冬は好き？
「ねぇ祐一、冬は好き？」
「なんだ、いきなり？」
登校中、名雪が問いかけてきた質問。
「何となくだよ」
名雪はそう言って笑う。
「冬か…」
俺は、その質問に関して考えてみる。
「そうだな、嫌いだな」
俺の答えはそれだった。
「何で？」
「寒いから」
「それだけ？」
「あぁ、もっとも、この街に来て感じ方は変わったけどな」
「え？」
「前までは、冬と言えば寒いだけで済んだんだ」
前までいた街と、新しく過ごすことになったこの街との違い。
「だけど、ここには雪がある」
「うん」
俺がそう言うと、雪があることが嬉しそうに名雪は返事をしたが、俺の気持ちはその逆だ。
「最初は珍しかったけど、冷たいし凍っていると滑るし、嫌いになった」
「え？」
「今じゃ、冬イコール雪と言っても良いぐらいで、両方とも嫌いだ」
「……」
それを聞いて、名雪はとても寂しそうな顔になってしまった。
「でも、ずっとこの街で過ごすなら、祐一も冬が好きにならないと」
「そんな先のことなんか、考えたくない」
俺が興味なさそうにそう言うと、名雪はちょっとだけ泣き顔になって、その後は何も言わなかった。
その表情が、何となく気になって、忘れることが出来なかった。
そして、時間が過ぎて俺達は変わった。
７年ぶりに再会した従姉妹。
変わる関係。
何気ない会話だったけど、俺は多分名雪を傷つけてしまった。
だから、俺は次のチャンスを待っていた。
「ねぇ祐一」
「ん？」
「冬は好き？」
名雪が、そう聞いてきた。
「なんだ、いきなり？」
「ちょっと、聞いてみたくなったの」
そう言う名雪の表情は真剣だった。
「そうだな…」
そして、俺は考える。
「冬は、好きだな」
「ほんと？」
「この街で過ごして、俺は変わったんだ」
「うん」
それを聞いた名雪は、嬉しそうだった。
「まず、冬と言えば雪で、雪と言えば名雪だ」
「えっ！？」
「だから、冬は大好きだし、これからもこの街で過ごすから、冬は好きじゃないとな」
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