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　月明かりの下

　わたしはベランダに出て月夜を眺めていた。

　夜空には幾多もの星が輝き、綺麗な夜を月と共に演出し

　冷たい夜風が体温を冷めさせると同時にわたしの眠気を追いやった。

「約束覚えてないよね…」

　ぼそっと月に向って呟く。

　答えが返って来るわけでもない彼がそこにいるわけでもない。

　でも、それでも口に出してみたかった。

　でも、それはほんの一部

　わたしが彼に伝えたいことが心の中にはまだたくさんあった。

　親友の言葉

「何かしなくちゃ、何も始まらないわよ」

　それが頭の中にあった。

　わたしに何ができるんだろう？

　わたしは何からはじめられるんだろう？

　彼はここに居ない。

　電話にはかけてもたぶん出てくれない。

　だったら…だったら…。

　答えは一つしかなかった。

　わたしはベランダから部屋に戻って机の引出しから便箋を取り出して手紙を書き始めた。

　読んでくれないかもしれない、でもきっと彼の元には届く。

　読んでくれなくてもわたしの想いは届くと思ったからわたしは手紙を書き始めた。




　　祐一へ


　　　　今、窓から見える月を見ながらコタツに入って手紙を書いてます。

　　　久しぶりだね。わたしのこと覚えてるかな？

　　　昔、一緒に遊んだ従姉妹の名雪だよ。
　　　
　　　覚えてないかな…もし、覚えてなかったら思い出して欲しいな。

　　　祐一は今、受験勉強で大忙しだよね？

　　　わたしも受験勉強で大忙しだよ。

　　　今書いてる手紙は勉強が終わって一段落ついて書いています。

　　　祐一は勉強頑張ってる？

　　　わたしは頑張ってるよ。

　　　でもコタツで勉強してるから時々眠くなっちゃうんだ。

　　　そういえば祐一が昔、家に遊びに来たとき一緒にコタツで勉強したよね。

　　　覚えてるかな？　わたしが祐一に勉強を教えてあげたんだよ。

　　　それから、お庭で雪だるまやかまくらを一緒に作ったこと覚えてるよね？

　　　また一緒に作ってみたいな、一人だとかまくらを作るの難しいんだよ。

　　　今度、わたしの家に遊びにきたら絶対作ろうね。　約束だよ。

　　　えっと、長々と書いてごめんね。今回はこのくらいにしておくよ。

　　　受験が終わったらまた手紙書くから楽しみにしててね。

　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　名雪より　　　　　　　　　　　　


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