SSこんぺ No.025 : 歩いて行こう (2/2)

　この街唯一の総合病院……

　その病院の数ある手術室の一室の前には、夜も遅いというのに１１人の男女が手術が終るのを、今か今かと待っていた。

「あぅ～……祐一、大丈夫かなぁ」

「相沢さんなら、きっと大丈夫ですよ」

「そうだよ真琴ちゃん。　祐一君なら、このぐらい何ともないよ。
　絶対……絶対、大丈夫に決まってるよ！」

「そうね……憎まれっ子、世にはばかるってぐらいだもの。
　相沢君が、そう簡単にくたばってたまるもんですか！」

「お姉ちゃん…ひっく…憎まれっ子だなんて…ぐすっ…祐一さんに失礼ですよ…うっく」

「ぐしゅぐしゅ……祐一」

「……泣かないで舞。　舞が泣いてたら佐祐理まで……ふぇぇ」

「相沢……こんな所でくたばるんじゃねえぞ。
　もし、くたばってみやがれっ、例えあの世だろうと追いかけていって、絶対に……ぶん殴ってやるからな」

　ここに居る半数の人間はあまり病院に良い思い出がなく、必要以上に不安が募っていた。

「あの、皆さん……」

　手術室の前で、それぞれが祐一の事を心配していると、秋子が皆に声をかけた。

「今日はもう遅いですし、親御さんも心配なさっていると思いますから、一度帰られた方が良いと思いますよ。
　祐一さんの手術が終わり次第、皆さんのご自宅に連絡しますので……」

「秋子さん、お気遣いは嬉しいですが心配はいりません。
　真琴から連絡を受けてこちらに来る際、両親には許可をもらって来ましたので」

「あたし達も両親に断って来ましたから、大丈夫です」

「…祐一の事が心配」

「お願いします。　祐一さんの手術が終るまででよいですから、ここに居させてくださいっ」

「お母さん……皆、祐一の事が心配なんだよ。　わたしからもお願い、手術が終るまででいいからここにいさせて」

「……しょうがないわね。　了承」

「わぁ……ありがとう秋子さん」
　
「ありがとうございます」

「よかったね、舞」

「…うん」

「ふっ、くくくっ」

　秋子の了承を聞き皆が喜んでいると、少し離れていた所にいた久瀬が苦笑を漏らした。

「……何がおかしいんですか？　久瀬さん」

「これは失礼、倉田さん。
　いや、相沢君も相沢君なら、その周りに集まる人物も、よほど友情ゴッコが好きとみえる」

「なっ……」

　久瀬のこの言葉に、さすがの佐祐理も怒りの感情をあらわにした。

「僕の代わりに自分から刺されに行くなんて、相沢君も何を考えているやら……
　まったく……理解に苦しむよ」

「久瀬っ、お前、相沢に助けられておいて、何だその言いぐさは！」

　その言葉が頭にきた北川が、久瀬に詰め寄る。

「別に僕は、助けてくれと頼んだ覚えはない」

「なんだと……」

「おおかた、僕を助けて恩を売ったつもりなんだろうけど……僕が恩を感じると思っているのかねぇ？
　まあ、謝礼として治療費ぐらいは払おうじゃないか。
　なんにしても、恩着せがましいとは、彼の事を指すんだろうな」

「てめぇ！　それ以上、相沢の事を侮辱してみろっ、このオレが許さねえぞ！！」

　北川は久瀬の胸倉を掴み、睨みつける。

「はっ、どう許さないのか教えてもらおうじゃないか！」

　久瀬と北川が睨み合い、女性達がそれをハラハラしながら見守っていると……

「あ！　ねえねえ、ランプが消えたよ！」

　真琴の期待と不安の入り混じった声を聞き、その場にいた全員が手術室の扉の上、手術中と書かれたランプを見上げた。

　確かにそのランプは消灯している。

（手術が終った……）

　その場にいる全員が祐一の安否が気になって、気が気ではない。

　そして手術室の扉が開き、執刀医が出て来た。

「先生！　祐一は！？　祐一はどうなったの！？」

「祐一さんは無事ですよね？　先生！」

「…祐一」

「祐一君は何処にいるの？　ねえ、早く会わせて！」

　少女達が口々に執刀医に詰め寄り、北川も久瀬の胸倉を離し執刀医の方へ歩み寄る。

　一瞬、面食らった執刀医だったが、落ち着いた口調で彼女達をなだめた。

「落ち着いてください。　彼、相沢祐一君の手術は成功し、命にも別状はありません」

　その言葉を聞き、その場にいた全員が安堵の溜息をついた。

「よかったよ～」

「だから言ったでしょ、相沢君なら大丈夫だって」

「お姉ちゃんだって心配で、その辺を行ったり来たりしてたじゃないですか」

「そ、それは……な、泣きじゃくってた、あんたに言われたくないわよ」

「舞っ、祐一さん大丈夫だって」

「ぐしゅぐしゅ…早く祐一に会いたい」

「あ～ん、美汐～」

「良かったですね。　本当に良かった……」

「先生、それで祐一君は何処？」

「彼はまだ、鎮静剤が効いていて眠っているよ。　もう少ししたら、目を覚ますだろう。
　それにしても彼は運が良い。　傷が深いわりに、内臓の損傷は偶然にも軽いものだったからね。
　もう少し刺された場所がずれていたら、大変な事になっていたところだよ。
　ただ……怪我が軽いといっても、十日は入院してもらはないとダメだけどね」

「あいつは悪運だけは強い奴だからな」

「祐一さんの日頃の行いが良いからですよ」

「相沢君の日頃の行いって、良いのかしら？」

「香里～、言いすぎだよ～」

　祐一が無事とわかり、皆いつもの調子を取り戻し他愛無い話をしはじめた中、久瀬は誰にも気付かれないようにその場を後にした。

（相沢君が無事だとわかって、僕はホッとしている？　馬鹿な……）

　翌日の放課後、久瀬は生徒会室でいつものように事務仕事をしていたが、思うように仕事が進まない。

「会長、ここの決算が違っていますが……」

「え？　あ……こんな初歩の計算ミスを……済まない、すぐに書き直す」

「会長……　昨日、あんな事があったので、お疲れになっているのでは？」

「いや、大丈夫だ。　気にしなくていい……」

「はぁ……」

（疲れ自体はあるが、仕事に影響が出る程のものじゃない。
　仕事に集中できないのは、彼の所為だ……）

　久瀬は気が付くと、授業中も昨日の出来事……いや、相沢祐一という人物について考えてしまっていた。

（彼が一体、なんだというんだ！）

　相沢祐一……今学期の初めに転校してきた高校二年生。
　転校してきて半月も経たないうちに一年にも三年にも知り合いができ、同じクラスにも仲の良い友達がいる。
　しかも、彼が仲良くなった一年と三年の生徒は、社交性が無くて有名な生徒ばかりだった。

　三年の川澄と倉田は言うに及ばず、一年の天野という少女も、誰とも打ち解けないとクラスでは敬遠されていたと、彼女と同じクラスの生徒会役員から聞いた。
　それが彼と知り合い、二月に入ったときには、川澄、倉田、天野の三人は以前より明るくなり、同級生ともよく喋るようになったという……
　そして、長期休学していた一年の美坂という少女も彼と知り合い、学校に出てくるようになった……

　だが、彼女達四人だけではなく、彼と知り合った生徒の大半は、男女問わず以前より明るくなったと学校内では有名だった。

（彼の笑顔を見ると、明るい気持ちになれる？　生きる気力が沸いてくる？
　僕も、僕が得られなかった幸せを知っている彼の笑顔に、知らず知らず安らぎを感じているとでもいうのか？
　馬鹿馬鹿しい……）

「会長、これが昨日の事件に関わった生徒の資料です」

「あ、ああ、ありがとう」

　久瀬は、昨日の暴力事件の詳細をまとめた報告書を作成する為の資料を副会長から受け取り、一枚目の資料に載っている生徒を見て動きを止める。

　相沢祐一

（昨日の事件に関わったのは僕を含めて十二人……
　その場にいた彼も、確かに関係者だ……）

　そう思いながら祐一の資料に目を通していると、ある欄に書かれた内容を見て再び動きを止めた……

（相沢君が……養子？）

　がちゃ

「ただいま」

　結局あのあと、養子という言葉が頭の中をちらつき、報告書の作成どころではなかった……

（まったく……つくづく僕のペースを乱す存在だ、彼は）

　久瀬は自分の部屋へ向かう途中、父親と誰かが話している声を聞き、話し声が聞こえてくる書斎の前で足を止めた。

「これが今回の調査結果です」

「ごくろう。　また頼むよ」

「はい。　それでは失礼します」

　書斎の扉が開き、一人の中年男性が出てくる。

　書斎から出て来たのは、久瀬の父親がよく雇う探偵だった。　久瀬の父親は仕事柄、人の過去や身辺調査等を彼によく依頼しているため、久瀬自身も彼とは面識があった。

「おや、いま学校からお帰りですか？」

「あ、はい」

「確か生徒会長をやっているんでしたね。　いろいろと大変でしょうが、がんばってください」

「ありがとうございます」

「それでは、私はこれで帰りますので」

「はい……
　あ、ちょ、ちょっと待ってください！」

　久瀬は探偵を見送ろうとしたが、どうしても知りたい事があり呼び止めてしまった。

「なんですか？」

「調べて欲しい事があるんです。
　僕の通っている高校の生徒の一人なんですが……
　その生徒の過去を調べてください。できるだけ詳しく」

「ふむ……いつもお世話になっている先生のご子息の頼みだからね……
　わかった。　だけどその前に、少し事情を聞かせてもらえるかい？」

「はい。　まず、その生徒の名前は……」

　そして、四日後の昼休み。

　久瀬は朝に、探偵から祐一の調査結果の報告書を受け取った。

　昨日の深夜、探偵から明日の放課後に報告書を持っていくと連絡を受けた久瀬は、急いで結果を知りたかったため、今日の朝に持ってきて欲しいと頼んだのだ。

　早く知りたくて朝に受け取ったはよいが、さすがに授業中に見るわけにはいかなかったので、結局この時間帯になってしまった。

　一刻も早く結果を確認したかった久瀬は、この時間は誰もいないだろうと思い、生徒会室に向かう。

　思った通り生徒会室には誰もいなかった。　念の為さらに会長室に入った久瀬は、さっそく祐一に関する調査結果の報告書に目を通した。　

（…………そんな、ばかな……)

　そこに書かれていた、祐一の生い立ちから現在までの経歴を見て、久瀬は愕然とする。

　次の瞬間、無意識の内に久瀬は生徒会室を飛び出していた。

（相沢君が……相沢君は、生まれてすぐに実の両親に捨てられただって！？）

　調査結果の報告書に書かれていた文面をかいつまんでいうと、こういうことだった。

　相沢祐一
　水瀬グループ会長、水瀬祐造の息子、水瀬祐斗の実子として生まれる。
　水瀬祐斗は次期会長として着任する予定であったが、祐斗には他に別の夢があり、さらには決められた婚約者とは違う女性を愛し、半ば駆け落ちを行う。
　だが、日本でも指折りの企業である水瀬グループの会長、水瀬祐造がそれを許すはずも無かった。
　強制的に実家へ連れ戻された祐斗だったが、必死の説得により祐造を条件付きで説得する事に成功した。

　その条件というのが、生まれてくる自分の子供を水瀬グループの跡取として祐造に差し出すという事だった。
　祐斗とその妻は、どうしても叶えたい夢、そして添い遂げる為に、まだ見ぬ自分の子供を犠牲にしようと考えたのだ。

　それから半年後、相沢祐一（当時、水瀬祐一）が誕生する。
　そして約束通り祐一は生まれてすぐに、自らの親の手によって祐造に引き渡された。

　そう……祐一は、両親が自分の夢を叶える為に捨てられた子供だったのだ。

　さらには不幸な事に、祐斗夫妻は水瀬グループを出た一ヵ月後、事故に遭い、この世を去った。
　これにより、祐一は両親の愛情はおろか、両親の本当の顔すら知る事はなくなった。

（相沢君はその事実を、幼い頃に祖父から聞かされただって！？）

　しかし、祐一の不幸はそれだけではなかった。
　祐一が小学二年生になってすぐの事……
　水瀬グループが、企業内部の重役の一人に騙され、乗っ取られるという事件が発生した。

　そして、祐一の生活環境は一変した。

　今まで親しかった人達は離れていき、仲の良かった者達も手の平を返したように冷たくなり、信じていた人達にも裏切られ、水瀬家は没落していった。
　祐一は親戚をたらい回しにされ、一時的に落ち着いたのが父親の妹、水瀬秋子の元だった。
　たが、秋子は夫を早い時期に亡くし、祐一と同じ歳の娘もいる。
　秋子は優しかったため何も言わなかったが、無理をしているのは明らかだった。

　それに気付いた祐一は、自ら秋子の元を離れ施設に入る事を決意する。

　一方、水瀬グループ内部では、また新しい変化が起きていた。
　故、水瀬祐斗のもう一人の妹であり、秋子の姉でもある春華とその夫、相沢誠一が水瀬グループを取り戻す事に成功したのだ。

　誠一は祐造に水瀬グループを返そうとしたが、祐造は乗っ取り事件後、慣れない生活が続き心身ともに疲弊していた。
　そこで祐造は自分の娘の夫であり、以前自分の秘書を務めていた誠一に水瀬グループ会長の全権を譲り渡し、引退する事にした。
　そして、新しく水瀬グループの会長に就任した誠一は、施設にいる親友であり義兄の忘れ形見、祐一を引き取る事にした。

（それが……それが、相沢祐一の過去……）

　久瀬は学校をも飛び出し、ただただ走り続けた。

（相沢君の笑顔は、何の不幸も苦しみも知らない笑顔なんかじゃない……
　体に心に痛みを苦しみを味わっても……それでも真っ直ぐに前を見つめ続ける、誰よりも強い心を秘めた笑顔だったんだ……
　だから、あれほどまでに人の心を惹きつけるんだ……
　彼の過去に比べたら、僕の過去なんて……それなのに、今の彼と僕との心の差は一体なんだ！！）

　久瀬は今まで自分自身を嫌っていたが、今日ほど自分の存在を情けなく思った事はなかった。

（彼のあの笑顔の下には……どれほどの苦しみと哀しみが重ねられているのか……）

　久瀬がたどり着いたのは、この街唯一の総合病院……

（僕は何故ここに来たんだ……)

　祐一が入院している病院の個室の前で、久瀬は立ち尽くしていた。

　いつも面会時間が終るまで誰かが見舞いに来ているが、今は５時間目の授業中のため誰もいない。

　久瀬は意を決して扉を開け、病室に入っていく。

　病室に入って最初に目にしたのは、白いベットの上で静かに眠っている祐一だった。

　久瀬は祐一の傍まで行くと、ポツリポツリと語りかけた。

「さっき、君の過去を知った……
　僕が君の考え方を、何も辛い目にあった事もない、苦しんだ事もない、ただの子供の奇麗事だとなじっても……
　君は反論もせずに、ただただ黙って聞いていた……
　さぞかし滑稽だっただろうな？
　何も知らず、自分だけが不幸を背負ったような顔で、君を責めたてた僕は！！」

　そして、久瀬は堰きを切ったように喋りだした。

「確かに君は強いんだろうさ！　偉いんだろうさ！！
　君の目から見た僕は、さぞ世を儚むひねた弱者に映っただろうさ！！！」

　そこまで言い切ると、ガックリとひざを落としてその場に座り込んでしまう。

「どうして……どうして、僕なんかを助けたりしたんだ……」

「誰かを……誰かを助けたいと思うのは、悪いことか？」

　祐一の声が聞こえ、久瀬はハッとして祐一を見上げた。

「誰かを助けたいとか、守りたいと思うのは、いけないことか？
　俺は大切な人を守りたい……目の前で苦しんでいる人がいたら助けたい」

「君はどうして、そこまで人のために自分を犠牲にする事ができるんだ……
　自分が傷つくのが嫌じゃないのか？　怖くないのか？
　それにどれだけ助けたって、人は必ず裏切る！　親友だって家族だって裏切るんだ！！
　僕よりも裏切られた経験が多い君なら、わかってるはずだ。
　どれだけ信頼しても大切に想っても、結局最後は裏切られるだけなんだって……
　なのに、どうしてそこまでできるんだ……どうして、また人を大切だと想えるんだ……」

「人を大切だと想うのに、理由なんてないさ……
　本当に理由なんてない。　俺は目の前にいる人を助けたいと思っただけ……
　お前の時だってそうだよ……お前が危ないと思ったとき、気が付いたらお前を庇って刺されてた。
　俺はお前の事が嫌いなのに、お前が俺を嫌いだって知ってるのに、それでも助けたかったんだ……」

　祐一が語ったあと、しばらくして久瀬が口を開いた。

「僕も……僕にも昔、大切な人がたくさんいた。
　でも、僕のせいで両親は別れ、大切な人は周りからどんどん居なくなった……
　大好だった人達からも裏切られて、もう人なんて信じられなくて……自分自身すら……
　全てを招いたのは他ならない僕なんだ！　当然だ……」

「……やめよう」

「え……」

　祐一はそっと、久瀬の手を掴んだ。

「もうやめよう。　過去にのみ囚われるのは……
　哀しみだけの記憶に身を置いて、自分を責め続けるのなんて」

「だけど……」

「どんなに辛い事があっても、自分から心を閉ざさなければ……
　それまでの自分の世界そのものを変えてくれる人に、きっと出会えると思うから……
　俺もそうやって、今の養父母に救われた……
　そして、この街で皆に出会えた……」

「けど……」

「七年前……俺は辛さのあまり記憶を封じてしまった事があった……
　そのために、取り返しのつかない事になりそうになった……
　だからもう、誰にもそんな思いはしてほしくない……誰にもさせない！」

「僕には……」

「久瀬、俺はお前にもそんな思いをしてほしくない」

「嘘…だ…」

「一人だと、くじけそうになるかもしれない……
　生きていくことに疲れて、倒れそうになるかもしれない……
　でも、一人じゃなければ、どんなに辛くても、きっと負けないでいられる」

「信じ…ない…」

「大丈夫、世界はそんなに意地悪じゃない」

「うっ…ううっ…うわああああああっーーーー」

　久瀬は初めて恥も外聞もなく泣いた。

　祐一はそんな久瀬の頭を胸に抱き、同情でも憐れみでもなく、ただひたすらな優しさで包み込んだ……

「――以上、今日の生徒会会議を終ります」

　久瀬のその一言で他の生徒会役員達は立ち上がり、部屋から出て行ったり書類の整理をしたりしている。

　そんな中で、副会長の女子生徒が久瀬に話しかけた。

「会長、どういう心境の変化ですか？」

「なにがだい？」

「いえ、問題を起こした反生徒会の生徒を、あのように庇って処分を軽減するなんて、以前の会長では考えられなくて……」

「別に……世の中、そう捨てたもんじゃないって気が付いただけさ」

「え？」

「おっと、今日はこれで失礼するよ。
　一緒に帰る約束をした、おせっかいな友達が待っているんでね」

　ｆｉｎ

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