しんしんとしんしんと降り積もる　雪

　わたしの白い吐息が空に消え、座っているベンチの上にはさっき作った雪うさぎが一つ。

　人を待っている。

　大好きな人　ずっとずっと大好きだった人。

　はやくこないかな？

　来て欲しいな…。

　伝えたいから、この気持ち

　伝えたいから　この想い

　伝えたいから　わたしのお願い

　伝えたいから　もう一度

　彼にあの人にちゃんと伝わって欲しいから。

　わたしは待ちつづけていた。

　そう、それは冷たい風が吹き、雪がしんしんと降っていた冬の日のこと

　　

　　


アナタに贈る小夜曲





　　
　あれからもう、何年経ったのだろう？

　ずっと待っている。

　心の中でずっと…。

　来るはずのない人を待ちつづけている。

　それでも心のどこかで帰ってくることを信じている。

　何故かはわからない。

　わからないけど信じていたかった。

「はぁ〜」

　目を覚まし、机に肘をついて顔を手のひらで支えながらため息をついて窓の外を見る。

　窓から見えるのは青い空と白い雲に白い雪で埋め尽くされた校庭だけ

「どうしたの？」

「水瀬、大丈夫？」

「あっ、もしかして…」

　休憩時間になると友達が話し掛けてくる。

　みんな心配そうな顔でわたしの顔を覗き込んでいる。

「ううん、だいじょうぶだよ。少し夜更かししちゃって眠いだけだから」

　いつものこと。

　またあの日の夢を見て落ち込んでみんなに心配させている。

「そうなんだ」

「本当に大丈夫？　何かあったんなら相談にのるよ」

　友達のありがたい申し出

　でも、それをわたしは受け入れることはできない。

　わたしが悩んで、わたしが想って、わたしが考えたいことだから。

　人には相談できない。

　わたしの秘密だから…。

「水瀬、寝不足なの？」

「そうかも…」

「だったら次の時間ねちゃいなよ。どうせ自習なんだし」

　友達がわたしを気遣いながら言ってくれる。

　わたしはそれにゆっくりと頷いて答え、わたしは再び体の上半身を机に預け目を閉じる。

　ずるいな…わたし。

　そう思いながら、夢の世界へと続く扉にわたしはまた手をかける。


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