私はお姉ちゃんが大好きですっ♪
どれくらい好きって言うと……バニラアイス１カップより、いや２カップ、じゃなくて３……えぅ、そんな事聞く人嫌いですぅ〜。
と、とにかく、お姉ちゃんが大好きですっ！ 今だって、愛しいお姉ちゃんの為に私の好きなものをたっぷり入れたお弁当を……
バニラごはんにバニラ卵焼き、バニラの……と、この小さなお弁当に私の愛をギュウギュウ込めちゃってます。
えっ、こちらのマトモな具が入ったお重なお弁当は何だって？……まあ、あえて言うならば犬のエサと言ったところでしょうか。
むっ、こちらのマトモな具ってどういうことですかっ……そうですよね。私の愛のお弁当は素晴らし過ぎてマトモとは呼べませんよね〜。
あっ、お姉ちゃんを起こしに行く時間です♪ うふふ、ムフフ、うひひひ。って、早く行かないとっ。お姉ちゃんが目を覚ましちゃいます！
ふふっ、見てください。ハートの形に「かおりのへや」って書いてるんですよ。可愛いですよねぇ〜。
いただきまぁ〜す。じゃなくって、しつれいしま〜す。……そろ〜り、そろ〜り……ん？ 何で忍び足なのかって？
そんなの決まってます。お姉ちゃんが目を覚ましちゃうじゃないですかっ！ ……え、起こしに来たんじゃないのかって？
……起こしますよ。たっぷりと愛情を込めて。パチン、サラリ、サラサラ、パサッ……ふぇ？ 何をしてるのかって？
そんな事……聞かないで下さい……はう、寒いです……お姉ちゃん失礼します。
目の前に大好きなお姉ちゃんの顔。白い、すっごく綺麗な肌。おいしそうなホッペ……
それらがより映えるように流れるつやつやの髪。いいにおひです……
今は見えない宝石を飾る長いまつげ……そして、所々がもう少しで見えそうな乱れたシルクのパジャマ、ムフフ。じゃなくてっ！
……小さいけど、目を引きつけて話してくれない可愛らしい花……唇……う〜ん、も、もうちょっとっ……
『栞……ゴメンね。栞……ごめ……も、もう、一生離』
「しぃおぉりぃ〜！！」
真っ赤になって突然、起き上がるお姉ちゃん。あ、
「きゃ」
布団が剥ぎ取られて下着姿が丸見えになっちゃいました。
「しぃいいおぉおりぃぃ、あれほど、あの目覚ましはぁぁぁって、あ……栞」
「……昨夜は激しかったね。お姉ちゃん」
恥じらいながらクネクネ……決まりましたっ。昨日見たドラマそのものですっ！
「えっ、いや、その、あの、やだ、私、記憶にないんだけどっ！？」
もっと真っ赤になってくお姉ちゃん。
「そんなっ、私、初めてだったのにっ！ 責任とってよっ！」
「はうぇ、ちょっと、待って、ホントに記憶が」
青くもなっていくお姉ちゃん。しどろもどろ。
「赤ちゃんが出来たのよ！ 認知して！！」
「そ、そんな……一発で赤ちゃんがっ？ って、しぃぃおぉぉぉりぃぃぃ。いい加減にしなさいよぉ〜！」
「あは、バレちゃいました？」
「一晩で赤ちゃんが出来るわけないでしょうっ。それに昨日の人気ドラマ「愛よ永遠なれ」のセリフまんまじゃないっ。それっ！」
「目が覚めました？」
「目が覚めました？ じゃないわよっ！ ええ、覚めましたともっ。けど、あの目覚ましはもう使わないって約束したじゃないっ。もうバニラアイス奢らないわよっ！」
「えぅ、そんなぁ〜事言う人……」
「大体、あんな紛らわしいマネまでして……もう」
「お姉ちゃん、ドキドキした？」
「な、なななな何言ってるのよっ。何で、姉の私が実の妹にドキドキしなきゃいけないワケっ！？ ええっ、ドキドキしましたよっ！ いや、でも、驚いてたからっ！ 誰だって目覚めたら、横に裸の可愛い妹がいて、昨夜は激しかったらなんて言われたら驚くわよねっ。いや、姉は驚かないかしら。いや、そんな筈は。というか赤ちゃんが出来たなんて言われたらっ。って私は姉じゃないっ？ 近親相姦っ？ じゃなくて女同士で出来るわけがっ！？ うきゃー！！」
……やっぱり、お姉ちゃんって、カワイイ。ラヴり〜♪
ラヴり〜しすたー略してラヴしす
「お姉ちゃん、ごめ〜ん」
スタスタとお姉ちゃんは先を行く。
「だから、お姉ちゃん、ごめ〜んってばぁ」
スタスタとお姉ちゃんは……もうっ、すぅー、
「ああっ！！ やっぱり私は捨てられるんだぁ〜！ あれだけ体を弄んでおいてぇーっ！ お姉ちゃんなんてぇぇっ！ お姉ちゃフガッ」
「なぁあにが反省してるよっ！ まだ「愛よ永遠なれ」を続ける気っ？」
「フガフガ、ぷふぁあ。……これで、お姉ちゃんがまた強引に一発決めればＯＫですっ！ ぐっ」
「ぐっ、じゃないわよっ、ぐっ、じゃあぁあ」
「そ、そんなっ！？ まさか美坂が！？ 美坂がそんな趣味だったなんてぇぇぇぇぇーッ！ う、うおおぉぉぉぉぉぉぅぅん」
「……誰ですか？ あのアンテナ？ お姉ちゃんを知ってたみたいですけど……」
「……わ、私も知らないわ」
「そ、そんなっ！？ まさか香里達がっ！？ 香里達がそんな趣味だったなんてぇぇぇぇぇーッ！ 学校に言いふらしてやろうっ！！」
「相沢ぁーっ！ 待たんかいっ！！ ……死にたいようねっ？」
「じょ冗談っ。冗談でございますっ。香里サマ」
よくもまあ、ヌケヌケと言うモノです。
「……私には全然冗談に聞こえなかったんですけど」
「心外だな、しおりん。行き着くトコまで行った仲じゃないか？」
ムカムカっ、お姉ちゃんに無視されてた寂しさあまりに付き合ってやった分際で、なぁにカンチガイしてるんですかっ！
「それは人生の汚点ですっ！」
「ああっ！！ やっぱり私は捨てられるんだぁ〜！ あれだけ体を弄んでおいてぇーっ！ しおりんなんて〜しおりんゴフッ」
「そんな事言う人、死んでくださいっ！」
「グハッ……いいパンチだ。バタッ」
ふぅ……悪は滅びました。
「はいはい。バカをいつまでも続けてないで、相沢君。名雪はどうしたの？」
「見捨てた」
ズバリと言い切ちゃってますよ、この人。
「……は、い？」
「だから、見捨てた。面倒だし……それに」
「面倒って……まあ、確かにそうなんだけど。それにって？」
「香里達と一緒に登校したくてさ」
はっ。私がダメならお姉ちゃんですか。
「え、栞と一緒にじゃないの？」
「はうぇ？ お、お姉ちゃんっ。私とコイツは別になんともないんですぅっ！」
「け、けど、付き合ってなかった？ 本当に別れちゃったの？」」
「そうなんだ。しおりんにフられちゃってさ。だから、かおりんっ、慰めてくれぇ〜っ！」
「だ、だぁれが、かおりんよっ」
「なぁにをやってるんですかっ！」
「どうした、しおりん。……妬いてるのか？」
「だだだぁれが妬いてるんですかっ！？」
なんて事を言うんですっ！ お姉ちゃんにバレちゃうじゃないですかっ！？
「うん、妬いてるなぁ。この俺に」
……プチン。
「そんな事言う人、死ねぇぇぇえええっ！！」
「お昼休みですっ。お弁当のお時間です♪」
私とお姉ちゃんのラヴラヴな、お時間ですっ！
「さあ行きましょ。お姉ちゃ」
「ああ、行こうか。しおりん」
はわわっ！ もう、復活してますっ！ しぶといですね〜。
「お呼びじゃないんですけどっ」
「つれないぞ、しおりん」
「だから、しおりんって呼ばないでくださいっ」
「じゃれるのもいいけど。相沢君、いいの？」
「何がだ？ かおりん」
「し、しつこいわねっ。……だから名雪の事よ。結局、来なかったわね……学校に」
「……さあ行くでおじゃるか。二人とも」
……ごまかしてるつもりなのでしょうか？
「……まあいいわ、行きましょう」
「美坂ぁ、俺も連れて行っぐほぉぉぉぉお」
あ、突然倒れたドアの下から何やら声がしたような……。
「ま、間に合ったかお？」
「いや、間に合ったワケないでしょ」
「ううっ、１００ｍを７秒で走ってきたのにかお」
「マジですか？」
「祐一は極悪なんだよもんだよもんだよもんだよもん……くー。おやすみなんだよもん」
眠っちゃいました。
「ったく、コイツは何しに学校にきてるんだろうな」
「長い付き合いだけど……全く解らないわ」
「はい、祐一さん。アナタの分のお弁当です」
「おおっ、栞。作ってきてくれてるんじゃないかっ♪」
こんな適当に作ったお弁当でも食べて、私達の邪魔をしないで下さいっ！
「はい、お姉ちゃん。今日は、いえ今日も頑張ったんですよ〜」
「あ、ありが」
「うまいぞ！ しおりん！！」
うるさいですねっ。お姉ちゃんの声が聞きづらいじゃないですかっ。……勝手に付いてくる犬のエサにしては上等すぎたようですね。
「私も……いただきます。はむっ。……し、栞っ！ この独特の甘ったるい卵焼きはっ。もしかしてっ？」
「ハイ♪ バニラ卵焼きですっ！ 美味しいんですよ〜。まだまだ、いっぱいありますからね〜。はい、あーん」
「えっ、いや、ちょっと……」
「あ〜ん♪」
「その、栞。ま、まって」
ふふっ、お姉ちゃん照れちゃって……カワイイっ！
「……イヤガラセか？」
「違いますっ！ どこをどう見て、そんなこと言ってるんですかっ！」
「どこをどう見ても、嫌がっているのに無理やり食べさせようと」
「いえ、これは、いくらなんでもカワイイ妹に食べさせてもらうのは恥ずかしいなぁというお姉ちゃんの照れ屋な」
「仲がイイわね。二人とも」
「誤解ですっ！ お姉ちゃん。全然、そうには見えないじゃないですかっ！」
「二人とも、私をダシにしてからかっているように」
「そう、これは、素直じゃないしおりんが俺に突っかかってくるしかじゃれ合えない不器用さ故にぐふぅっ！」
「だ、誰がっ！ 誰にっ！ 素直になれないって言うんですかっ！？」
「わっ、ちょっ、たタンマっ。栞、実はここにバニラン祭りのバニラ食べ放題チケットが３枚あるんだが」
！ ……ばにらたべほうだい。バニラ食べ放題っ！？
「行きましょうっ！ さあ、今すぐにでもっ！ そう、今すぐっ！ なんたってバニラ食べ放題っ！」」
「……栞。相沢君、気絶してないかしら」
あ、興奮して首絞めすぎちゃいました……チケットは貰っておきますね♪
「さあっ、お姉ちゃん行きましょうっ」
「ちょっと栞。服、引っ張らないでっ……そんなに急がなくても良いでしょう？」
「もう、数時間も待ったんですよっ。これ以上待てませんっ」
「午後の授業出ないワケにはいかないでしょう」
「そんなので私のバニラを食べたい気持ちは抑えられませんっ！」
それに、時間が経てばまたアイツが復活してきますっ。
あ、見えてきました。あそこでバニラ食べ放題……じゅるり。
「おっす。ラヴリーしすたー」
……見なかった事にしましょう。
全く無視されると思ってなかったのか、さすがに固まってますね。アイツも。
「ちょ、ちょっと栞。相沢く〜ん」
お、お姉ちゃんっ！ アイツなんかに声かける事なんてっ。
「うう、かおりんは優しいなぁ」
「そのかおりんって、いいかげんに止めてよ。もう」
「お呼びでないではありません」
私とお姉ちゃんの邪魔をしないでくださいっ。
「……チケットは俺のなのに」
「ごめんね、相沢君。でも、ここって一体何？」
「バニラン祭り。冬の寒い時こそバニラを食べようという栞ぐらいしか行えないようなイベント。しかし、暖房の効いた建物の中でバニラを食べるというバカバカしさと安くて美味しいバニラが食べれるという事が、何故かウけているんだな。これが」
「そうですっ。バニラは外で食べるに限りますっ！」
「……いこうか」
「……そうね」
「バニラは外で食べるに限りますっ！」
「外で食べるに限るんじゃなかったの？」
「……バニラはどこで食べても美味しいんです」
「ふふ、相沢君はどこに行ったのかしらね」
「止めてくださいお姉ちゃん。アイツの名前を出すのは」
「……ホントどうしたの？ 一度は付き合ってた仲なんでしょ？」
「あの時は……誰とも付き合わずに、なんて……嫌だっただけです」
「じゃあ、好きでも無いのに付き合ってたんだ」
「……好きな人は居ましたから、好きって気持ちを思うことはできたんです」
「好きな人？ ……どんな人なの？」
「……お……お……」
「……」
「香里、好きだっ！」
「へ？」
「えっ？ 相沢君っ！？」
あ……あ、あ相沢ぁ〜っ！ 顔が赤いっ？
「香里、好きだっ。付き合ってくれっ！」
「ふぇっ？ ちょっと、そのっ……顔、赤いわよ」
「ああ、そこで、ういすきーばにらを食べてきたんだっ」
ういすきーばにらって……そんなのバニラじゃありませんっ！
「で、その、付き合ってくれって。……そんな、いきなり」
「俺は前々から香里の事が好きだったんだっ。妹が大好きな、大好きな。香里に」
お、お姉ちゃん。なんでそんなに顔が赤くなってるの？ ……相手はアイツだよ。
「ちょっ、ちょっと、待ってよ。……栞っ！？」
走った。外に出たくて、走った。……なんだか、いっぱいバニラを食べたのに体が熱い。
外は雪が降っていた。……なのに何でだろう。まだ、体が熱い。
……お姉ちゃん……
「栞ってばっ」
「お姉ちゃん？」
「バカっ！ 無茶して、また病気にでもなったらどうするのよっ！」
「……お姉ちゃん、何も泣かなくても」
「泣くわよっ！ 泣きたくもなるわよっ！ 大事な、大好きな妹だもんっ」
！
「……お姉ちゃん……私も、大好きだよ」
結果のページ
このSSは、作者の方に二次著作権が存在します。
転載、無断引用を固く禁止します。
戻る