うぇいてぃんぐ ふぉーゆー
遅い。
約束は３時だったよな。
もう４時を回っているぞ。
いつになったら来るんだ？
喫茶店のテ−ブルに１人の青年が座っていた。
彼の名前は、北川潤。
ごく普通の高校生だ。
今日彼は、同じクラスの女子をデ−トに誘っていた。
いや、正確にいうとデ−ト思っているのは彼だけ。
相手は微塵もそう思っていない。
彼女の名前は、美坂香里。
彼女は勉強ができて、ルックスが抜群。そんな彼女に彼は好意をよせていた。
デ−トに誘うチャンスはいつでもあった。
彼女とは席が隣だったから。
だが、なかなか「一緒にお茶でも」といえなかった。
なぜなら、水瀬名雪と相沢祐一という２人がいたからだ。
２人は美坂と仲が良く、いつも一緒にいたのだ。
そのため、１対１になるチャンスがなかなかやってこなかった。
そんな中、彼に不意にチャンスが到来する。
担任の石橋から彼女と２人でクラスの仕事を頼まれたのだ。
彼女は嫌な顔をしていたが、「しょうがないわね」の一言でやることになった。
そして、昨晩香里から電話がかかってきて。
「３時に百花屋で打ち合わせをしましょう」
ということで、商店街の一角にある「百花屋」という喫茶店にいる訳なのだ。
彼は、今日の日のために新品の服を着て、時間の３０分前からこの店に入っていた。
だが、待てど暮らせど彼女はこない。
時間を間違えたか？
いや、それはありえない。
今でも電話口から耳に残っている。
「３時に会いましょう」という美坂の声が。
あの美坂のおおらかな声で。
「ごめんね。待った？」
なんて言われたら…
俺は飛び上がって喜んじゃう。
俺はそこを抑えて、美坂に…
「ううん。俺も今来たところだよ」と笑顔で返す。
そして美坂が…
「ごめんなさい。なかなかお洋服が選べなかったの。」
といつもの制服姿ではない美坂が…
「あの…」
そんな彼の妄想はウェイトレスの声で一旦途切れる。
「すいません…ご注文はお決まりですか？」
ウェイトレスは、彼にそう言って空になったコップに水を注いだ。
「はっ！ す、すいません。」
妄想から覚めた彼は、慌ててメニュ−を見た。
（とりあえず、喉が乾いたな…よ〜し！）
「これ下さい！」
北川は、メニュ−の「アイスコ−ヒ−」のところを指さす。
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」
ウェイトレスは、お辞儀をして、その場から去っていった。
（さてと…）
ウェイトレスが去ってから彼は、また妄想の世界に入る。
美坂は俺がアイスコ−ヒを頼んだのを見て…
「すいません！ もう１本下さい」
と頼む。
「アイスコ−ヒ−ですね？」
ウェイトレスが香里に尋ねる。
「いいえ、ストロ−をお願いします。アイスコ−ヒ−はひとつだけで…」
美坂がウェイトレスに注文する。
「ストロ−２本ですね。かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
ウェイトレスはお辞儀をしてその場を立ち去る。
「美坂…俺が奢ってやるから頼めよ。遠慮するなって」
そして、俺が声をかける。
「いいの。あ・な・たと一緒に飲みたいの」
美坂は、笑みを浮かべて、俺の顔を見る。
「お待たせしました。アイスコ−ヒ−でございます」
そして、俺達２人の前にアイスコ−ヒ−が運びこまれた。
氷でキンキンに冷やして飲み応えがありそうだ。
「美坂…シロップとミルクはどうする？」
俺は、シロップとミルクを目の前に出しながら、美坂に尋ねる。
「入れて〜。う〜んと甘くして」
美坂は、俺に甘える様に言う。
「まあ、シロップなんてなくたって、俺達の愛で充分甘いじゃないか」
俺はそう言って、シロップとミルクを横に置き、ストロ−を２本差した。
「うん、そうね」
美坂と俺は、それぞれ１本ずつのストロ−で同じグラスのアイスコ−ヒ−を…
「お待たせしました！」
「はっ！ あっ…どうも」
突然のウェイトレスの声で、北川は妄想から現実へと引き戻された。
「メニュ−でございます」
ウェイトレスは、机にもう１部メニュ−を置いた。
「は？ あの〜メニュ−じゃなくてアイスコ−ヒ−を注文したんですけど」
北川は、ウェイトレスに言う。
「あっ！ すいません。ただいま持って参ります」
ウェイトレスは、急いで調理場に走っていった。
（まったく、俺はアイスコ−ヒ−を頼んだんだぞ）
北川は、少し頬を膨らませてウェイトレスを見つめていた。
（今、美坂が来たらな…）
そして、また妄想の世界に戻っていった。
「ごめんなさいね。遅くなって」
美坂は、そう言って俺の目の前に座る。
「いいって、気にするなって…」
俺は、笑顔で美坂に話かける。
「何にしようかしら？」
美坂は、机の上にあったメニュ−に目をうつす。
「美坂、好きなもの頼めよ。奢ってやるからさ」
俺は、胸を張って美坂に言う。
「いいの？」
「ああ！ どんと来い！」
「バンッ！」
俺は胸を叩いて応える。
「すてき〜。北川く〜ん、見直したわ。」
美坂は、驚きの表情で俺を見る。
「う〜ん」
だが、美坂は、メニュ−を見て悩んでいる。
「どうしたんだい？」
俺は、美坂に尋ねる。
「みんな美味しそうだから、１つに決められないのよ。あなたに悪いかなって」
美坂が恥ずかしそうに俺に言う。
「いいって。気にするなよ。好きなだけ頼んでいいよ」
心配する香里を前に俺は、どっしり構える。
「でも…」
それにも関わらず、香里は不安そうな目で俺を見る。
（しょうがないな…）
「パチン！」
決めかねている香里を前に、俺は指を鳴らす。
「お呼びでしょうか？」
すると、ウェイトレスが席に寄ってきた。
俺はメニュ−を指さして…
「このメニュ−の端から端迄全部持ってきたまえ」
と堂々とウェイトレスに言った。
「えっ…全部ですか？」
ウェイトレスは、少し驚いた表情を浮かべる。
「そうだ、全部だ！」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
ウェイトレスはキッチンに入っていった。
「いいの？ 北川君？」
香里は、俺に心配そうな目で見つめる。
「大丈夫だ。俺を信じろ」
そんな香里を前に、俺はポケットを叩いた。
俺は、今まで貯めた貯金を全額おろしたことから財布には福沢さんが何枚も入ってる。
まあ、今日で全額使っても昼飯を購買のパンで我慢すればいい。
それだけのことだ。
「分かったわ。今日の北川君、格好良いわ。見直したわ」
俺の自信満々の態度を見て、美坂は再び笑顔に戻る。
俺が愛した女のためだったら何だってやってやる。
こんなメニュ−の金額にもお前の笑顔にはかなわない。
お前の笑顔さえあれば、俺は満足なのさ。
俺は、目の前の美坂を見つめて…
「お待たせいたしました。」
再びウエイトレスの声で、北川は再び妄想から現実の世界に戻される。
「はっ…ありがとう。」
北川は、動揺していた。
「んっ？」
だが北川は、テ−ブルの上に置かれた物を見て声をあげる。
目の前にあるのは、イチゴサンデ−。
俺が頼んだのは、アイスコ−ヒ−だったよな。
「じゃあ、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ」
ウェイトレスは、礼をしてその場を立ち去ろうとした。
「あっ！ ちょっと！」
北川は、立ち去ろうするウェイトレスを慌てて呼び止めた。
「どうかなさいましたか？」
ウェイトレスは再び席に近寄り、声をかける。
「あの…これは？」
北川は、机の上のイチゴサンデ−を指さしてウェイトレスに尋ねる。
「イチゴサンデ−ですが…」
ウェイトレスはきょとんとしながら、答える。
「あの〜、アイスコ−ヒ−を頼んだんですけど…」
「すいません！ 失礼しました。すぐにお持ちします」
ウェイトレスは、頭を下げて慌ててキッチンに戻っていった。
（まったく…これどうするんだよ）
北川は、目の前に置かれたイチゴサンデ−を見ながらこぼしていた。
でも、まあ美坂のためのイチゴサンデ−だからいいか…
また再び妄想の世界に入っていった。
「待った？」
美坂は、遅れて席にやってきた。
「ううん。今来たところだよ。まあ、座れよ」
俺は、１時間以上待っていたのを感じさせない様に笑顔のまま応える。
「あらっ？ これは何？」
美坂は、テ−ブルの上のイチゴサンデーを見て尋ねる。
「お前が好きかと思って頼んでおいたんだ。好きだろ？」
俺は応える。
「まあ、嬉しい！ イチゴサンデーには目がないのよね」
美坂は、笑顔でテ−ブルに座る。
「美坂？」
そんな美坂に俺は話しかける。
「なぁ〜に？」
美坂は、イチゴサンデーを食べながら俺を見る。
「俺とイチゴサンデーどっちが好き？」
「決まってるじゃない！ イチゴサンデーよ」
「何で？」
「だってあなたは好きなんで次元じゃないもん。愛してるんだから」
「な〜に言ってるんだよ。このっ！」
俺は、美坂の頭をこづ…
「お待たせしました！」
再びウェイトレスの声で、北川は現実の世界に引き戻される。
「あっ！ はい…」
現実に引き戻された北川は、ふとテ−ブルの上を見る。
そこには、イチゴサンデーがまた置いてあった。
「おい！」
北川は、イチゴサンデーを見て大声をあげた。
「あの…どうかなさいましたか？」
ウェイトレスは、怒る北川を前に不思議そうに尋ねる。
「目の前にあるのは何だ？」
「イチゴサンデーでございますが」
「俺はア・イ・ス・コ−ヒ−を頼んだんだ！ 何でイチゴサンデー持ってくるんだよ！」
「大変申し訳ございません！」
ウェイトレスは、北川に対し深く頭を下げる。
「もういいよ！ イチゴサンデーで！」
北川は、呆れた声でウェイトレスに言う。
「失礼しました！」
ウェイトレスは慌ててキッチンに戻っていった。
（まったく２度も３度も注文を間違えるとはどういうことなんだ！）
北川は、ウェイトレスに怒りをぶつけながらテ−ブルのイチゴサンデーを見つめていた。
（イチゴサンデー２つか…俺が１つと美坂が１つずつだな。）
そして、再び妄想の世界へ。
俺の前で美味しそうに美坂がイチゴサンデーを食べる。
「あらっ？ 北川君…どうしたの？」
美坂はイチゴサンデーを食べる手を止め、俺に尋ねる。
それもそのはず、俺は目の前のイチゴサンデーに手をつけようとしなかった。
「ううん。気にするなよ」
俺は、一応首を横に振っておく。
確かに、俺はイチゴサンデーに手がつかない
でも、それは君のせいだ。
君のその幸せそうな表情が余りにも魅力的過ぎて、俺はメロメロになっているのさ。
「そう…」
美坂は、手を動かし、イチゴサンデーを口に運んでいく。
美坂のイチゴサンデーは少なくなっていく。
そして、イチゴサンデーがなくなりそうになった。
「美坂…俺のも食べていいよ」
俺はそのタイミングを待っていたかのように美坂の前にイチゴサンデーを運ぶ。
「北川君…いいの？」
美坂は、不思議そうな表情で俺を見つめる。
「ああ」
俺は笑顔で、首を縦にふる。
「嬉しいわ！ ありがとう！」
美坂は、嬉しそうに俺のイチゴサンデーを食べ始める。
美坂…
お前がその幸せそうな表情を見ているのが好きなんだ。
もし、許されるのであればいつまでも見つめていたい。
そのためだったら、俺は…
「お待たせしました！ イチゴサンデーでございます」
再度、北川はウェイトレスの声で現実の世界に引き戻される。
「…」
「チョイチョイ」
北川は、無言で指を振ってでウェイトレスを呼ぶ。
「はい！ お呼びでしょうか？」
ウェイトレスは、北川のテ−ブルに近づいていった。
「耳を貸せ！」
北川は、ウェイトレスに小さい声で話しかける。
不気味な笑顔を浮かべて。
「はい？」
ウェイトレスは、疑問譜を顔に浮かべながら北川に耳を近づける。
「ふぅ〜っ」
北川は息を吸い込み…
「くおおうらあああ！ お前らいくつイチゴサンデー持ってくれば気が済むんだ！」
力一杯叫んだ。
「わ〜っ！（キ−ン）」
ウェイトレスは、余りの声にその場に倒れる。
「し、失礼しました。お客様がイチゴサンデーをご注文されたので…」
そして、ウェイトレスは起き上がりながら北川に言う。
「ああ！ 確かに、俺は『イチゴサンデーでいいよ』って言ったよ。それは本当は俺がア
イスコ−ヒ−を頼みたかったのに、お前らが何度も間違えてイチゴサンデーを持ってくる
からだ！」
北川は、店全体に響き渡る声で叫ぶ。
「失礼しました。本当に申し訳ありませんでした。」
ウェイトレスは頭を深く下げて、キッチンに消えていった。
「ふぅっ！ こんなにイチゴサンデー持ってきやがって、どうすりゃいいんだ！」
北川は、怒りで顔を赤くしながらテ−ブルに並べられたイチゴサンデーを見つめていた。
そして、しばらく見つめた後…
（食うか…）
北川は、３つのイチゴサンデーの内１つを自分の前に持ってきて、食べ始める。
「ムグムグムグ…」
（俺と美坂がイチゴサンデーを向かいあって食べたらなぁ…）
北川は、食べながら再び妄想の世界に入っていった。
「美味しいわね」
美坂が食べながら笑顔で俺に話しかける。
「うん、そうだね。このイチゴサンデーは世界一美味しいよ」
俺も同じ様に美坂に言う。
「なぜ？」
「君と一緒に食べるイチゴサンデーだからな」
俺はキザな台詞で決める。
「もうっ！ 北川君ったら。恥ずかしいわ」
美坂は、それを聞いて顔を赤くする。
「俺は本気さ。それだけ俺はお前を愛しているんだよ」
俺は、イチゴサンデーを口に運ぶ。
「北川君、口にクリ−ムついてるわよ」
そんな俺に、美坂は言う。
「ごめん、ごめん…」
俺は近くにあった紙ナプキンを手に取る。
そして、口の周りを拭いた。
「まだついてるわよ。ちょっと待ってね」
美坂はふと立ち上がり俺の横に座る。
「今取ってあげるわね」
そして…
「チュッ！」
美坂は、背中から手を回し、俺の頬にキスをする。
「こらっ！ お前もついてるぞ」
俺も美坂の背中に手を回して…
「チュッ！」
頬にキスをする。
「チュッ！」
「チュッ！」
そして、俺と美坂は頬にキスをしあい。
段々、美坂の唇と俺の唇が近づいてい…
「お待たせしました！」
「はっ！（じゅる…）」
突然のウェイトレスの声に北川は、現実の世界に戻っていた。
「ん？」
テ−ブルの上には、更にアイスコ−ヒ−が置いてあった。
「あのさぁ…何でアイスコ−ヒ−持ってくるわけ？」
北川は、怒りを通り越して呆れた表情でウェイトレスに尋ねる。
「いえ…お客様がアイスコ−ヒ−をご注文になりましたので…」
ウェイトレスは、不思議そうな表情で北川を見る。
「ああ！ 確かに俺は、アイスコ−ヒ−を頼んだよ。でもそれは、お前らが間違ってイチ
ゴサンデーを持ってくるから、俺はこれ以上持ってくるなって言ったんだ！」
北川は、テ−ブルを叩きながら、ウェイトレスに言った。
「申し訳ございません！」
ウェイトレスは、深々と頭を下げる。
「いいか！ これから注文はなしだ！ な・し・だ！ よく頭に叩きこんどけ！」
北川は、頭を指さしてウェイトレスに言った。
「承知致しました。失礼しました」
ウェイトレスは、深々と頭を下げて、キッチンに消えていった。
（まったくどういうことなんだ？ もう２度とこの店には来ないぞ！）
北川は、怒りで頬を膨らませていた。
もう２度と来ないか…。
でもそれは無理だな。
だってここは、俺と美坂が愛を語りあった場なんだから。
北川は、再び妄想の世界に入っていった。
数年後…
俺と美坂は、肩寄せあって商店街を歩く。
そして、この店の前で立ち止まる。
「ねぇ…ここ覚えてる？」
美坂は、俺に話しかける。
「ああ…忘れるはずがないだろっ。俺とお前が愛を語りあった喫茶店だよな」
俺は、美坂に応える。
「ねぇ、あの時みたいにイチゴサンデー食べない？」
美坂は、そう言って俺の腕を引っ張る。
「君が望むならいくらでも…」
俺は、笑顔で、美坂の引っ張るままに店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ！ お二人でございますか？」
ウェイトレスが丁寧な言葉で俺達を迎え入れる。
「すいません。あそこの席にお願いできませんか？」
美坂は、窓際にある４人用のソファ−を指さした。
「はい、構いませんよ。どうぞこちらへ」
ウェイトレスは、笑顔で俺達を案内する。
このソファの席は普段４人掛け用で、２人の時はテ−ブル席に座るのが普通だった。
だが、まだ昼間の時間、客はそんなにいなかったことから店も許してくれた。
「ふぅっ！」
俺は、ソファ−の奥に座る。
「よいしょっと」
その横に美坂が笑顔で座ってきた。
「おいおい！ 前に座らないと駄目じゃないか！」
俺は、横に座る美坂に声をかける。
「いいの。私、あなたのそばにいたいの」
美坂は、俺に甘える様に抱きついてきた。
「しょうがないな」
俺は、笑って後ろに手をまわして美坂を抱き締め…
「お待たせしました！ 梨のシャ−ベットでございます！」
再びウェイトレスの元気な声で、北川は現実の世界に引き戻されていった。
「ハハハ…」
北川は、ウェイトレスが持ってきた物を見て笑い出した。
「お客様…どうなさいました？」
ウェイトレスは、北川の様子を不思議そうに見つめる。
「おらっ！ いいかげんにしろ！」
北川は大声で叫ぶ。
「何やってるのよ！」
ちょうどその時、彼の目の前に、美坂が現れた。
彼女は制服姿で怒りで顔を赤くしていた。
「あっ！ 美坂…」
北川は、美坂を見るやいなや驚きの声をあげる。
「バチン！」
美坂は、そんな北川に平手打ちをくわらせる。
「美坂…？」
北川は、頬を押さえながら、美坂を見つめていた。
「あなたの仕事は相沢君とやってくれたからもういいわ！ じゃあね。」
そして、美坂はその場から外へ歩き始めた。
「待ってくれ！ どうしたんだよ！ イチゴサンデー頼んで待ってたんだぞ！」
北川は急いで美坂の後を追った。
「自分の胸に聞いてみることね！ それに私、甘いもの好きじゃないの！」
「バチン！」
美坂は、再び北川に平手打ちを食らわせる。
「美坂、誤解だ！ 話を聞いてくれ−っ！」
北川は、頬を押さえながら美坂を追いかける。
「ピタッ！」
美坂は、その声に立ち止まり北川の方を向いた。
そして…
北川に向かって大声で言う。
「あなたなんて大嫌い！ 最低だわ！ ２度と私の前に現れないで！ さようなら！」
美坂は、店の外に出て行った。
（美坂…）
「パタッ！」
北川は、体中の力が抜け、その場に座り込んだ。
「うあああ〜ん」
そして、声をあげて泣き始めた。
「お客様どうなさいましたか？」
ウェイトレスが北川に声をかける。
「どうもこうもねぇよ！ 俺はこの百花屋で美坂とデ−トの予定だったんだ！」
北川は泣きながら、答える。
「そうですか…それは大変ですねぇ。お気持ちはお察しします。」
「美坂には嫌われるし、お前らは注文通りの物を持ってこないし、散々だよ。畜生！」
北川は、床を叩きながら、悔し涙を流していた。
「あの〜お客様…誠に申し上げ難いことなんですが…」
そんな北川に、ウェイトレスは言った。
「百花屋はお隣です。うちは白花屋（しらはなや）です」
「えっ！」
次の瞬間、北川は灰の様に白くなったのは言うまでもない。
〜終わり〜
結果のページ
このSSは、作者の方に二次著作権が存在します。
転載、無断引用を固く禁止します。
戻る