SSこんぺ No.030 : 奇跡のかわりに (5/5)

「ふぁ、ふゅういひふぁん、ふぉふぉふぁいふ、ほいひいれふ」
「食うか話すかどっちかにしろよ」
「ふぁい」
　いつものデート。
　そのコースには、かなりの頻度で百花屋がコースに入っていた。
　ましてや、今週は期間限定のスペシャルデザート（アイス）が出ているので、それを栞が見逃すはずが無い。
「やっぱり、アイスはこの時期が一番美味しいですね」
「当たり前だ。冬の寒い最中にアイスなんか食う奴の気が知れない」
「あー。それは酷いです。人種差別です！」
　人種？
　アイス人？
　アイス星人？
「栞は、アイスの星からアイスを広めるためにやってきたのか？」
「あ、そう言う設定もいいですね。なんか、ヒロインっぽくて格好良いです」
　いや、それは無いと思う。
　どっちかというと、ギャグキャラ。
「祐一さんは食べないんですか？　このスターフルーツが乗ってるアイス、美味しいですよ」
「いや、俺のことは気にしないで言いから、百花屋が潰れるくらい食べてくれ」
「潰れるくらいは食べれませんけど……なんか、祐一さん元気無いですね、嫌な事でもありました？」
　スプーンを口の中に入れながら聞いて来た。
「いや、嫌なことなんかない」
「でも、大丈夫ですよ。私の愛と奇跡の力で、祐一さんはすぐ元気になりますから」
「それは、大丈夫」
　一度、ちらっと外の景色に目をやった。
　抜けるほどの青空。
　水鉄砲を掛け合いながら走りぬけていく子供達。
　何かの芸に集まっている人たち。
　そこにあったのは、紛れも無く平凡な、それでいて幸せな光景だった。
「奇跡なんて起きなくても、人は変っていけるから」
「そうなんですか？」
「ああ、そうだ」
　そうだよな……。

　香里姉さん……。

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