で停滞して、結局このあたりに落ち着いたというところかしら」
佐祐理「全体的な精度が向上すれば、もっと上も狙えましたねーっ」
舞「……がんばって」

第４位　65.03pts　この剣に一滴の涙を添えて

舞「……次は、えんとりーなんばー１３０、作者名非公開、この剣に一滴の涙を添えて……私の話（ぽっ）」（※結果発表時は非公開でした）
佐祐理「やったねーっ、舞」
舞「……（こく）」
佐祐理「ほら、なにか気の効いたコメントしなきゃ」
舞「待って……今考える」

舞「…………」

香里「……と、とりあえず場つなぎのためにあたしたちの方からもコメントしておきましょうか」
秋子「そうね。そうしましょうか」
佐祐理「舞はゆっくり考えてていいよーっ」
舞「……うー」
香里「川澄先輩の幼年期の話ね。先輩がどういった経緯であの剣を手に入れたかというエピソードよ」
佐祐理「因果とは奇妙なものですねーっ。たまたま出会った刀工のおじいさんが実は……なんですから」
秋子「芸術品――まぁ、本質的には刀というのはただの人斬り包丁だという見方もありますが、それは置いといて――を扱うというのはいい選択ね。特に、刀剣類のような危うさがあると、それもまた魅力に直結しますから」
佐祐理「刀には刀匠の人生がこもってるように感じられて、含蓄がありますからね」
香里「それに、刀の製造法とか結構調べこんであるわ。やっぱり、文章って知識の集積みたいなところがあるからね」
佐祐理「よく勉強したってことですねーっ。その姿勢ににじゅうまる、ってことでこの順位なんでしょうか」
秋子「まずはじめに刀ありき。それを軸にした刀匠と女の子の心の交流、題材をうまく扱った綺麗さが評価されたようね」
香里「ただ……母親の死を契機にするというのはまずかったかもしれないわね。川澄先輩のキャラクターからして、そこになにがしかの感慨がないと不自然でもあるわ」
佐祐理「細部の研鑽もすこし足りませんでしたかね。端々に矛盾が見られるという評価が多かったです」
香里「分かりやすく書かれてはいるけれど、やっぱりある程度刀剣に造詣が深くないと話に入り込めないというのも」
秋子「あ――ちょっとこの場で作者さんに代わって補足しておきますね。素延べというのは鉄を刃の形に打ち延ばしていく工程。火造りというのは、刃の形を仕上げる工程のことです。日本刀のコンセプト、”折れず曲がらずよく切れる”についてですが、折れないということは柔らかくなければならず、曲がらないということは硬くなければならないのですけど、その矛盾を解決するために考案されたのが”柔らかい芯鉄に硬い皮鉄を包む”ということだったのです。ちょうど最中や饅頭みたいなのを想像してくれるといいでしょうか。それにより、外側の鉄は硬いので曲がらず、内側の柔らかい鉄が衝撃を吸収するので折れないということです。西洋の剣をこの技法で作るのが難しいと言うのは、両刃だから芯鉄を完全に包まなくてはならず、その上で刃としての形を整えるのが困難だからではないでしょうか」
香里「……なんでそういうことに詳しいのか、かなり気になりますけど」
秋子「あらあら」
香里「さすがにそう何度も繰り返すと飽きますよ」
秋子「これを芸人の世界じゃ天丼というのよ」
香里「秋子さんは芸人じゃないでしょう……」
秋子「あらやだお上手ねぇ、おほほほほ」
香里「わけがわかりませんよ……」
秋子「それでは、順位変動と得票傾向ね」
香里「…………」

投票数 137 : 単純平均点 6.87

10点

9点

8点

7点

6点

5点

4点

3点

2点

1点

佐祐理「この話も、追い上げてきて途中で停滞したって感じですねー」
香里「注目度は高かったんだけど……ほとんどが７点に流れてしまったわね。ベスト５以下より目を引いたけど、あと一歩ではある話かしら」
秋子「そのようね」
佐祐理「もうすこしゲームをやりこんでいればよかったかもしれませんね」
香里「ええ、それではいよいよベスト３の発表といきましょう――」
（ぽかぽかぽかっ）
香里「あいたたたっ、ちょっと川澄先輩っ、なにするんですか！」
舞「……私、コメントできてない」
秋子「だからって殴らないで欲しいです……」
佐祐理「で、なにか思いついたの？」
舞「……みんなが全部言っちゃった」
秋子「あらあら」

秋子「さて、ようやくここまできたわね。ベスト３の発表よ」
佐祐理「どんな話が入ってるんでしょうねーっ。佐祐理はわくわくですよーっ」
舞「わくわく動物らんど……動物、きらいじゃない」
香里「やっぱり川澄先輩はズレてますね……」
秋子「あ、香里ちゃん？　他の人たちも集めてきてくれるかしら？　やっぱり全員参加でないとしまらないから」
香里「確かにそうですね。それじゃあ、呼んできます」
佐祐理「佐祐理たちはちょっと席をはずしますねーっ。準備がありますから」
香里「準備？」
舞「……秘密」
佐祐理「じゃ、行こーっ」
舞「ぐっどらっく」
香里「ふぅ……じゃああたしも行きますか」
秋子「いってらっしゃい」

秋子「さて、かのんＳＳこんぺ短編部門、結果発表もいよいよ大詰めですね。皆さんの支持した作品は今までに紹介されましたでしょうか？　それともこの先にあるのでしょうか。そして、この企画に参加されたあなたのＳＳはこれまでにありましたか？　それともこの先にあるのでしょうか。そう思うとわくわくしますよね。そして、ベスト３の発表です。今しばらくお付き合いください。それでは……」

ベスト３発表へ……