その後の話を少し話そうと思う。
あの後、あの少年（後で名前を聞いたら、武井というらしい。）が千羽鶴を完成させる前に、彼女は目を覚ました。勿論、彼女の体調がよくなったと安心は出来ない。頭の怪我というのは怖いものなのだ。まだ、後遺症などの心配がある。でも、アイツらは大丈夫だと俺はなんとなく感じていた。
この一件で、俺は少しだけ救われたような気がしていた。
この世界も捨てたもんじゃない。
まだ、ここで生きてやろうか、なんて偉そうに思った。
あの時、あゆの病室で感じた言葉に出来ない何かと、流したあの涙は、これからも俺の心に暗い点となって残り続けるだろう。あの日、確かに、純粋が死んで、永遠が片道の列車に乗って、どこか遠くへ行ってしまったんだと思う。言葉なんて無力で、感情なんて邪魔者でしかないけど、列車に向かって手を振って、ゆっくりとその音を見送った俺は間違ってないような気がしてる。
いや、正しくなんてなくていい。
俺はここで生きていこう。
これから、もっとたくさんのひどいことがあって、大切な人の手を離してしまうことがあるのかもしれない。
世界の終わりは必ずやってくる。
いつか、俺にだって死が訪れる。
だけど。
「あ！ 祐一君っ！」
駅前のベンチに座って、俺を待っていた少女が手を振った。青い空、ぽかぽか陽気。デート日和ってこんな日だ、と思う。
そう、世界が終わる日は、きっと、こんな穏やかな日。
羽がなくて、飛べなくても、もう、歩けるから。
ただ、俺達だけの方法で、いつまでも揺られていたいんだ。
／
人は誰も自分だけの物語を持ってるの、と彼女は言った。
耳を削いで、目を潰そう。
赤ワインと睡眠薬で幸せになろう。
まるで［MOTION PICTURE SOUNDTRACK.］のよう、自分に見合った場所へ行くんだ。
春が、夏が、秋が、冬が、過ぎていく。
もし、いつか13月がやってくるなら、君に贈りたいものがあるんだ。
さあ、次の悲しみがやってくる前に、その悲しみの向こうを目指して。
この世界を振り切って、自らの足で、走れ。
ただ、祈った。
これだけで劇的に世界が変わるんじゃないかなって、今だけでも、思っていたいから。
ここで産まれた物語達が、君が幸せであるように。
これが、あの時、君に聞かせたかった答えの全て。
前のページ
−−−−−
結果のページ
戻る