夢
夢を見ていた
のぞき込む顔
小さな、男の子の顔
目にいっぱいの涙を溜めて
"大切なひと"を目の前で失う悲しみに、絶望して
ただ、涙を拭ってあげたかった。
ただ、頭をなでてあげたかった。
ただ、…ごめんね、と。
ただ、…心配しなくても、大丈夫だよ、と。
そして、ありがとう、と。
そう、伝えたかっただけなんだ。
Last regret
あの男の子には、たくさんのものを貰ったんだ。
"大切なひと"を目の前で失う悲しみに、絶望していた―
―ボクを、救ってくれたんだ。
焼きたてのたい焼き。
涙の味のたい焼き。
駅前のベンチで待ち合わせ。
一緒に歩いた夕焼けの商店街。
天使の人形。
約束。約束の指切り。
『学校』
悲しみを忘れさせてくれた男の子。
もしあの男の子と出会わなかったら、ボクには悲しいことだけだった。
あの男の子がボクに、笑顔を取り戻してくれたんだよ。
本当に、本当に。たくさんのものを貰ったんだ。
たくさんの思いで。
たくさんの優しさ。
楽しかった日々。
伝えきれない、ありがとうのことば。
―伝えられなかった、ことば。
ボクを救ってくれた男の子が、
ボクを失って絶望しようとしている。
数え切れない、後悔。
ボクは、ずっと待っていたんだ。
あのベンチに座って。
ずっと、ずっと…
伝えられなかった、ことばを胸に。
ずっと、待ち続けたんだ。
７年ぶりに再会した男の子。
背は伸びたけど、ちっとも変わってなかった男の子。
生意気で、
いじわるで、
でも、とっても優しくて。
―あの日のことは、忘れて。
繰り返す、楽しかった日々。
そして繰り返す―
いままた、あの男の子が絶望のふちにいる。
あの時と同じように、"大切なひと"を、失おうとしている。
ずっと夢で見ていた光景。
ずっと夢で見ていた後悔。
ずっと夢で願っていた、願い。
今ならボクの手は、届くんだ。
もう、二度と後悔はしたくない。
だから、だから…
―ボクの、願いは…
"Kanon"
もし、
もしもまた、
あの男の子の"大切なひと"がボクだったら…
ボクは、ボクの幸せを願っても良いのでしょうか？
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